仕事と子育ての両立を支援するサービスの連続性と整合性並びに質の評価に関する基礎的研究

文献情報

文献番号
201219009A
報告書区分
総括
研究課題名
仕事と子育ての両立を支援するサービスの連続性と整合性並びに質の評価に関する基礎的研究
課題番号
H22-次世代-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤林 慶子(東洋大学 社会学部社会福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 安梅 勅江(筑波大学大学院)
  • 矢藤誠慈郎(愛知東邦大学)
  • 松村 祥子(放送大学大学院)
  • 野中 賢治((財)児童健全育成推進財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
4,255,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の目的は、少子高齢社会において重要とされる子育て支援サービスにおける質の向上のために、(1)保育所、放課後児童クラブ等の実態分析等を行い、(2)保育所、放課後児童クラブの支援等の連続性と整合性を明確にし、(3)子育て支援サービスについての質の評価手法を開発することであった。分担研究の目的は、(1)親支援や保育所の現状と課題を明らかにし、保育経営実態調査の調査票記入要領のチェックによる政策提言、社会的孤立と保育マネジメントに関する基礎資料を作成すること、(2)「保育の質」向上に向けた指標開発およびその関連要因を明らかにし、「保育環境チェックリスト」を用い、「良質な保育」の関連要因を明らかにすること、(3)職員の雇用形態と保育所の組織的な課題との関連性について明らかにし、保育所保育の質を組織的に評価する指標について示唆を得ること、(4)「子どもの生活時間調査」の実態を把握することによって、放課後の時間のあり方を検討すること、放課後児童クラブに通所児にとって望まれる支援の指標となる項目を、保護者や指導員の意見を踏まえて実証的に明らかにすることを目的とした。
研究方法
 (1)保育経営実態調査では、施設長を対象とした3回のフォーカスグループインタビュー調査と文献サーベイ、(2)全国98か所の認可保育園、および研究参加依頼に応じた認可外保育園を対象とした保育環境チェックリスト調査、(3)中核市と地方都市の2市の公私立全保育所80施設を対象とした保育組織体制調査、(4)イギリス、スウェーデン、フランス、オーストラリア、韓国及び日本の放課後児童クラブ指導員について、先行文献調査、現地ヒアリングによる放課後児童クラブ指導員調査、(5)都市部A自治体の公立小学校1~3年生を対象とした子どもの生活時間実態調査を研究方法とした。
結果と考察
 (1)保育の実態等は、自治体によって様々な状況があり、それらをいかに保育経営実態調査としてまとめるかについて検討する必要があることが示唆できた。また、法人間の差も大きいこと、保育単体の施設と介護施設等他種別を併存している施設では意識が異なること、人材確保については大きな問題であること等が明らかになった。社会的孤立については、親を支えるシステム構築が急務であることが示唆できた。保育についてはマネジメントという概念がまだ一般的ではなく、研究も少ないことが明らかとなった。(2)保育環境チェックリストについては、保育環境の各領域得点すべてについて、研修実施群の中央値が高い値を示した。また大都市群においても、中央値が高かった。内容分析の結果、保育の質を高める専門技術に焦点を当てた実践のあり方について7つの重要カテゴリーに分けられた。(3)組織体制としては、「課題としての認識」については、運営上の課題として認識されている項目が多かった。取り組んでいるかどうかについては、相対的に取り組んでいない項目は、「施設長のリーダーシップに対する評価」「職員に対する評価や人事考課」等であった。(4)諸外国との比較により、わが国の放課後児童クラブの課題と現状が明らかになった。学童保育指導員の名称、資格、養成機関、教育内容、学童保育指導員の業務と担当子ども数等や各国の問題点と課題について比較した結果、それぞれの放課後児童保育についての国の状況等が明らかとなった。子どもの生活時間調査では、学童保育利用者と利用しない者の生活時間の使い方の特徴が明らかとなった。
結論
 (1)新子育て支援システムの問題は、各施設のマネジメントの問題でもあった。介護保険制度における地域包括支援センターのような地域で保育を支える仕組みの検討が必要である。今後は保育マネジメントという考え方が重要になるとともに、単体保育経営者の意識改革がポイントとなるのではないかとの結論を得た。(2)専門職の共通理解に基づく指標の活用および研修等の継続的な実施が有効なことが示され、園や専門職ひとりひとりの保育環境への意識向上、良質な保育への継続的な取り組みが期待される。(3)保育所の組織運営における評価等の観点として、コミュニケーション―日常的なもの、園内研修等、施設長等とのカンファレンス、職員や組織の保育の質の向上につながるPDCAサイクルの必要性等が見いだされた。施設長の役割強化について検討することが有益であることが、明らかになった。(4)放課後児童クラブの国際比較調査からは、我が国でも放課後児童クラブ(学童保育)指導員に関する基準を国のレベルで示すことの重要性は大きいとの結論を得た。子どもの生活時間調査からは、小学生の放課後の時間についての共通認識が必要であり、子どもの育成にとって重要なこの時間について、多角的、本質的に検討することが放課後児童クラブの在り方にとって重要であるとの結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201219009B
