内視鏡による新たな胃がん検診システム構築に必要な検診方法の開発とその有効性評価に関する研究

文献情報

文献番号
201220021A
報告書区分
総括
研究課題名
内視鏡による新たな胃がん検診システム構築に必要な検診方法の開発とその有効性評価に関する研究
課題番号
H22-3次がん-一般-022
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
濱島 ちさと(独立行政法人国立がん研究センターがん予防・検診研究センター 検診研究部検診評価研究室)
研究分担者(所属機関)
  • 尾崎 米厚(鳥取大学医学部環境予防医学分野)
  • 後藤 励(京都大学白眉センター)
  • 小越 和栄(新潟県立がんセンター新潟病院)
  • 成澤 林太郎(新潟大学医歯学総合病院光学医療診療部)
  • 月岡 恵(新潟市保健所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 第3次対がん総合戦略研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
28,031,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成18年度の胃がん検診ガイドラインナは、死亡率減少効果が証明された胃X線検査が推奨され、胃内視鏡検査、ヘリコバクタ・ピロリ抗体及びペプシノゲン法は証拠が不十分とされた。国内や韓国において内視鏡検診の評価研究は進みつつあるが、胃がん死亡率減少効果については確定的な根拠は得られていない。さらに、ペプシノゲン法及びヘリコバクタ・ピロリ抗体検査によるハイリスク集約への期待があるが、胃がん死亡率減少効果も不明であり、集約の可能性やその後の検診方法などの検証は不十分である。こうした現状を踏まえた上で、新たな胃がん検診導入のための内視鏡検診の有効性評価とハイリスク集約の検証を行った。
研究方法
1)鳥取県米子市における胃がん検診受診者を対象とし、継続受診者別の内視鏡検診・X線検診の感度を、診断法と発生率法の両者の方法で算出した。
2)内視鏡検診の有効性を評価するための無作為割付なし比較対照試験を開始した。
3)2)の評価研究の基礎となる新潟市の対策型胃がん内視鏡検診の実態及び精度管理について報告する。
4)日本では、いくつかの自治体で内視鏡がん検診が診療所による個別検診の形で行われている。しかし、その検診に対して、どの程度の時間資源が投入されているかは検討がされていない。本研究では、経営学で用いられる資源利用の調査方法である稼働分析を用いて、診療所での内視鏡がん検診について観察研究を行った。
5)平成18年度の「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン」公表後に実施された、新たな評価研究を検索し、系統的総括を行い、現時点における胃がん検診の科学的根拠について系統的総括を行った。
結果と考察
1)鳥取県米子市の内視鏡検診とX線検診の感度を算出した。初回受診の内視鏡検診の感度は、診断法0.955 (95%CI:0.875-0.991)、発生率法0.886 (95%CI:0.698-0.976)であった。継続受診の内視鏡検診の感度は、診断法0.977 (95%CI:0.919-0.997)、発生率法0.954 (95%CI:0.842-0.994)であった。X線検診では、初回検診の感度は、診断法0.893 (95%CI:0.718-0.977)、発生率法0.831 (95%CI:0.586-0.964)であった。継続受診における内視鏡検診の感度は、診断法0.885 (95%CI:0.664-0.972)、発生率法0.855 (95%CI:0.637-0.970)であった。
2)新潟市において、内視鏡検診の有効性を検証するため無作為割り付けなしの比較対照試験を計画し、研究を開始した。平成24年度は、今年度61歳となる学年の対象から800人を研究検診群としてリクルートした。次年度以降は、市内中心部のみならず、全8区でのリクルートを広く実施する予定である。
3)新潟市の対策型胃がん検診は、最初の2003年度の受診率は20.5%で内視鏡検診は全体の23.5%であった。その後内視鏡検診は次第に増加し2012年の受診率は23.0%,内視鏡検診は全体の57.0%を占めるに至った。胃がんの発見率は2003年以後4年間の平均では受診者に対し0.959%で、直接X線検診での0.363%であった。
4)新潟市の内視鏡がん検診44例を4診療所で調査した。全工程の時間のうち、前作業(検査室の準備と前投薬、事前説明など)、検査(内視鏡挿入から抜去まで)、後作業(片付けと洗浄)にそれぞれ、34.1%,10.6%、54.4%の時間を必要とした。作業人数を考慮した総稼働時間は、平均4,453(人・秒)であった。そのうち、前作業・検査・後作業がそれぞれ29.3%、14.4%、55.7%を占めていた。総稼働時間とそれに平均賃金をかけた総労働費用については、後作業が最も時間と労働費用を必要としていることが判明した。
5)2000年から2012年までの胃がん検診に関わる文献をPubMed、医学中央雑誌を用いて検索し、2842文献を抽出した。この結果、X線検診についてはその有効性を示す追加的証拠が3文献あった。内視鏡検診については国内6文献の研究があったが、いずれも研究の質が低く、有効性に関する確定的な結果は得られなかった。ペプシノゲン法(単独)については国内3文献の研究があったが、いずれも研究の質が低く、有効性に関する確定的な結果は得られなかった。ヘリコバクタ抗体、ペプシノゲン法とヘリコバクタ抗体の併用法については、死亡率減少効果を示す研究はなかった。
結論
内視鏡検診、ハイリスク型検診の科学的根拠は未だ確立いていない。内視鏡検診はハイリスク型検診の重要な構成要素であり、両者の検診を勧めるためにも、内視鏡検診の有効性を確立することが必要である。平成24年度からは新潟市で無作為割付なしの比較対照試験を開始した。

公開日・更新日

公開日
2013-08-13
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201220021Z