アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病発症リスク予測法の実用化に関する多施設臨床研究

文献情報

文献番号
201218009A
報告書区分
総括
研究課題名
アミロイドイメージングを用いたアルツハイマー病発症リスク予測法の実用化に関する多施設臨床研究
課題番号
H23-認知症-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
石井 賢二(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター 東京都健康長寿医療センター研究所)
研究分担者(所属機関)
  • 岩坪 威(東京大学大学院 医学系研究科)
  • 渡辺 恭良(理化学研究所 分子イメージング科学研究センター)
  • 千田 道雄(先端医療センター 映像医療研究開発部門)
  • 須原 哲也(放射線医学総合研究所 分子イメージング研究センター)
  • 田代 学(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)
  • 加藤 隆司(国立長寿医療研究センター 脳機能画像診断開発部)
  • 尾内 康臣(浜松医科大学 メディカルフォトニクス研究センター)
  • 塩見 進(大阪市立大学大学院 医学研究科)
  • 松成 一朗(先端医学薬学研究センター 臨床研究開発部)
  • 百瀬 敏光(東京大学医学部附属病院 放射線科)
  • 佐藤 元(国立保健医療科学院 政策技術評価研究部)
  • 高尾 昌樹(東京都健康長寿医療センター 高齢者ブレインバンク)
  • 今林 悦子(東京都健康長寿医療センター 放射線診断科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 認知症対策総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
22,984,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
認知症最大の原因であるアルツハイマー病(AD)に対する病因研究と根本治療薬開発が進む中、病態の進展を反映する客観的指標(サロゲートマーカ)の確立が急務である。本研究は、ADのサロゲートマーカとして、特に発症予測や超早期診断に優れていると期待されるアミロイドイメージング診断法を高精度に標準化し、診断技術の整った施設ネットワーク基盤を整備し、多施設における治験や予防介入研究に備えるとともに、臨床適用の科学的根拠を提供することが目的である。これにより、認知症の特に発症前期から早期の病態理解を促進し、発症の危険因子や保護因子を明らかにし、根本治療薬の実用化を目指した臨床研究や治験を促進する。認知症による要介護者減少のための認知症検診や発症予防法の実用化への道を拓く。
研究方法
本邦でアミロイドイメージングを実施している全てのPET施設を糾合することを目標に、標準検査法を共有して臨床研究を推進すると共に、撮像等にかかわる技術的問題の解決や診断解析法の開発を行う。J-ADNI研究プロジェクトと連携し技術支援を行うとともに、J-ADNI以外の個別研究で行われているアミロイドイメージング症例を集約的に解析することで、わが国における質の高いエビデンス構築を目指す。生前同意型ブレインバンクと連携してアミロイドイメージング症例の蓄積をはかり、画像病理対比評価法を標準化するとともに、各施設における剖検評価体制確立を支援する。また18F標識診断薬による臨床研究を実施し、異なる診断薬の診断精度や臨床的意義の互換性について検討する。ADとAD以外の認知症疾患におけるアミロイドイメージングの所見とその意義を明らかにし、日常臨床における適用についてのエビデンスを収集し、臨床使用ガイドラインとしてまとめる。
結果と考察
平成24年度は、検査プロトコルの共有化を進め、平成25年3月現在、わが国で11C-PiBまたは11C-BF-227を用いてアミロイドイメージングを実施している施設は25施設(PiB 22施設、BF-227 3施設)となった。2施設は両者を実施している。治験や多施設共同研究のために、判定者に依存しない自動定量解析法を開発した。これにより日米豪3カ国の11C-PiB 386例におけるApoE遺伝子型の影響を解析した結果、ApoE4は遺伝子量依存性に全脳で11C-PiB集積を増加させるのに対し、ApoE2は楔前部と頭頂部における集積を抑制することが分かった。横断的データから推定したアミロイドβ集積過程は、カットオフ値までの過程がきわめて緩徐で、楔前部から集積が始まる点がBraakらの病理モデルと異なり今後の検討を要する。3Dモードでのダイナミック収集を実施する上で、視野外放射線が定量測定値に及ぼす影響について装置毎に推定できる性能評価法を確立し、データの信頼性の裏付けが可能となった。また、11C-PiBデータを自動的に処理し定量値や統計値を提示することのできるソフトを開発し、判定者に依存しない評価が可能になった。11C-BF-227の評価法を確立するとともに、11C-BF-227によるα-synuclein集積評価の可能性について検討した。アルツハイマー病以外の認知症疾患(レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、アミロイドアンギオパチーなど)におけるアミロイドβ集積の特徴と臨床的意義について検討した。また、PETと病理所見の対比法を確立し、定量的免疫染色及びCERAD基準との対比を可能にした。次年度は、18F標識アミロイド診断薬剤の使用経験を蓄積すると共に、本研究での成果を盛り込んだ臨床使用ガイドラインを作成する。
結論
アルツハイマー病の発症リスク予測法の実用化に向け、多施設臨床研究を推進し、アミロイドイメージングの撮像法、解析法について標準化に向けた技術的な検討を行い、国際的に互換性のあるデータ収集と解析が可能となった。アミロイドイメージングに関する撮像や解析に関する技術的問題の解決に引き続き取り組み、装置の性能評価法や画像の自動解析法を開発し、今後の普及への基盤となる成果が得られた。11C-BF-227についても評価法を確立した。非AD疾患における診断的意義や、病理所見との対比例の蓄積による検討も進め、認知症診断におけるアミロイドイメージングの位置づけを明確にするエビデンスを蓄積した。今後はより詳細な解析方法や簡便な診断法の開発、複数薬剤の互換性の検討、臨床使用のためのガイドライン策定を目標に、更に研究を進めてゆく。これらの基盤のもとに、今後わが国におけるADの早期病態研究、介入研究が加速化され、認知症の克服、要介護者の減少に結びつくと期待される。

公開日・更新日

公開日
2013-06-10
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201218009Z