小児ネフローゼ症候群における適応外使用免疫抑制薬の有効性・安全性の検証と治療法の確立を目指した多施設共同臨床研究

文献情報

文献番号
201215002A
報告書区分
総括
研究課題名
小児ネフローゼ症候群における適応外使用免疫抑制薬の有効性・安全性の検証と治療法の確立を目指した多施設共同臨床研究
課題番号
H22-臨研推-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 徳茂(和歌山県立医科大学 医学部小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 五十嵐 隆(国立成育医療研究センター)
  • 飯島 一誠(神戸大学 医学部小児科)
  • 本田 雅敬(東京都立小児総合医療センター)
  • 中村 秀文(国立成育医療研究センター)
  • 伊藤 秀一(国立成育医療研究センター)
  • 中西 浩一(和歌山県立医科大学 医学部小児科)
  • 佐古 まゆみ(国立成育医療研究センター)
  • 石倉 健司(東京都立小児総合医療センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
58,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群において再発防止の目的で広く適応外使用がおこなわれている、高用量ミゾリビン、タクロリムス治療の有効性と安全性を検証、適応承認のためのエビデンスを収集し、治療法を確立する。
研究方法
小児ステロイド感受性ネフローゼにおいて再発防止の目的で、適応外使用がおこなわれている、高用量ミゾリビン、タクロリムス治療の有効性と安全性を検証するために以下の2試験を実施する。
1. 初発寛解後早期に再発する小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者を対象とした再発時標準治療(プレドニゾロン治療)と高用量ミゾ
リビン併用治療の多施設共同オープンランダム化比較試験
2. 頻回再発型小児ネフローゼ症候群を対象としたタクロリムス治療とシクロスポリン治療の多施設共同非盲検ランダム化比較試験
 研究者らは平成15年度から臨床研究を推進し、小児腎臓病領域における質の高いエビデンス収集のための一般小児科医も参加した小児腎疾患拡大臨床試験ネットワークを構築し、臨床試験を実施している。本研究では症例数の確保が重要課題である。症例数確保のために、この拡大臨床試験ネットワークを活用する。
結果と考察
高用量ミゾリビン試験とタクロリムス試験を継続した。
平成24年6月1日、国際腎臓学会から新しいネフローゼ症候群の治療指針が発表された。新しい小児ネフローゼ症候群の治療指針では、再発時のプレドニゾロン投与量が1日最大60mgとなっている。従来から国際的に再発時にはプレドニゾロン1日最大80mgで治療がおこなわれており、今回の試験の臨床研究プロトコールでも、再発時にはプレドニゾロン1日最大80mgで治療することになっていた。6月9日班会議全体会議を開催し、再発時プレドニゾロンの投与量を検討した結果、参加施設の意向を踏まえて、1日最大80mまたは60mgと幅を持たせることに決定した。
この会議の結論を踏まえて、6月20日、臨床研究プロトコールを「再発時プレドニゾロンの投与量1日最大80m」から「再発時プレドニゾロンの投与量1日最大80mまたは60mgにする」と改訂した。プレドニゾロン投与量の変更には、倫理委員会の承認を必要とする。高用量ミゾリビン試験の研究責任者の施設で8月、タクロリムス試験の研究責任者の施設で9月に変更が倫理委員会で承認された。その後、他の多くの施設で倫理委員会で審査中もしくは審査手続き中である。
8月にモニタリングレポートを発行したが、高用量ミゾリビン試験、タクロリムス試験ともに、不適格症例、逸脱症例はなかった。重篤な有害事象・重要な薬物有害反応は高用量ミゾリビン試験の1例のみで、この症例も軽快した。2月 にミゾリビン・タクロリムス血中濃度の定期的モニタリングを開始したが、登録患者の血中濃度は目標範囲内であった。このように、試験の管理は厳格に行われており、現状では研究実施計画書の改訂に伴う症例登録の遅れ以外には、特に試験実施上の問題点は認められていない。
このように概ね試験は予定通り進んでいるが、予期しなかった再発時のプレドニゾロン投与量の変更、それに伴う倫理委員会の承認とその後の登録速度の回復のために、高用量ミゾリビン試験とタクロリムス試験ともに症例登録が当初計画より9-12か月遅れる予定である。
結論
概ね試験は予定通り進んでいるが、予想しえなかった、国際腎臓学会の新ネフローゼ症候群の治療指針の発表により、投与量に係わるプロトコールの改訂、臨床研究参加施設での倫理委員会の承認を余儀なくされ、症例集積が当初計画より約12か月遅れる予定である。

