文献情報
文献番号
201217002A
報告書区分
総括
研究課題名
介護予防の効果検証のための研究-長期コホート研究によるリスク評価と介入研究による検証
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-長寿-一般-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
下方 浩史(独立行政法人国立長寿医療研究センター 予防開発部)
研究分担者(所属機関)
- 吉田 英世(地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター)
- 細井 孝之(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
- 辻 一郎(東北大学大学院 医学系研究科)
- 松下 健二(独立行政法人国立長寿医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 長寿科学総合研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
13,246,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
地域における虚弱高齢者の実態を明らかにするとともに、介護予防施策の効果を検証することを目的に研究を行った。
研究方法
本研究では介護予防施策の効果を、65歳以上人口約1万人の地域における悉皆調査により検証するとともに、要支援・要介護となるリスク因子を全国の長期コホート研究と、個々のコホート研究を全体としてまとめたメタ解析により明らかにした。さらに口腔機能に関してはクラスター化した施設での介入比較試験を行い、介護予防施策の有用性を検証した。
結果と考察
愛知県東浦町の平成21年4月1日現在の65歳以上全住民を対象として、3 年半後の平成24年10月1日現在の要支援・要介護情報および死亡情報から、基本チェックリスト実施の有用性、介護予防事業の有用性について検証を行った。基本チェックリストは、65歳以上の人口9,374人のうち要支援・要介護者を除く8,091人の69.6%にあたる5,631人に実施された。二次予防事業対象者と判定された者と判定されなかった一般高齢者との比較では、二次予防事業対象者は一般高齢者よりも、要支援・要介護になるリスクが高く(オッズ比2.36、p<0.0001)、基本チェックリストによる判定が要支援・要介護となるリスクの高い集団を的確に捉えていることがわかった。二次予防事業対象者のうち介護予防事業参加者と非参加者では参加者で要介護・要支援となるリスクが58%下がっており、年齢・性別・基本チェックリストスコア調整済みオッズ比では0.519 (p=0.096)となり、介護予防教室への参加で要支援・要介護となるリスクは低くなる傾向が認められた。
地域に在住している65歳以上の高齢者のうち、運動機能が低下している虚弱高齢者の割合は男女とも約11パーセントに及ぶなど、運動器機能、栄養状態、口腔機能、閉じこもり、抑うつ、認知機能に関しての障害の実態について明らかにした。また4年間の縦断データを用いて、歩行機能を中心としたADLの低下の要因を網羅的に検討した。その結果、ADLの低下には筋力や運動機能が最も重要であり、握力が10kg低下するとADL低下のリスクは約2倍に増加していた。大腿四頭筋の筋力もやはり10kg低下するとADL低下のリスクは約2倍であった。また、栄養摂取では、たんぱく質摂取量低下がADL低下のリスクになっていた。
愛知、宮城、長野、東京の全国各地の4つのコホート合計4,538名を対象に要支援要介護となる要因についてメタ解析を行った。単独のコホートで有意水準に達しなかった要因も、メタ解析では有意となり、BMIが18.5以下の低栄養、握力の低下、歩行速度の低下、血清アルブミンの低下(男性のみ)、老研式活動能力指標の低下、MMSE得点の低下が要支援・要介護の危険因子となることが明らかになった。
兵庫県内の2地区(A地区、B地区)にてパイロット・スタディに続き、地域高齢住民(152名)を対象に口腔機能維持に関する介入研究を実施した。クラスター化を行った介入群で口腔健康維持に関する講義とともに、個別指導、グループ指導を行った。口腔の健康度に関しては、3ヶ月後の検診時において、処置歯数の増加とともに、歯石の減少、歯周病の低下が認められた。さらに、認知機能(MMSE)の改善、心理状態の変化も認められた。
全国の市町村で地域包括支援センターなどが主体となってさまざまな介護予防事業が実施されているが、その有効性については今まで十分な検証がなされていなかった。市町村での介護予防プログラムを利用していない高齢者が実際には多く、意図された効果が上がっていないことも問題であろう。要支援・要介護となる長期的な危険因子が明らかでなく、介護予防事業を実施するにあたって、具体的な指導法が確定していないことも効果が上がっていない要因となっていると思われる。
地域に在住している65歳以上の高齢者のうち、運動機能が低下している虚弱高齢者の割合は男女とも約11パーセントに及ぶなど、運動器機能、栄養状態、口腔機能、閉じこもり、抑うつ、認知機能に関しての障害の実態について明らかにした。また4年間の縦断データを用いて、歩行機能を中心としたADLの低下の要因を網羅的に検討した。その結果、ADLの低下には筋力や運動機能が最も重要であり、握力が10kg低下するとADL低下のリスクは約2倍に増加していた。大腿四頭筋の筋力もやはり10kg低下するとADL低下のリスクは約2倍であった。また、栄養摂取では、たんぱく質摂取量低下がADL低下のリスクになっていた。
愛知、宮城、長野、東京の全国各地の4つのコホート合計4,538名を対象に要支援要介護となる要因についてメタ解析を行った。単独のコホートで有意水準に達しなかった要因も、メタ解析では有意となり、BMIが18.5以下の低栄養、握力の低下、歩行速度の低下、血清アルブミンの低下(男性のみ)、老研式活動能力指標の低下、MMSE得点の低下が要支援・要介護の危険因子となることが明らかになった。
兵庫県内の2地区(A地区、B地区)にてパイロット・スタディに続き、地域高齢住民(152名)を対象に口腔機能維持に関する介入研究を実施した。クラスター化を行った介入群で口腔健康維持に関する講義とともに、個別指導、グループ指導を行った。口腔の健康度に関しては、3ヶ月後の検診時において、処置歯数の増加とともに、歯石の減少、歯周病の低下が認められた。さらに、認知機能(MMSE)の改善、心理状態の変化も認められた。
全国の市町村で地域包括支援センターなどが主体となってさまざまな介護予防事業が実施されているが、その有効性については今まで十分な検証がなされていなかった。市町村での介護予防プログラムを利用していない高齢者が実際には多く、意図された効果が上がっていないことも問題であろう。要支援・要介護となる長期的な危険因子が明らかでなく、介護予防事業を実施するにあたって、具体的な指導法が確定していないことも効果が上がっていない要因となっていると思われる。
結論
介護予防地域悉皆研究では、地域全体における介護予防施策事業の効果を縦断的に検証し、二次予防事業対象者把握事業、二次予防事業対象者介護予防事業の効果を年齢や性別を調整した要介護・要支援となるリスクのオッズ比として科学的エビデンスとして示すことができた。また、要支援・要介護となるリスク要因が、全国のコホートでの長期にわたる縦断的研究で解明できた。得られたリスク要因を異なったコホートで相互に検証でき、さらにメタ分析により全体をまとめて、高い精度でリスク要因を解明できた。口腔機能維持に関しては 介入研究により、介護予防のエビデンスを得ることができた。
公開日・更新日
公開日
2013-07-16
更新日
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