文献情報
文献番号
201215022A
報告書区分
総括
研究課題名
重症心不全を対象とする脂肪組織由来多系統前駆細胞による心筋再生細胞医薬品の開発
課題番号
H24-臨研推-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松山 晃文(国立大学法人大阪大学 臨床医工学融合研究教育センター)
研究分担者(所属機関)
- 宮川 繁(国立大学法人大阪大学 医学系研究科)
- 早川 堯夫(近畿大学 薬学総合研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国の心不全による年間死亡数は約4万3千人であり、その多くが末期虚血性心疾患による。重篤な虚血性心疾患・心筋梗塞症例に選択される冠動脈バイパス術によっても、残存心筋細胞の枯渇により治療効果が得られない症例(poor-responder)が存在する。そのため、サイトカイン効果による血管新生を期待した第1世代の再生医療を超えた、枯渇した心筋細胞を再生する第2世代の再生医療が待たれている。本研究においては、重症心不全を対象疾患とし、冠動脈バイパス術poor-responderに適用する経冠動脈的投与脂肪組織由来多系統前駆細胞を自己細胞医薬品として開発する。
研究方法
自己脂肪組織由来多系統細胞を用いる重症心不全治療の、速やかなヒト幹細胞臨床研究への展開を目指し、
1.有効性用量設定試験
2.頻回投与有効性蓄積試験
3.Confidence-in –Mechanism検証
4.安全性検証
5.品質検証
6.プロトコール関連文書作成
の6項目をWorking Breakdown Structure (WBS)として設定し、研究開発を進めることとした。
1.有効性用量設定試験
2.頻回投与有効性蓄積試験
3.Confidence-in –Mechanism検証
4.安全性検証
5.品質検証
6.プロトコール関連文書作成
の6項目をWorking Breakdown Structure (WBS)として設定し、研究開発を進めることとした。
結果と考察
1. 有効用量設定試験:
冠動脈形成術・冠動脈バイパス術poor-responderの重症心不全の病態を反映したモデル動物の設定を目指し、虚血再灌流2段階法を考案、ブタ心筋梗塞モデル作製技術として報告した(Okura et al. BBRC. 2012.)。有効性用量を設定することを目指し、用量として0, 1x105, 3x105, 1x106, 3x106 cells/kgの細胞製剤を経冠動脈的に投与し、最適有効性用量が3x105/kgであることを明らかとした。これまで実施した有効性確認試験は、異種移植であるため免疫抑制剤の影響を否定できない。平成25年度にあっては、免疫抑制剤の影響を排除するため、ブタ自己脂肪組織由来多系統前駆細胞を用いて有効性を確認する必要があろう。
2. Confidence-in-Mechanism(CIM)検証:
in vitro・in vivoでの当該細胞の心筋細胞への分化機序解析を目指し、生体由来心筋細胞と薬剤誘導細胞製剤を共培養し、nkx2.5を指標に心筋系細胞系譜への分化誘導を検討した。心筋系細胞系譜で誘導の一序が、心筋から分泌されるexosomeによる可能性を見出した。これら結果をもとに、心筋系に誘導された細胞がin vivoにて心筋として分化生着することから、in situ reprogrammingとの概念を提唱した(Okura et al. 2012. 米国心臓病学会にて発表)。関与するexosome内miRNAを解析することで、心筋系譜細胞誘導miRNAが決定されれば、より安定的な分化誘導系を検証しうる可能性があろう。
3. 安全性検証:
安全性試験(毒性試験)の実施を目指し、単回投与毒性試験を立案した。薬事戦略相談での助言に基づき、試験観察期間を14日間に延長、試験実施計画書を10版まで改定を加えた。体内動態試験に用いるAlu-PCR法は感度特異度ともに低いことが明らかとなり、細胞を標識しての追跡試験を考慮する。この場合、ラットあるいはマウスを用いてのイメージングシステムが最適と想定される。
