文献情報
文献番号
201217011A
報告書区分
総括
研究課題名
運動器疾患の評価と要介護予防のための指標開発および効果的介入方法に関する調査研究
課題番号
H23-長寿-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
阿久根 徹(東京大学 医学部附属病院)
研究分担者(所属機関)
- 中村 耕三(国立障害者リハビリテーションセンター)
- 鈴木 隆雄(国立長寿医療研究センター研究所)
- 大内 尉義(東京大学医学部付属病院)
- 藤原 佐枝子(広島原爆障害対策協議会 健康管理・増進センター)
- 大渕 修一(東京都健康長寿医療センター研究所)
- 西脇 祐司(東邦大学医学部)
- 萩野 浩(鳥取大学医学部)
- 大西 五三男(国際医療福祉大学 臨床医学研究センター)
- 時村 文秋(東京都健康長寿医療センター)
- 西村 明展(三重大学大学院医学系研究科)
- 吉村 典子(東京大学医学部)
- 帖佐 悦男(宮崎大学医学部附属病院 )
- 藤野 圭司(藤野整形外科医院)
- 安村 誠司(福島県立医科大学)
- 島田 洋一(秋田大学医学部附属病院)
- 遠藤 直人(新潟大学教育研究院医歯学系)
- 高岸 憲二(群馬大学医学系研究科)
- 石橋 英明(伊奈病院)
- 千田 益生(岡山大学医学部附属総合リハビリテーション部)
- 石田 健司(高知大学医学部付属病院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
38,334,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
運動器障害は要介護の主要原因の一つであるが、運動器の客観定量評価法および運動器障害による機能低下や要介護移行予測因子の解明が不十分であることが、高リスク者の発見の遅れにつながっている。運動器の主な構成要素には、骨、関節、筋、神経などが挙げられるが、骨における骨密度測定と年齢別基準値を用いた診断・治療体系のようなシステムが、運動器の他の要素では未整備であり、運動器の各要素やそれらの組み合わせによる統合的な運動器リスクの解明も不十分である。一方、運動介入は、高齢者の生活機能を向上させる有効な手段であることが明らかとなっており、通所型運動器介護予防事業に参加する高齢者に対しては効果をもたらしているが、事業に参加しない高齢者に対しては無力であり、何らかの工夫により、不参加者が運動プログラムに参加、継続し易くなるようなシステム作りが求められている。本班研究の目的は、1:運動器の客観定量的評価法を開発し、運動器の機能低下や要介護移行の予測指標を開発するとともに、2:運動機能訓練(ロコトレ)と電話呼びかけ(ロコモコール)を組み合わせた訪問型在宅介入プログラムを、行政による運動機能向上プログラム不参加者に対して実践し、地域事情が異なる各地域の実情に合わせて弾力的に適用できる、効果的な在宅運動介入システムを構築することである。
研究方法
運動器の評価法および指標開発研究においては、各地域の一般住民コホートおよび病院患者コホートで収集したデータを横断的、縦断的に解析し、運動器の主な構成要素である骨、関節、筋・神経などにおける、骨強度、関節機能、筋機能・運動機能などの評価研究を行い、計測指標に基づく運動器リスクを評価して、運動器障害、生活機能低下、要介護移行の予測指標を開発する。一方、運動器の効果的介入方法に関する調査研究は、宮崎大学を中心とする全国各地の介入フィールドで、電話などの通信手段を用いた呼びかけ介入(ロコモコール)による在宅運動プログラム(ロコトレ)を、各地域の実情に即して工夫して行うことにより、通所型運動器介護予防事業に参加しない高齢者に対する効果を検証する。ロコモーショントレーニング(ロコトレ)は、日本整形外科学会により提案されたもので、開眼片足立ち訓練と膝を前に出さないスクワット訓練から成り、筋力とバランス力を強化しながら膝関節や腰への負担が少なく、高齢者の身体に優しい訓練方法であり、運動能力に応じて工夫を加味して自宅にて自分で実践できる方法である。
結果と考察
今年度は、運動器の評価法および指標開発研究グループにおいては、一般住民および病院コホート研究により、複数回転倒の実態を解明し、握力、歩行速度、膝痛がその予測因子となることを明らかにし、骨折後高齢者における受傷前ロコモ25が退院時運動能力と良く相関することを解明し、またロコモ25は要介護度と相関関係があることを明らかにした。更に、高齢者の運動習慣で、ほぼ毎日運動する男性では将来のADL低下リスクが低いこと、重度の変形性脊椎症や、中年期からの身長低下がある高齢者では、健康関連QOLが低下することを解明した。超音波画像による大腿筋厚・筋エコー強度と運動器リスク出現との関係の検討では、大腿筋エコー強度が、運動器リスクの出現に関連することを解明した。その他、骨強度評価、関節障害リスク、筋量評価、要介護移行率の推定などについて検討を行った。
一方、運動器の効果的介入方法に関する調査研究においては、本年度の本研究参加者は485名(男性137名、女性348名)で、このうち介護予防事業における「運動器の機能向上プログラム」に参加していない真の対象者は203名であった。参加者の平均年齢は77.4才であり、開眼片足立ち時間は開始時平均28.7秒、終了時平均32.4秒、椅子立ち上がり時間は開始時平均15.3秒、終了時平均12.0秒で、運動機能は有意に改善した。母集団の把握が可能であった地区の高齢者合計78,489人のうち、行政の「運動器の機能向上」教室への参加者は135人(0.2%)であった。それに対して、教室への不参加者5,510人のうち実際に参加依頼・意向確認が行われた者は2,710人で、本調査への参加意向があった者が272人(10%)、実際にロコトレを実施したのは、243人(9.0%)であり、本介入プログラムは従来のシステム(参加率0.2%)に比べて大幅な参加率増加が期待できるシステムであることが明らかとなった。来年度は対象者を増やすとともに、細部にわたる詳細な検討を行う予定である。
一方、運動器の効果的介入方法に関する調査研究においては、本年度の本研究参加者は485名(男性137名、女性348名)で、このうち介護予防事業における「運動器の機能向上プログラム」に参加していない真の対象者は203名であった。参加者の平均年齢は77.4才であり、開眼片足立ち時間は開始時平均28.7秒、終了時平均32.4秒、椅子立ち上がり時間は開始時平均15.3秒、終了時平均12.0秒で、運動機能は有意に改善した。母集団の把握が可能であった地区の高齢者合計78,489人のうち、行政の「運動器の機能向上」教室への参加者は135人(0.2%)であった。それに対して、教室への不参加者5,510人のうち実際に参加依頼・意向確認が行われた者は2,710人で、本調査への参加意向があった者が272人(10%)、実際にロコトレを実施したのは、243人(9.0%)であり、本介入プログラムは従来のシステム(参加率0.2%)に比べて大幅な参加率増加が期待できるシステムであることが明らかとなった。来年度は対象者を増やすとともに、細部にわたる詳細な検討を行う予定である。
結論
平成24年度の研究成果の概要を報告した。平成25年度も引き続き研究を継続し、要介護の高リスク者を効率よくピックアップするための指標開発と効果的な介入プログラムの開発を行う。
公開日・更新日
公開日
2013-07-16
更新日
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