文献情報
文献番号
201219012A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性サイトメガロウイルス感染症対策のための妊婦教育の効果の検討、妊婦・新生児スクリーニング体制の構築及び感染新生児の発症リスク同定に関する研究
課題番号
H23-次世代-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
山田 秀人(神戸大学 大学院医学研究科外科系講座産婦人科学分野)
研究分担者(所属機関)
- 岡 明(杏林大学 医学部小児科)
- 中村 浩幸(独立行政法人国立成育医療研究センター研究所 母児感染研究部)
- 古谷野 伸(旭川医科大学 小児科)
- 井上 直樹(国立感染症研究所 ウイルス感染第1部)
- 峰松 俊夫(社会福祉法人愛泉会日南病院 疾病制御研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
1. サイトメガロウイルス(CMV)母子感染に関する妊婦知識調査と啓発ツールの作成と公開
2. 全国産科施設を対象にした感染症スクリーニングと先天性感染症例の調査
3. 有効な妊婦スクリーニング法と新生児スクリーニング体制の確立
4. 先天性CMV感染児における発症リスクの解析と同定
を目的とした。
2. 全国産科施設を対象にした感染症スクリーニングと先天性感染症例の調査
3. 有効な妊婦スクリーニング法と新生児スクリーニング体制の確立
4. 先天性CMV感染児における発症リスクの解析と同定
を目的とした。
研究方法
1. 妊婦343人を対象に、13種類の微生物について「妊娠中の感染が胎児に影響を及ぼす可能性のある感染症」の知識調査を行った。CMV母子感染ホームページと啓発パンフレットを作成した。
2. 全国 の2,714妊婦健診施設を対象に、妊婦健診で実施している感染症スクリーニングと平成23年1年間に経験した先天性感染児のアンケート調査を行った。施設総分娩数、スクリーニング感染症と方法、5種類の感染症による中絶・流産・死産・分娩の症例数を調べた。
3. 前方視的に妊娠16~18週に母体血CMV IgG、IgG Avidity Index(AI)を測定し、AI≦45%の時、IgM、アンチゲネミア、PCR、CRP、CBC、肝腎機能を調べた。IgG陰性妊婦に感染予防啓発を行い、36週にIgGを再検した。全新生児を対象に濾紙尿のCMV DNAをPCR法で解析した。
4. 平成20~22年度に同定した先天性感染児(2歳以上)のコホート調査を行い、障害発症のリスク因子を解析した。
2. 全国 の2,714妊婦健診施設を対象に、妊婦健診で実施している感染症スクリーニングと平成23年1年間に経験した先天性感染児のアンケート調査を行った。施設総分娩数、スクリーニング感染症と方法、5種類の感染症による中絶・流産・死産・分娩の症例数を調べた。
3. 前方視的に妊娠16~18週に母体血CMV IgG、IgG Avidity Index(AI)を測定し、AI≦45%の時、IgM、アンチゲネミア、PCR、CRP、CBC、肝腎機能を調べた。IgG陰性妊婦に感染予防啓発を行い、36週にIgGを再検した。全新生児を対象に濾紙尿のCMV DNAをPCR法で解析した。
4. 平成20~22年度に同定した先天性感染児(2歳以上)のコホート調査を行い、障害発症のリスク因子を解析した。
結果と考察
1. 胎児に影響を及ぼす13種類の微生物のうち、CMVの知識があったのは妊婦の18%のみで最も低かった。具体的な感染予防内容を含むCMV母子感染ホームページ(http://www.med.kobe-u.ac.jp/cmv/)を公開した。妊婦啓発用パンフレットはダウンロード可能である。
2. 1,990施設(73.7%)よりアンケートを回収した。妊婦健診で風疹、梅毒、HIV、HTLV-1、HBV、HCVのスクリーニング実施率は99%以上であったのに対し、CMV(4.5%)とトキソプラズマ(48.5%)の実施率は低かった。平成23年に先天性CMV感染として、中絶3人(ほか不確定1人)、流産0人(3人)、死産2人(1人)、分娩29人(3人)が報告された。多くの先天性感染児、特に軽症の症候性や無症候性の先天性感染児が出生時に見逃されている現状が明らかとなった。
3. CMV IgGスクリーニングを1154妊婦に実施し、847人(73%)が抗体陽性で52人(全体の4.5%)がIgG AI≦45%であった。このうち15人(全体の1.3%、陽性者の1.8%)が、IgM陽性ないし血液PCR陽性で初感染が疑われた。うち1人(母体AI 3.6%,IgM陽性,頚管粘液PCR陽性)が症候性の先天性感染であった。307人(26.6%)の抗体陰性者のうち、4人(全体の0.35%、陰性者の1.3%)が妊娠後期にIgGが陽性化していたため、妊娠中後期の初感染と判断した。うち1人が無症候性先天性感染であった。新生児尿スクリーニングによって、AI>45%の妊婦2人から無症候性の先天性感染が同定され、再活性化ないし再感染によると考えられた。
