高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究

文献情報

文献番号
201217003A
報告書区分
総括
研究課題名
高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究
課題番号
H22-長寿-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
原田 敦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 細井 孝之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 臨床研究推進部)
  • 下方 浩史(独立行政法人国立長寿医療研究センター 認知症sん信医療開発センター予防開発部)
  • 橋本 有弘(独立行政法人国立長寿医療研究センター 再生再建医学研究部)
  • 江頭 正人(東京大学大学院医学系研究科)
  • 重本 和宏(東京都健康長寿医療センター研究所 老年病研究チーム)
  • 金 憲経(東京都健康長寿医療センター研究所 自立促進と介護予防研究チーム)
  • 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
  • 島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 自立支援開発研究部自立支援システム開発室)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学講座)
  • 金 信敬(健康科学大学 体育学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
15,375,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア、以下SP)は高齢者に生活機能低下や虚弱をもたらし重要と認識されていたが科学的対策確立は我が国で皆無だったのでSPに関する基礎、疫学、臨床、予防の多領域研究を行った。欧州のガイドラインに該当するコンセンサスレポート(EWGSOP)をQ&A付きで監訳企画した。
研究方法
基礎では運動機能低下の下肢筋を組織学的に検討し、高齢者と若齢者の骨格筋由来不死化筋幹細胞の遺伝子発現パターンの違いを検討した。in vitroアッセイシステムと重症筋無力症モデル動物由来の抗MuSK抗体でMuSKの活性化・機能抑制に関与する分子メカニズムを解析した。疫学では65歳以上地域住民でサルコペニアと6年後までのADL低下リスクを検討した。近赤外分光法(NIRS)による四肢筋量推定法の妥当性を検討した。臨床では骨粗鬆症患者後ろ向きコホートを用い、既存骨粗鬆症薬の筋量効果を検討した。ビタミンD摂取量と血清25OHDとの関連を検討した。筋由来液性因子が内皮細胞保護効果をもつかどうかをマウス、培養C2C12細胞で検討した。65歳以上の大学病院通院患者137名を対象にEWGSOPにしたがってSP実態を調査した。予防介入では運動と栄養の介入で地域在住後期SP高齢者の体力身体組成改善を目的とした運動栄養補充の介入参加者155人で終了3年の追跡調査をした。太極拳介入の長期実施効果を地域在住高齢者60人のRCTで身体能力、転倒、QOLを追跡調査した。
結果と考察
基礎では下肢筋組織は著明脂肪化を認め、高齢者筋細胞で遺伝子発現の増大している分泌性因子を同定した。MuSKの機能制御分子の同定はサSPの新バイオマーカーとして利用できる可能性がある。疫学ではSP有病率は男性4.6%、女性11.8%で6年間のADL低下オッズ比1.54と高くなっていた。握力判定した場合には男性13.5%、女性11.8%で6年間ADL低下オッズ比は1.31 であった。NIRSは回帰モデルで四肢筋量の92%を説明でき、推定式を日本人高齢者4,806名適用し、EWGSOPアルゴリズムに従うとSP有症率は7.2%、筋力と筋量のみの判定で6.9%となった。臨床では1年無治療群と比して骨格筋指標(SMI)はアルファカルシドール単独治療群では差がなかったがビスホスホネート単独治療群では有意に増加していた。骨粗鬆症とSP合併率は45%。ビタミンD摂取量基準値以下の者が多く血清25OHDからD不足が多かった。D摂取が極めて少ない集団でも25OHDはD欠乏レベルまでは低下せず日光によるD産生の寄与が示唆された。骨格筋VEGF分泌が軽度運動負荷で増加、廃用萎縮で低下した。VEGF発現は、グアニリルシクラーゼ-PGC-1alphaが関与した。高齢通院患者の男性67%、女性49%がSPと判定された。地域在住高齢者の10%前後と比してかなり高値であった。転倒とは筋力のみが差があり筋量はなかった。予防介入では、追跡率47.1%で介入前後、追跡時で筋力群間変化は有意ではなく、通常歩行速度、最大歩行速度が有意であった。3ヶ月運動栄養介入で改善した身体機能効果は3年でほぼ消失する可能性があった。筋量維持や身体能力QOLの向上効果をもたらしたと考えられ長期的太極拳的介入はSP予防に効果的であった。
EWGSOP論文は、サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサス―高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループの報告―の監訳という論文に、日本老年医学会理事長の総監修のもと、本研究班員が案を作成して日本老年医学会からアドバイザーと査読のご協力により完成し、日本老年医学会雑誌に掲載され、学会ホームページからダウンロードできる。
結論
SPに関する科学的対策確立の多領域研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-07-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-12-18
更新日
-

