蛍光内視鏡をめざした高分子型分子プローブの創製

文献情報

文献番号
201220042A
報告書区分
総括
研究課題名
蛍光内視鏡をめざした高分子型分子プローブの創製
課題番号
H23-3次がん-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
前田 浩(崇城大学 DDS研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 方 軍(崇城大学 薬学部/DDS研究所)
  • 中村 秀明(崇城大学 薬学部/DDS研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,770,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
癌の診断と治療は何れも化学物質を用いる点においては共通であり、両者とも薬剤の癌局所への集積に基づいている。本課題は両者の同時達成を目指す。即ち高分子型蛍光[FL]分子プローブおよび光増感剤[PS]を癌局所に選択的にデリバリーすることを目的とするが、それは本申請者が発見したEPR効果(enhanced permeability and retention effect)の原理に基づいている。一方、内視鏡光源は連続波長で充分な光量があるので、各々の蛍光分子プローブ(以下、蛍光ナノプローブ)の分光特性に適合する光学フィルターシステムの組み合わせにより表層癌が肉眼の10~100倍の高感度で検出可能となることを我々は予備的に認めている。癌部に選択的にこれら蛍光ナノプローブ(PSを含む)を集積できることをPSに応用した例はない。この研究の目的はEPR効果に基づく腫瘍デリバリーによりPSの腫瘍選択的な集積を可能にする。EPR効果は肝転移娘結節で調べるとφ 0.3mmの微小癌に対しても超高感度の検出が可能になる。即ち、安全なPDTを可能にする。従来のPDTに使用するPSは全身くまなく分布し、日常的な光さえも正常の皮膚などに傷害を起こすため、あまり普及しなかったが、本課題が成功すれば、蛍光ナノプローブによる癌のPDTは飛躍的に向上するといえる。このような画期的な診断と治療をめざし、EPR依存的DDSの知識を持つのは当研究室のみである。事実、我々は亜鉛プロトポルフィリンミセルは蛍光と同時に一重項酸素を生じ、治療効果があることをマウス腫瘍において予備的に確認している。
研究方法
(1)PS光照射による細胞毒性作用の研究
各種培養癌細胞(食道癌、大腸癌、子宮癌)などに対し、蛍光ナノプローブを処理後、Xeランプの光照射(10-30min)を行い、MTTアッセイにより細胞の生残率を測定。[1O2]の生成と細胞毒性オキシストレスプローブを利用し、フローサイトメトリーで解析。プローブの細胞内取り込みは共焦点レーザ-顕微鏡並びに細胞内抽出物の蛍光強度から測定する。
(2) 担癌マウスに対するPS光照射療法
担癌マウスに対し、H23年に作製した蛍光ナノプローブを尾静脈より投与し、プローブが腫瘍部に十分に集積したところでXeランプを用いPDTを行う。
(3) 担癌マウスに対するPS光照射療法
蛍光内視鏡の光源系の確立において、平成23年度の成果に基づく分光学的特性を組み込んだプロトタイプを作成する。
(4) 民間企業との連携・協力
SMAミセルの高分子型の蛍光ナノプローブを用いた in vivoイメージングは、はっきりと検出でき、内視鏡においても同様の光学システムの構築ができない理由はない。蛍光内視鏡の開発を目指した民間企業との連携を希望する。
結果と考察
高分子ミセル化した蛍光ナノプローブ、さらにアルブミンやトランスフェリンなどの血清タンパクの蛍光標識プローブは、はっきりと腫瘍部に集積し、蛍光により腫瘍を感知、描出することがわかった。HPMA(ヒドロキシプロピルメタアクリレート)高分子を結合したZnPPを静注後420nmで励起、550nmの蛍光波長でマウスのS-180腫瘍をIVIS装置でみると、腫瘍によく集積し、腫瘍部の蛍光画像をきれいに描出した。とくにローダミン標識トランスフェリンやICG(インドシアニングリーン)のSMAミセル静注後、2時間で脱毛なしのマウス腫瘍でも著明な蛍光として検出できた。この腫瘍部の蛍光強度は正常部の約15倍であった。ヒドロキシメタアクリルアミド(HPMA)ポリマーあるいはSMAコポリマー結合のZnPPとともに、光照射により著明な一重項酸素を生成し、抗腫瘍効果を示すことを確認した。さらに、各種PS含有SMAミセルの培養食道癌細胞(Kys150)への取り込みは正常上皮細胞に比べ約5倍ほど効率がよく、また、これらの血中半減期も10時間と充分に長くなり、さらに腫瘍濃度はfreeのPSよりも8~10倍程高いことがわかった。今後、デキストラン硫酸とアゾキシメタンの経口投与で発癌した自家発癌大腸癌モデルの作成に成功しており、大腸癌の早期検出と予防、さらに治療をめざした研究を行う。
結論
(1)IVIS蛍光イメージング装置により、非常にクリアに蛍光ナノプローブ投与後2時間から数時間で腫瘍が検出できた。しかも、光照射で腫瘍の著明な退縮をみとめている。(2)蛍光ナノプローブとして下記のものの作製に成功した。①HPMA-ZnPP、②SMA-ICGミセル、③テトラエチルローダミン標識ヒトアルブミン、④同ローダミン標識トランスフェリン、⑤SMA-ローズベンガル、⑥SMA-メチレンブルー。(3)上記の①-⑥を用いて、IVIS社のイメージング装置により生きた担癌マウスの腫瘍を確実に検出できた。

公開日・更新日

公開日
2013-08-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201220042Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
14,000,000円
(2)補助金確定額
14,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,257,385円
人件費・謝金 3,738,800円
旅費 2,976,232円
その他 797,583円
間接経費 3,230,000円
合計 14,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-10-14
更新日
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