報告書区分
総合
研究課題名
仕事と子育ての両立を支援するサービスの連続性と整合性並びに質の評価に関する基礎的研究
課題番号
H22-次世代-一般-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
藤林 慶子(東洋大学 社会学部社会福祉学科)
研究分担者(所属機関)
  • 安梅 勅江(筑波大学 大学院)
  • 矢藤 誠慈郎(愛知東邦大学 人間学部子ども発達学科)
  • 松村 祥子(放送大学 大学院)
  • 野中 賢治((財)児童健全育成推進財団)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 成育疾患克服等次世代育成基盤研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 本研究の全体の目的は、少子高齢社会において重要とされる子育て支援サービスにおける質の向上のために、(1)保育所、放課後児童クラブ等の実態分析等を行い、(2)保育所、放課後児童クラブの支援等の連続性と整合性を明確にし、(3)子育て支援サービスについての質の評価手法を開発することである。研究代表者の研究の目的は、親支援の状況や保育のソーシャルワーク機能の問題や政策提言につながる保育の実態を明らかにすることを目的とした。保育経営実態調査実施に向けての調査項目や記入要領についての提言を行った。分担研究としては、(1)「良質な保育」の根拠となる情報を体系的に整理し、「保育の質」向上に向けた指標開発およびその関連要因を明らかにし実践に資すること、(2)保育所の組織体制の実態と課題研究班の目的は、保育の質を高めるための組織のあり方について検討するために、保育所における人事配置等の組織体制の実態を明らかにし、その課題を見出すこと、(3)放課後児童クラブの内容を充実させ質の向上を図るために、「放課後児童クラブに通う子どもにとって望まれる支援」の内容を明らかにし、放課後児童クラブに通う子どもの状況や放課後児童指導員の資質や要件等についての検討を行うことであった。
研究方法
 (1)親支援のあり方に関するヒアリング調査、(2)保育の政策提言等についての文献サーベイ、(3)フォーカスグループインタビュー調査による保育現場の問題点、保育経営実態調査の記入要領の精査等を行った。分担研究では、(1)「環境チェックリスト」の検証のために、保育所の園長、主任などの管理職グループA、管理職グループBとクラス担当保育専門職者グループの3グループにFGIを実施した。(2)組織体制については、雇用形態による組織的な取組みや課題の一般的な異同を見出すため、自記式質問紙調査等を実施した。(3)放課後児童クラブの質の向上の研究では、放課後児童クラブでの参与観察と放課後児童指導員へのヒアリングを実施したうえでアンケートを作成した。そして、事業の基準が明確化され、現時点で望まれる水準を安定して維持している放課後児童クラブの利用保護者と放課後児童指導員を対象にアンケート調査を実施した。また、放課後児童指導員自身が、どのような資質・技能を必要と考えているのかについて、放課後児童指導員の手記を分析した。自治体行っている放課後児童健全育成事業に関する研修を概括し、児童の遊びを指導する者について考察した。
結果と考察
 研究全体の考察としては、保育と放課後児童クラブそれぞれの問題点等が明らかとなったが、その連続性については、自治体ごと等の調査により実態を把握することが今後の研究課題である。保育所と放課後児童クラブ、放課後児童クラブと小学校、保育所と小学校というトライアングルの連携が必要であることが示唆できた。そして、児童の問題点の共有等が必要であるが、紙媒体による連絡は親からの情報開示の問題もあり、事実を記入することが実際に難しいという現場の意見もあった。介護保険制度における地域連携会議のような地域全体で子どもを連続的に育てる仕組みの構築が必要であろう。また各分担研究で明らかになった共通の研究結果として、研修による質の向上の必要性があげられた。研修による質の向上は確かに重要であるが、ただ研修をすればよいというものではなく、研修の効果測定技法を明確にしなければ研修実施の意味がない。今後は研修についての効果測定技法の研究も行うことが必要であろう。
結論
 研究全体の結論としては、本研究の目的の一つである保育の質の評価手法の開発として、「保育環境チェックリスト」の有用性が明らかとなった。本研究では、介護保険制度における要介護認定のような保育必要度あるいは放課後児童クラブ必要度の作成までは到らなかったが、「保育環境チェックリスト」も含めた保育必要度、放課後児童クラブ必要度についての検討が必要である。
 また、保育所や放課後児童クラブ等の問題点や運営、組織体制上の問題、保育のマネジメントの問題、親支援の問題等が明らかとなった。保育も放課後児童クラブも従来の枠組みを脱却して、新子育て支援システムへの移行に伴い、他職種も含めた保育士や放課後児童クラブ学童指導員の業務内容の見直し等が必要である。看護師同様保育士は歴史的に一つの専門職に様々な機能を付加してきたといえる。しかし本来の業務を再考すれば、専門分化が必要であり、専門分化を行わないと質の向上は達成できないのではないかと考える。
 また放課後児童クラブと保育所、小学校の連携の必要性も示唆できた。現在は所管の違いや様々な事情から連携や情報共有が難しく、連携が行われているところといないところの差が大きい。今後は連続的な保育の必要性から連携システムの構築が必要であるとの結論を得た。

