早期乳がんに対するラジオ波熱焼灼療法の標準化に係る多施設共同臨床研究

文献情報

文献番号
201215016A
報告書区分
総括
研究課題名
早期乳がんに対するラジオ波熱焼灼療法の標準化に係る多施設共同臨床研究
課題番号
H23-臨研推-一般-007
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
木下 貴之(独立行政法人国立がん研究センター中央病院 乳腺外科)
研究分担者(所属機関)
  • 高畠 大典(独立行政法人国立病院機構四国がんセンター 乳腺外科)
  • 山本 尚人(千葉県がんセンター 乳腺外科)
  • 藤澤 知巳(群馬県立がんセンター 乳腺科)
  • 増田 慎三(独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 乳腺外科)
  • 津田 均(独立行政法人 国立がん研究センター中央病院 病理科・臨床検査科)
  • 和田 徳昭(独立行政法人 国立がん研究センター東病院 乳腺外科)
  • 土井原 博義(岡山大学病院 乳腺・内分泌外科)
  • 高橋 將人(独立行政法人国立病院機構北海道がんセンター 乳腺外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成19~21年度 厚生労働科学研究費補助金 医療技術実用化総合研究事業「早期乳癌へのラジオ波熱焼灼療法の安全性および有効性の評価」に関する多施設共同研究では、ラジオ波熱焼灼療法(以下RFA)の標準的手技および病理判定法の確立とともに、早期乳癌局所治療におけるその安全性と有効性および適応症例の確立という成果を得た。このPhaseⅠ試験研究の結果をもとに引き続き高度医療として、早期乳癌に対してイメージガイド下RFA(非切除)にて、有効性と安全性を評価するPhaseⅡ試験を多施設共同研究として開始している。乳癌低侵襲局所療法としてのRFAの、中期的有効性と安全性および本治療の特徴である整容性評価を実施することを目的としている。
研究方法
本研究は、初年次にRFA手技の安全性および有効性を確認したPhaseⅠ試験の結果をもとに、「非切除術」としてのRFAの安全性および有効性を検証するための、PhaseⅡを行うこととする。また、PhaseⅡでは、RFAが現行の外科的切除法と比べて最も優位とされる「整容性」についても、検証を行う。症例数は30例にプロトコール逸脱20%を見込んだ37例と設定する。
方法は、PhaseⅠの結果に基づき、術前針生検にて確定診断がなされた早期乳癌(TMN分類上のT1)患者に対して、説明同意文書にて同意を取得後、全身麻酔下に手術室でRFAを行う。イメージ(US)ガイド下に体表面から乳房内病変に対してラジオ波電極針を穿刺し、病変にラジオ波による焼灼を行う。腫瘍縁から1cmマージンを目標として、ニードルポジションを設定する。焼灼中は、超音波画像にてマイクロバブル(焼灼変性部位)の範囲を確認し、クールチップシステムにて焼灼温度もモニタリングし、十分かつ安全な焼灼効果エリアを確保することとする。この際、手技中の合併症に有無を記録する。完全な焼灼確認後、乳房温存療法と同様に術後乳房照射(50 / 60Gy)を実施し術後補助内分泌療法を開始する。RFA後、3ヶ月、6ヶ月および12ヶ月後に、超音波検査(US)やCT、MRIによる画像診断評価、およびマンモト―ム生検、または針生検を実施し病理診断評価を実施し、RFAの安全性および有効性を検証する。なお、採取された検体は、H&E染色と特殊染色法(NADH染色)を用いた病理診断によるRFA効果判定にて、腫瘍のviabilityを判定することとする。
結果と考察
2012年4月30日までに45症例の登録があった。患者の平均年齢は57.4歳で、腫瘍の平均触診径は5.9mmで、検診発見の非触知症例が18例であった。治療前の画像診断別で平均腫瘍径は、MMG; 4.5mm、 US; 8.2mm, MRI; 9.3mm であった。RFAは全例で全身麻酔下に実施され、平均RFA施行時間は、7.2分(3-14分)であった。術中合併症として皮膚熱傷が2例(4.4%)に報告されたが、いずれも保存的に軽快している。平均観察期間は633日(233-1068日)で、局所再発や遠隔再発は認めていない。3ヶ月目の画像診断にてがんの遺残が疑われた症例が3例、12ヶ月目では1例であった。3ヶ月目の針生検は、43例に施行され5例(12%)にがんの遺残が確認され、プロトコールに従って切除が行われた。12ヶ月目の針生検が行われた28例では1例もがんの遺残や再発は確認されていない。規定の治療または検査の拒否が3例、経過観察不能1例と計4例の逸脱例を認めた。1年目の時点の整容性の評価では、39例がexcellent、 5例がgood、1例がfairであった。 術後の断端評価と不完全焼灼の検出を目的とした経過観察の画像診断および針生検の意義に関して、検討した。少なくとも1年目までは、画像診断にて明らかに遺残あるいは再発を疑わせる症例は認めなかった。3ヶ月目の針生検では、43例中5例(12%)にがんの遺残が確認された。1例は、広範囲のEIC(乳管内病変)が確認され、4例は、腫瘍の一部に不完全焼灼が確認された。これらの症例は必ずしもNADH染色が実施されておらず、中央病理判定のよる再評価が必要であると考える。
RFA後1年を経過した症例では、高い整容性が確認され、乳房温存手術と比較して患者のより高い満足度を寄与することが期待される。RFAに針生検を加え、治療の不完全性を補足することで、より安全性、整容性の高い治療法が確立されるものと考える。

結論
早期乳がん(T≦1cm)に対するRFA単独療法は、PhaseⅠ試験の結果と同様に10%超の不完全焼灼症例の可能性がある。施術後の針生検や画像診断を組み合わせることで、不完全焼灼例を切除に切り替えることにより、乳房温存療法と比較して同等の局所制御とより整容性の高い治療法となる可能性が示唆された。

公開日・更新日

公開日
2013-06-12
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201215016Z