文献情報

文献番号
201217003B
報告書区分
総合
研究課題名
高齢者における加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア)に関する予防対策確立のための包括的研究
課題番号
H22-長寿-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
原田 敦(独立行政法人国立長寿医療研究センター 病院)
研究分担者(所属機関)
  • 細井 孝之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 臨床研究推進部)
  • 下方 浩史(独立行政法人国立長寿医療研究センター 認知症先進医療開発センター予防開発部)
  • 橋本 有弘(独立行政法人国立長寿医療研究センター 再生再建医学研究部)
  • 秋下 雅弘 (22年度)(東京大学大学院医学系研究科)
  • 江頭 正人 (23・24年度)(東京大学大学院医学系研究科 )
  • 重本 和宏(東京都健康長寿医療センター 研究所 老年病研究チーム)
  • 金 憲経(東京都健康長寿医療センター 研究所 自立促進と介護予防研究チーム)
  • 鈴木 隆雄(独立行政法人国立長寿医療研究センター 研究所)
  • 島田 裕之(独立行政法人国立長寿医療研究センター 老年学・社会科学研究センター 自立支援開発研究部)
  • 神崎 恒一(杏林大学医学部 高齢医学講座)
  • 金 信敬(健康科学大学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
加齢性筋肉減弱現象(サルコペニア、以下SP)は高齢者に生活機能低下や虚弱をもたらし重要と認識されていたが科学的対策確立は我が国で皆無だったのでSPに関する基礎、疫学、臨床、予防の多領域研究を行った。欧州のガイドラインに該当するコンセンサスレポート(EWGSOP)をQ&A付きで監訳企画した。
研究方法
基礎では骨格筋幹細胞による筋再生メカニズム解明のためヒト筋幹細胞不死化技術を適用し、診断法開発を重症筋無力症動物モデルで試みた。疫学では無作為抽出住民で筋量加齢変化及び診断法開発を行い、リスク要因を検討し、EWGSOPに従ってサルコペニア有病率と6年後までのADL低下リスクを検討した。近赤外分光法(NIRS)による四肢筋量推定法の妥当性を検討した。別に高齢住民5,111名の横断調査で有症率、ADLの関連を検討した。
臨床では骨粗鬆症患者データベースで骨折、転倒、既存薬効果について解析した。ビタミンKとビタミンDとの関連を検討した。液性因子として筋アンドロゲン受容体タンパクの運動による発現をマウス、レプチンとDXAによるSMIの関連を患者で検討。SPと転倒との関係及びDXAと生体電気インピーダンス(BIA)の相関を患者で検討した。
予防介入RCTでは運動と栄養で筋運動、茶カテキン指導を3カ月実施、別に栄養群としてロイシン含有必須アミノ酸補充を行った。3年の追跡調査をした。太極拳介入の長期実施効果を地域在住高齢者60人のRCTで身体能力、転倒、QOLを追跡調査した。
結果と考察
基礎では後期高齢者由来の筋幹細胞不死化に成功し不死化筋細胞クローンを複数分離樹立し、高齢者筋細胞で遺伝子発現の増大している分泌性因子を同定した。神経筋シナプス筋側限局のMuSKが筋/シナプス機能維持に重要な役割を果たしており、MuSK機能制御分子の同定はSPの新バイオマーカーとして利用できる可能性がある。疫学では筋量だけの判定で40歳以上の男25%女24%がSPとされ、歩速度、握力、BMI か下腿囲で判定した簡易基準で65歳以上の5%がSPだった。身体機能みるとエネルギー摂取不足が最も強いリスクだった。EWGSOP判定で有病率は男4.6%、女11.8%で6年間のADL低下オッズ比1.54。握力判定で男性13.5%、女性11.8%で6年間ADL低下オッズ比は1.31 であった。NIRSは回帰モデルで四肢筋量の92%を説明でき、推定式を日本人高齢者4,806名適用し、EWGSOPアルゴリズムに従うとSP有症率は7.2%、筋力と筋量のみの判定で6.9%となった。
臨床では骨密度と独立し下肢筋量のみが大腿骨近位部骨折と関連し、SPは転倒あり骨折あり群で転倒なし群に比して多く、ビスホスホネート単独治療群では筋量が有意に増加していた。ビタミンKは骨量増加と脂肪減少をもたらし、D摂取が極めて少ない集団でも25OHDはD欠乏レベルまでは低下しなかった。筋アンドロゲン受容体タンパクレベル発現は運動で増加、レプチンはSMIと負相関を認めた。VFAは正相関,筋量と負相関みられ、高齢女性の筋量減少は内臓脂肪と独立しリスク数増加と関連。骨格筋VEGF分泌が軽度運動負荷で増加、廃用萎縮で低下した。高齢通院患者の男性67%、女性49%がSPと判定された。地域在住高齢者の10%前後と比してかなり高値であった。転倒とは筋力のみが差があり筋量はなかった。
運動のみならずカテキンも移動能力が改善し両者とも有効と示唆され、単独介入は不十分で運動+アミノ酸補充補充の複合介入が有効だった。3ヶ月運動栄養介入で改善した身体機能効果は3年でほぼ消失する可能性があった。筋量維持や身体能力QOLの向上効果をもたらしたと考えられ長期的太極拳的介入はSP予防に効果的であった。
EWGSOP論文は、サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサス―高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループの報告―の監訳という論文に、日本老年医学会理事長の総監修のもと、本研究班員が案を作成して日本老年医学会からアドバイザーと査読のご協力により完成し、日本老年医学会雑誌に掲載され、学会ホームページからダウンロードできる。
結論
SPに関する科学的対策確立の多領域研究を行った。

