新しく開発された超高感度内視鏡(従来の強力光源が不要)の脳神経外科領域への臨床応用とその実用化に向けた医師主導治験の実施

文献情報

文献番号
201216007A
報告書区分
総括
研究課題名
新しく開発された超高感度内視鏡(従来の強力光源が不要)の脳神経外科領域への臨床応用とその実用化に向けた医師主導治験の実施
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
本郷 一博(信州大学 医学部脳神経外科学)
研究分担者(所属機関)
  • 千葉 敏雄((独)国立成育医療研究センター 臨床研究センター)
  • 鎮西 清行((独)産業技術総合研究所 ヒューマンライフテクノロジー研究部門)
  • 藤森 敬也(福島県立医科大学 胎児・新生児医学/産婦人科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
80,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我々は近年開発された超高感度カメラ搭載の新しい硬性内視鏡(以下,超高感度内視鏡)を脳神経外科領域(脳室鏡下操作等)および一般の腹腔鏡手術(例えば産婦人科分野)における診断と治療の双方に導入するため,医師主導治験を施行してその薬事申請・承認,それに続く事業化・市場化を促進し,同時に,超高感度内視鏡の短期間での最適化を実現させる.本超高感度内視鏡は,従来の強力な光源を用いない超低照度環境下(例えば単一LEDのみ)でも十分な視野観察を既に可能とし,その完成度も(光学的性能試験・動物実験等を介して)目標の約90%に達している.その最終的完成のために、内視鏡カメラの小型軽量化と色調の高精細化を達成する.
研究方法
H24年度には,国立成育医療研究センターを中心に超高感度内視鏡カメラの開発・試作を進める.これと並行して,信州大学では脳神経外科分野での要求仕様を,福島県立医科大学では産婦人科分野での要求仕様を調査するため,既存の細径立体内視鏡を導入し,臨床研究を行なうことで,従来の照明環境下(強力なキセノン光源使用)における課題を抽出し,開発にフィードバックさせる.また,産業技術総合研究所では,超高感度内視鏡の有効性安全性の評価方法の基礎的検討と,超高感度内視鏡の産業競争力強化のための基礎的検討に取り組む.
結果と考察
H24年度には,HEED-HARP撮像素子を用いた超高感度カメラヘッドの小型軽量化を進め,並行してCMOS撮像素子を用いた超高感度内視鏡カメラヘッドを試作した.CMOSタイプの試作機を用いて,従来の3CCDカメラ画像との定性的な比較を行ない,従来の3CCDカメラではほとんど何も見えないようなLED照明1個に接続した状態であっても,明瞭な画像が得られることを確認した.また,次年度以降の薬事承認に向けて,超高感度内視鏡の定量的な評価方法と,販売に向けた競争力強化のための基礎的検討を行い,評価項目として想定する手術環境での画質評価等の基本性能と基礎安全項目の抽出を行った.さらに,超高感度内視鏡装置の低価格化と機能拡張を可能とする,内視鏡画像のディスプレイ出力制御のための試作機を,従来の内視鏡装置と比較して非常に低いコストで開発した.臨床研究としては,信州大学脳神経外科と福島県立医科大学産婦人科にて,超高感度内視鏡との比較評価対象とする細径立体内視鏡を用いて数例の手術を行った.現行の細径立体内視鏡に対する改善点から,各外科分野で手術に用いる超高感度内視鏡で必要な仕様を抽出した.脳神経外科分野では,非常に狭い空間での観察となるため,ハレーション防止のための光量の自動調整が重要であり,また,カメラヘッドと硬性鏡の接続位置・方向により,手術のやりやすさに大きく影響することがわかった.産婦人科分野では,細径でかつ3Dにした場合は光量不足による画質の劣化が懸念されるため,超高感度カメラによりどこまで改善が可能かを見極める必要がある.
結論
H24年度には,CMOS撮像素子を用いた超高感度内視鏡カメラヘッドを試作し,従来の3CCDカメラ画像との定性的な比較を行なうことで,超高感度内視鏡の優位性を確認すると共に,改良すべき課題も抽出できた.並行して,超高感度内視鏡の評価方法と競争力強化のための基礎的検討を行い,評価項目として想定する手術環境での画質評価等の基本性能と基礎安全項目の抽出を行った.さらに,超高感度内視鏡装置の低価格化と機能拡張を可能とする試作品の開発を行ない,非常に低コストの装置でも十分な内視鏡画像出力制御が行なえることを確認した.臨床研究としては,信州大学脳神経外科と福島県立医科大学産婦人科にて,比較評価用の細径立体内視鏡を用いて数例の手術を行い,我々の超高感度内視鏡に必要な仕様を抽出した.これらの実現により,極細径の内視鏡(非常に細いレンズを通しても明るい画像が撮れる)や細径立体内視鏡(2D内視鏡の1/2以下の細さのレンズであっても明るい3D画像が撮れる),微弱蛍光内視鏡(可視光と比べ微弱な蛍光であっても捉えることができる)など,多岐にわたる用途に展開できると期待される.次年度は,超高感度内視鏡カメラヘッドの薬事承認手続きを進めるためにも,臨床研究の件数を増やし,完成度を高めるため開発にフィードバックを行っていく.

公開日・更新日

公開日
2013-07-11
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201216007Z