文献情報
文献番号
201216001A
報告書区分
総括
研究課題名
気管・喉頭再生治療法の実用化推進研究
課題番号
H24-被災地域-一般(復興)-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
大森 孝一(福島県立医科大学 医学部耳鼻咽喉科学講座)
研究分担者(所属機関)
- 中村 達雄(京都大学再生医科学研究所)
- 川上 浩司(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(被災地域の復興に向けた医薬品・医療機器の実用化支援研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
35,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
気管や喉頭は呼吸、発声、嚥下という生命維持機能を担っている。甲状腺癌進行例などの悪性腫瘍や狭窄症などの炎症性疾患で気管や喉頭が切除されると重大な機能障害を来し、生活の質(Quality of life:QOL)が低下する。チェルノブイリ原発事故後、その周辺では稀な小児甲状腺癌が激増した。福島県では原子力発電所事故により放射線ヨウ素などが飛散し、今後甲状腺癌の増加が懸念され、進行例の治療法を準備しておく必要がある。
本研究の目的は、気管喉頭病変に対して、QOLの低下を来さない質の高い治療法を確立し、実用化につなげることにある。これにより日本発の医療を世界に提供することも可能である。われわれはポリプロピレンメッシュとブタコラーゲンスポンジからなる人工気管を開発し、これを用いた気管喉頭の再生治療法を確立した(Nakamura 2000, Omori 2004)。
動物実験で人工気管を移植し最長5年間の観察で安全性、有効性を検証し、施設内倫理委員会の承認のもと成人10例の気管喉頭再建に使用した。最長6年の経過観察で再狭窄を認めず良好な結果得ている。本研究ではこの治療法をもとにして、課題を解決して臨床研究や治験に橋渡しし、その後の実用化まで進めることが目的である。
本研究の目的は、気管喉頭病変に対して、QOLの低下を来さない質の高い治療法を確立し、実用化につなげることにある。これにより日本発の医療を世界に提供することも可能である。われわれはポリプロピレンメッシュとブタコラーゲンスポンジからなる人工気管を開発し、これを用いた気管喉頭の再生治療法を確立した(Nakamura 2000, Omori 2004)。
動物実験で人工気管を移植し最長5年間の観察で安全性、有効性を検証し、施設内倫理委員会の承認のもと成人10例の気管喉頭再建に使用した。最長6年の経過観察で再狭窄を認めず良好な結果得ている。本研究ではこの治療法をもとにして、課題を解決して臨床研究や治験に橋渡しし、その後の実用化まで進めることが目的である。
研究方法
われわれが既に有する人工気管を用いた治療法の実用化を推進し、医療機器として認可を受けることで施設を選ばず治療が選択されることを目標とする。人工気管の製造スペースを大学施設内に確保し、GMP規格に準拠した医療機器製造クリーンルームを設計する。
平成24年3月1日に通知された「医療機器の製造販売承認申請等について必要亜生物学的安全性評価の基本的な考え方について」(以下、医療機器ガイドライン)に準じて医療機器の安全性を確認するための試験が選択される。人工気管の生体への接触部位及び接触期間を考慮し、一般的な非臨床試験の内容を確認し、必要と考えられる試験を開始する。
平成24年3月1日に通知された「医療機器の製造販売承認申請等について必要亜生物学的安全性評価の基本的な考え方について」(以下、医療機器ガイドライン)に準じて医療機器の安全性を確認するための試験が選択される。人工気管の生体への接触部位及び接触期間を考慮し、一般的な非臨床試験の内容を確認し、必要と考えられる試験を開始する。
結果と考察
医療機器を製造販売するには臨床試験、非臨床試験等クリアしなければならない試験が多く存在する。それらをクリアするためにも画一された医療機器の生産は必要不可欠である。人工気管の製造についてはそれぞれの製造工程を確認し、画一した人工気管が製造される上で各工程に必要なチェックポイントを設け、人工気管製造作業標準・製造記録を作成した。次年度はこの手順に従ってクリーンルームにて製造を始める予定である。
人工気管は気管軟骨の代用として頸部皮下・気管前面に移植され、移植後は半永久的に組織との接触が必要になる。非臨床試験については医療機器ガイドラインに準じ、人工気管の生物学的安全性評価項目としては細胞毒性、感作性、刺激性/皮内反応、急性全身毒性、亜急性全身毒性、遺伝毒性、埋植試験が必要と考えた。これらの試験を行う上で抽出条件の検討が必要となるため、今年度は人工気管の抽出条件検討予備試験を行い、遺伝性毒性試験及び感作性試験用抽出条件、皮内反応試験及び急性毒性試験用抽出条件において適切な抽出条件を検討した。
人工気管の開発環境を調査するために、日本における医療機器および医療材料の臨床研究の制度の状況および開発企業の調査を行った。我が国の制度上、医療機器開発にあたっては臨床研究と治験の2つの臨床試験が制度上存在する。治験の場合には企業と大学との契約によって実施されるが、クラス分類の低い低侵襲の医療機器の改良や改善を行う場合には治験とならずに臨床研究を実施することになる。この場合においては「未承認医療機器を用いた臨床研究実施の手引き」などを活用して臨床試験を実施することが望ましい。
人工気管は気管軟骨の代用として頸部皮下・気管前面に移植され、移植後は半永久的に組織との接触が必要になる。非臨床試験については医療機器ガイドラインに準じ、人工気管の生物学的安全性評価項目としては細胞毒性、感作性、刺激性/皮内反応、急性全身毒性、亜急性全身毒性、遺伝毒性、埋植試験が必要と考えた。これらの試験を行う上で抽出条件の検討が必要となるため、今年度は人工気管の抽出条件検討予備試験を行い、遺伝性毒性試験及び感作性試験用抽出条件、皮内反応試験及び急性毒性試験用抽出条件において適切な抽出条件を検討した。
人工気管の開発環境を調査するために、日本における医療機器および医療材料の臨床研究の制度の状況および開発企業の調査を行った。我が国の制度上、医療機器開発にあたっては臨床研究と治験の2つの臨床試験が制度上存在する。治験の場合には企業と大学との契約によって実施されるが、クラス分類の低い低侵襲の医療機器の改良や改善を行う場合には治験とならずに臨床研究を実施することになる。この場合においては「未承認医療機器を用いた臨床研究実施の手引き」などを活用して臨床試験を実施することが望ましい。
結論
医療機器の安全性を確認するために必要な試験な種類については、人工気管の性質から,細胞毒性、感作性、刺激性/皮内反応、急性全身毒性、亜急性全身毒性、遺伝毒性、埋植試験が必要と考えられ、今年度は人工気管の抽出条件検討予備試験を行った。人工材料の製造において、常に画一された医療機器の製造が重要であり、それをクリアするために製造作業標準・製造記録を作成した。また、GMP基準に準拠したクリーンルームを設置した。
人工気管などの医療材料の医療機器開発を念頭に、その薬事戦略の立案のための制度や動向を調査検討した。これらの成果をもとに、次年度以降、人工気管の製造を開始し、非臨床試験をすすめることで、安全性・有効性を評価する予定である。
人工気管などの医療材料の医療機器開発を念頭に、その薬事戦略の立案のための制度や動向を調査検討した。これらの成果をもとに、次年度以降、人工気管の製造を開始し、非臨床試験をすすめることで、安全性・有効性を評価する予定である。
公開日・更新日
公開日
2013-09-02
更新日
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