5. 品質(製造)検証:
治験薬GMP化を目指し、培養工程で用いる生物由来原料の見直しを行った。遺伝子組み換えへの資材変更により、FBS、フィブロネクチン、ヒトアルブミンのみが薬事法42条基準(生物由来原料基準)の適応となるが、FBSとフィブロネクチンはγ-irradiationを実施することで適合性確保に目途を立てた。
6. プロトコール関連文書作成:
薬食審査発0420第1号治験通知を参考に、治験届関連文書作成を開始した。具体的には、治験薬概要書、治験計画書、製品標準書、標準手順書、製造指図書・記録書および三管理基準書の作成を行い、製品標準書、標準手順書、製造指図書・記録書の第1版は完成した。
冠動脈形成術・冠動脈バイパス術poor-responderの重症心不全の病態を反映したモデル動物の設定を目指し、虚血再灌流2段階法を考案、ブタ心筋梗塞モデル作製技術として報告した(Okura et al. BBRC. 2012.)。有効性用量を設定することを目指し、用量として0, 1x105, 3x105, 1x106, 3x106 cells/kgの細胞製剤を経冠動脈的に投与し、最適有効性用量が3x105/kgであることを明らかとした。これまで実施した有効性確認試験は、異種移植であるため免疫抑制剤の影響を否定できない。平成25年度にあっては、免疫抑制剤の影響を排除するため、ブタ自己脂肪組織由来多系統前駆細胞を用いて有効性を確認する必要があろう。
2. Confidence-in-Mechanism(CIM)検証:
in vitro・in vivoでの当該細胞の心筋細胞への分化機序解析を目指し、生体由来心筋細胞と薬剤誘導細胞製剤を共培養し、nkx2.5を指標に心筋系細胞系譜への分化誘導を検討した。心筋系細胞系譜で誘導の一序が、心筋から分泌されるexosomeによる可能性を見出した。これら結果をもとに、心筋系に誘導された細胞がin vivoにて心筋として分化生着することから、in situ reprogrammingとの概念を提唱した(Okura et al. 2012. 米国心臓病学会にて発表)。関与するexosome内miRNAを解析することで、心筋系譜細胞誘導miRNAが決定されれば、より安定的な分化誘導系を検証しうる可能性があろう。
3. 安全性検証:
安全性試験(毒性試験)の実施を目指し、単回投与毒性試験を立案した。薬事戦略相談での助言に基づき、試験観察期間を14日間に延長、試験実施計画書を10版まで改定を加えた。体内動態試験に用いるAlu-PCR法は感度特異度ともに低いことが明らかとなり、細胞を標識しての追跡試験を考慮する。この場合、ラットあるいはマウスを用いてのイメージングシステムが最適と想定される。
5. 品質(製造)検証:
治験薬GMP化を目指し、培養工程で用いる生物由来原料の見直しを行った。遺伝子組み換えへの資材変更により、FBS、フィブロネクチン、ヒトアルブミンのみが薬事法42条基準(生物由来原料基準)の適応となるが、FBSとフィブロネクチンはγ-irradiationを実施することで適合性確保に目途を立てた。
6. プロトコール関連文書作成:
薬食審査発0420第1号治験通知を参考に、治験届関連文書作成を開始した。具体的には、治験薬概要書、治験計画書、製品標準書、標準手順書、製造指図書・記録書および三管理基準書の作成を行い、製品標準書、標準手順書、製造指図書・記録書の第1版は完成した。
結論
自己脂肪組織由来多系統前駆細胞は、薬剤添加24時間培養により心筋指向細胞へとcommitmentし、経冠動脈的に投与する細胞浮遊製剤として有用性が示しえた。その有効性用量は3x105 cells/kgであり、1x106 cells/kgでは安全性が確認された。頻回投与も有効で、同一病変部に2回投与が最適であった。これら試験結果は、同種脂肪組織由来多系統前駆細胞を用いる心筋再生細胞製剤を薬事法下にて開発している(公財)先端医療振興財団に提供することとした。
公開日・更新日
公開日
2013-08-27
更新日
-