平成23、24年度の新生児3,944人のうち、11人(発生率0.28%)が先天性感染と診断された。うち2人は再活性化ないし再感染であった。
4.先天性感染児コホートの62人(症候性17人、無症候性45人)が解析可能であった。無症候性では5人(11%)に難聴、言語発達遅延や発達障害があった。症候性で無治療の7人では、正常発達0%、片側難聴のみ43%、死亡/中~高度障害57%であった。一方、抗ウイルス療法を行った症候性感染児10人では、正常発達30%、片側難聴のみ30%、死亡/中~高度障害40%であった。治療群に正常発達が多い傾向があった(p=0.18)。
宿主側要因としてNK受容体NKG2D遺伝子多型が、症候性発生に関与することを明らかにした。難聴例では、1歳6か月時のMRIで白質の信号変化が指摘され、難聴を呈する場合には中枢神経系への影響が大きい可能性が示唆された。
2. 1,990施設(73.7%)よりアンケートを回収した。妊婦健診で風疹、梅毒、HIV、HTLV-1、HBV、HCVのスクリーニング実施率は99%以上であったのに対し、CMV(4.5%)とトキソプラズマ(48.5%)の実施率は低かった。平成23年に先天性CMV感染として、中絶3人(ほか不確定1人)、流産0人(3人)、死産2人(1人)、分娩29人(3人)が報告された。多くの先天性感染児、特に軽症の症候性や無症候性の先天性感染児が出生時に見逃されている現状が明らかとなった。
3. CMV IgGスクリーニングを1154妊婦に実施し、847人(73%)が抗体陽性で52人(全体の4.5%)がIgG AI≦45%であった。このうち15人(全体の1.3%、陽性者の1.8%)が、IgM陽性ないし血液PCR陽性で初感染が疑われた。うち1人(母体AI 3.6%,IgM陽性,頚管粘液PCR陽性)が症候性の先天性感染であった。307人(26.6%)の抗体陰性者のうち、4人(全体の0.35%、陰性者の1.3%)が妊娠後期にIgGが陽性化していたため、妊娠中後期の初感染と判断した。うち1人が無症候性先天性感染であった。新生児尿スクリーニングによって、AI>45%の妊婦2人から無症候性の先天性感染が同定され、再活性化ないし再感染によると考えられた。
平成23、24年度の新生児3,944人のうち、11人(発生率0.28%)が先天性感染と診断された。うち2人は再活性化ないし再感染であった。
4.先天性感染児コホートの62人(症候性17人、無症候性45人)が解析可能であった。無症候性では5人(11%)に難聴、言語発達遅延や発達障害があった。症候性で無治療の7人では、正常発達0%、片側難聴のみ43%、死亡/中~高度障害57%であった。一方、抗ウイルス療法を行った症候性感染児10人では、正常発達30%、片側難聴のみ30%、死亡/中~高度障害40%であった。治療群に正常発達が多い傾向があった(p=0.18)。
宿主側要因としてNK受容体NKG2D遺伝子多型が、症候性発生に関与することを明らかにした。難聴例では、1歳6か月時のMRIで白質の信号変化が指摘され、難聴を呈する場合には中枢神経系への影響が大きい可能性が示唆された。
結論
1. 胎児に影響を与える微生物としてCMVは最も妊婦の認知度が低いことが明らかになった。CMV母子感染ホームページと啓発パンフレットを公開した。
2. 全国調査によって、先天性CMV感染児の多くは出生時に診断されていない現状が明らかになった。
3. IgGと AIによる妊婦スクリーニングは、初感染による先天性感染の同定に有用であった。再活性化による先天性感染の同定には新生児尿スクリーニングが有用であった。
4. 無症候性感染児のうち11%に遅発性難聴や発達障害が発生した。抗ウイルス薬治療を行った症候性感染児の正常発達率は30%であり、障害の発生を抑制できる可能性が示された。
2. 全国調査によって、先天性CMV感染児の多くは出生時に診断されていない現状が明らかになった。
3. IgGと AIによる妊婦スクリーニングは、初感染による先天性感染の同定に有用であった。再活性化による先天性感染の同定には新生児尿スクリーニングが有用であった。
4. 無症候性感染児のうち11%に遅発性難聴や発達障害が発生した。抗ウイルス薬治療を行った症候性感染児の正常発達率は30%であり、障害の発生を抑制できる可能性が示された。
公開日・更新日
公開日
2013-05-29
更新日
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