公開日・更新日

公開日
2013-05-29
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201219009C

成果

専門的・学術的観点からの成果
 保育所と放課後児童クラブの連携については、その必要性を示唆できたことは有意義な成果である。また、保育環境チェックリストの作成は、良質な保育を提供する要因を提示でき、そこから保育の質の向上を企図できる。研修の必要性や重要性については、組織運営の研究からも明らかとなり、今後は研修効果についての調査研究や分析が必要となろう。放課後児童クラブについては諸外国の実態が紹介されることが少なく、その調査研究を行ったことは我が国の放課後児童クラブ研究にとって大きな成果であると考える。
臨床的観点からの成果
保育分野ではまだ十分に重要性が浸透していないマネジメント概念の重要性や研修会の有用性等が明らかになったことは現場においても重要な成果である。また、保育環境チェックリストは現場でも活用でき、保育の質保証という観点からも新しい指標を提示できた。放課後児童クラブについては、放課後児童クラブの効果にもつながるような放課後のとらえ方や現在の小学生の放課後の過ごし方等の調査は、今後の放課後児童クラブのガイドライン等を活用する場合に有用である。
ガイドライン等の開発
 本研究では、ガイドライン等の作成は行わなかったが、本研究の成果を活用して、厚生労働省が作成する放課後児童クラブガイドラインの改正の基礎資料を提供した。
その他行政的観点からの成果
 経営実態調査実施に向けての基礎資料等を提出した。また、保育園と放課後児童クラブとの有機的連携については、その必要性に対しての基礎資料を提供した。
 保育の質の評価についても今後の保育の質の向上のための重要な観点を示唆できたので、行政的にどのように応用していくかを検討する必要があろう。
 放課後児童クラブについても、従来の調査と異なる観点からの研究調査の実施は、先のガイドライン改正に向けての基礎資料を提供できた。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
0件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
保育経営実態調査の実施に向けての基礎資料を提示した。
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2016-07-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201219009Z