リガンド固定化マイクロデバイスによる循環がん細胞診断デバイスの開発

文献情報

文献番号
201220057A
報告書区分
総括
研究課題名
リガンド固定化マイクロデバイスによる循環がん細胞診断デバイスの開発
課題番号
H23-3次がん-若手-003
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
馬原 淳(独立行政法人国立循環器病研究センター 生体医工学部)
研究分担者(所属機関)
  • 山岡 哲二(独立行政法人国立循環器病研究センター 生体医工学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,847,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では血中に存在する循環がん細胞(Circulating Tumor Cells: CTCs)を高感度で検出するためのCTC検出用マイクロチップシステムを開発している。 昨年度までに、マイクロチップ界面へリガンドを固定化するコーティング剤を種々検討してきた。このような検討結果を踏まえ、本年度は、2-methacryloyloxyethyl phosphorylcholine (MPC)を基礎骨格にもつポリマーを用いてガラス界面へのリガンド固定化、マイクロチップ内での細胞ローリング挙動の解析、ならびにCTC検出用マイクロチップシステムのプロトタイプを作製した。
研究方法
MPCと疎水鎖を持つメタクリル酸n-ブチル(nBMA)、そしてN-ビニルホルムアミド(NVFA)のランダム共重合体をラジカル重合により合成した。また、側鎖の加水分解によりアミノ基を導入しポリエチレングリコールリンカーを介して、抗体を固定化した。マイクロチップ内部での細胞ローリングの割合、速度を定量した。さらに、CTC検出用デバイスに用いるマイクロチップとして、幅300μm、深さ150μmの流路が交差する形状をもつマイクロチップを設計・作製した。サンプル流路と、細胞ローリングの分析流路を交差させることで、一定量の検体を分析流路へとインジェクトするための機構を構築し、微小流路内の液流をコントロールするポンプを組み合わせ、プロトタイプのマイクロチップシステムを構築した。
結果と考察
MPCの組成が22.8, 36.0%で、3.2-6.5☓104Daの分子量をもつMPC-nBMA-NVAポリマーを合成した。GPC,NMRにより分子構造を同定し、分子量分布は1.1-1.3程度である単分散のポリマーが合成できた。ガラス界面に対してポリマー溶液を浸漬した結果、水接触角、X線光電子分光法により界面にポリマーがコーティングできることを確認した。市販のマイクロ流路を用いて細胞ローリング挙動を観察した結果、抗体の固定化により54%の細胞が界面でローリングしていた。一方で45%の細胞はローリングせず液流によりフローしていた。そこで新たに、幅300μm, 深さ150μmのサイズを持つ交差型マイクロチップを作製した結果、ポンプシステムで一定量の細胞懸濁液を検査用流路にインジェクトでき、ほぼすべての細胞でローリングを定量できた。そこで、モデル細胞として、KG-1a(CD34陽性)、HL-60(CD34陰性)細胞を用いて、antiCD34抗体を固定化したチップでローリング速度を定量した。その結果、KG-1a細胞のローリング速度は40μm/secであるのに対して、表面マーカーを発現していないHL-60細胞では平均速度が50μm/secとなり、2つの細胞のローリング速度に有意差が示された。以上の結果より、マイクロチップの流路内部において細胞ローリング速度を定量することで表面マーカーをローリング速度により識別できる可能性が示された。
結論
MPCを22.8%含むリガンド固定化用のMPC-nBMA-NVAポリマーを用いることで、細胞の非特異吸着を抑制し、マイクロチップ内で細胞ローリングを誘起できることが実証できた。さらに、CTC検出用マイクロチップシステムのプロトタイプも作製できた。最終年度では、これまで構築してきたこのシステムを用いて、CTC検査用の標準サンプルを用いた検出感度の検定、さらには実際の検体を用いた検査精度の評価について検討する予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-28
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220057Z