公開日・更新日

公開日
2015-06-16
更新日
-

研究報告書(PDF)

文献情報

文献番号
201215002B
報告書区分
総合
研究課題名
小児ネフローゼ症候群における適応外使用免疫抑制薬の有効性・安全性の検証と治療法の確立を目指した多施設共同臨床研究
課題番号
H22-臨研推-一般-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉川 徳茂(和歌山県立医科大学 医学部小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 中西 浩一(和歌山県立医科大学 医学部小児科 )
  • 石倉 健司(東京都立小児総合医療センター)
  • 伊藤 秀一(国立成育医療研究センター)
  • 佐古 まゆみ(国立成育医療研究センター)
  • 五十嵐 隆(国立成育医療研究センター)
  • 飯島 一誠(神戸大学 医学部小児科)
  • 本田 雅敬(東京都立小児総合医療センター)
  • 中村 秀文(国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療技術実用化総合研究(臨床研究推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究では、小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群において再発防止の目的で広く適応外使用がおこなわれている、高用量ミゾリビン、タクロリムス治療の有効性と安全性を検証、適応承認のためのエビデンスを収集し、治療法を確立する。
研究方法
小児ステロイド感受性ネフローゼにおいて再発防止の目的で、適応外使用がおこなわれている、高用量ミゾリビン、タクロリムス治療の有効性と安全性を検証するために以下の2試験を実施した。
A) 初発寛解後早期に再発するネフローゼにおける高用量ミゾリビン治療
1.試験名
初発寛解後早期に再発する小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群患者を対象とした再発時標準治療(プレドニゾロン治療)と高用量ミゾリビン併用治療の多施設共同オープンランダム化比較試験
2.目的
初発寛解後早期に再発する小児ネフローゼ患者を対象としたオープンランダム化並行群間比較試験によって,高用量ミゾリビン併用治療が標準治療(再発時プレドニゾロン治療)に対して頻回再発抑制効果が優性であることを検証する。
主要評価項目:頻回再発までの期間
副次評価項目:無再発期間,再発回数,ステロイド総投与量,有害事象発現割合等
3.対象
小児ステロイド感受性ネフローゼ患者(発症年齢が2歳以上11歳未満)のうち,発症6ヶ月以内に再発しステロイド感受性を示す患者。
4.試験治療
登録された患者に対し,ランダム化割付結果に従い,標準治療群(再発時プレドニゾロン治療群)または高用量ミゾリビン併用群の試験治療を行う。
5.目標症例数と試験実施予定期間
(1)目標症例数:120例(高用量ミゾリビン併用群60例,標準治療群60例)。(2)登録予定期間:2011年3月~2015年2月(4年間)
(3)試験実施予定期間:2011年3月~2017年2月(6年間)
B) 頻回再発型ネフローゼにおけるタクロリムス治療
1.試験名
頻回再発型小児ネフローゼ症候群を対象としたタクロリムス治療とシクロスポリン治療の多施設共同非盲検ランダム化比較試験
2.目的
頻回再発型ネフローゼの小児患者を対象に、タクロリムス治療とシクロスポリン治療との間でランダム化に基づく有効性と安全性の比較検討を行い、研究グループ内での標準治療法の決定を行う。
主要評価項目:無再発期間
副次評価項目:頻回再発までの期間,再発回数,ステロイド総投与量,有害事象発現割合等
3.対象
頻回再発型ネフローゼの小児患者。
4.試験治療
登録された患者に対し,ランダム化割付結果に従い,タクロリムス治療またはシクロスポリン治療の試験治療を行う。
5.目標症例数と試験実施予定期間
(1)目標症例数:120例(タクロリムス群60例,シクロスポリン群60例)
(2)登録予定期間:2010年12月~2014年11月(4年間)
(3)試験実施予定期間:2010年12月~2018年11月(8年間)
結果と考察
平成22年度(初年度):高用量ミゾリビン試験とタクロリムス試験を開始した。
平成23年度(2年目):タクロリムス試験では、試験開始12ヶ月目までに、34参加施設で倫理委員会の承認を得、15症例が登録された。ミゾリビン試験では、試験開始11ヶ月目までに、33施設で倫理委員会の承認を得、8症例が登録された。H17-23年に実施した「頻回再発型ネフローゼ症候群のシクロスポリン試験(H15-小児-002)」では、登録開始から1年間で全参加施設が倫理委員会の承認を得、登録患者数は1年目必要症例数の17%、2年目23%、3年目43%、4年目17%(予定より早く終了)であった。
平成24年度(3年目):高用量ミゾリビン試験とタクロリムス試験を継続した。平成24年6月1日、国際腎臓学会から新しいネフローゼ症候群の治療指針が発表された。新しい小児ネフローゼ症候群の治療指針により、再発時のプレドニゾロン投与量を変更した。プレドニゾロン投与量の変更には、倫理委員会の承認を必要とする。高用量ミゾリビン試験の研究責任者の施設で8月、タクロリムス試験の研究責任者の施設で9月に変更が倫理委員会で承認された。その後、他の多くの施設で倫理委員会で審査中もしくは審査手続き中である。現状では研究実施計画書の改訂に伴う症例登録の遅れ以外には、特に試験実施上の問題点は認められていない。
結論
このように概ね試験は予定通り進んでいるが、予期しなかった再発時のプレドニゾロン投与量の変更、それに伴う倫理委員会の承認とその後の登録速度の回復のために、高用量ミゾリビン試験とタクロリムス試験ともに症例登録が当初計画より9-12か月遅れる予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-09-24
更新日
-