公開日・更新日

公開日
2013-07-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-12-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201217003C

成果

専門的・学術的観点からの成果
研究目的の成果:筋肉が加齢とともに減少するサルコペニアは、健康長寿の延長に必須の疾患である、基礎研究で高齢者由来の筋幹細胞不死化、バイオマーカー候補分子の同定、疫学研究で地域高齢者の有病率やリスク、臨床研究で骨折や転倒との関連や有効薬の可能性、予防研究からで運動+栄養や太極拳の介入の有効性が示された。
研究成果の学術的・国際的・社会的意義:日本のサルコペニアの実態を明らかにし、診断物質候補、治療薬候補は国際的レベルで有意義で、予防介入での有効なエビデンスは、明日からの予防の発展に繋がる。
臨床的観点からの成果
研究目的の成果:日本でのサルコペニアの臨床研究における遅れを補う成果を上げることができた。高齢者下肢筋の著しい脂肪化は運動機能低下の病理的意義を持つ所見で、筋量測定の多種機器の信頼性の検定、筋量の骨折転倒との関連性の意義、運動介入の栄養補充併用の有効性などは臨床的に大きな指標となる。 
研究成果の学術的・国際的・社会的意義:今回の研究成果はサルコペニアの老年症候群、虚弱、運動器不安定症などとの関連性を考察する場合に欠かせないものとなる。
ガイドライン等の開発
欧州ガイドラインに該当するEWGSOP論文のQ&A付き監訳を日本老年医学会理事長の総監修のもと日本老年医学会アドバイザーの協力により完成し、日本老年医学会雑誌に掲載され、学会ホームページからダウンロードできる状態にしたことは、我が国でのガイドラインの基礎になる貴重な一歩である
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
特になし

発表件数

原著論文(和文)
32件
原著論文(英文等)
63件
その他論文(和文)
85件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
150件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
原田敦、秋下雅弘、江藤正人、他
サルコペニア:定義と診断に関する欧州関連学会のコンセンサス-高齢者のサルコペニアに関する欧州ワーキンググループの報告-の監訳とQ&A
日本老年医学会雑誌 , 49 (6) , 788-805  (2012)

公開日・更新日

公開日
2017-06-06
更新日
2017-10-03

収支報告書

文献番号
201217003Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
19,986,000円
(2)補助金確定額
19,986,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,061,484円
人件費・謝金 5,430,666円
旅費 679,290円
その他 5,204,479円
間接経費 4,611,000円
合計 19,986,919円

備考

備考
利息114円と自己資金805円が発生したため。

公開日・更新日

公開日
2017-10-03
更新日
-