研究報告書(PDF)

行政効果報告

文献番号
201215002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
本研究では、小児ステロイド感受性ネフローゼ症候群において再発防止の目的で広く適応外使用がおこなわれている、高用量ミゾリビン、タクロリムス治療の有効性と安全性を検証、適応承認のためのエビデンスを収集し、治療法を確立する。
臨床的観点からの成果
適応外使用医薬品では、用法・用量等も専門家間で統一されておらず、至適治療とはほど遠い治療が行われることになる。また適応外使用では、一般的に副作用の発現率も高いことが知られている。本研究の結果は、適応取得のための重要なデータとして活用するのみならず、このような適応外使用に伴う問題の解決にも役立てる。
ガイドライン等の開発
本研究により、より効果が期待される新たな治療法について、その臨床上の位置づけを明確にし、国内外のガイドラインに反映する。改訂ガイドラインにより、より有効で安全な薬物治療の確立と治療の均霑化に寄与できる。
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
日本では、年間約1300人のネフローゼ患児が新規発症例として報告されている。90%はステロイドに反応するステロイド感受性ネフローゼであるが、40-50%は再発をくりかえし、頻回再発型ネフローゼとなる。これは長期入院の主要原因疾患である。再発回数を減少することができれば、患者の予後とQOLは改善し、また医療費の削減も期待できる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
35件
その他論文(和文)
53件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
86件
学会発表(国際学会等)
32件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2015-05-27
更新日
2017-06-20

収支報告書

文献番号
201215002Z