急性脳梗塞治療加速のための薬物超音波併用次世代普及型低侵襲システムの開発

文献情報

文献番号
201212024A
報告書区分
総括
研究課題名
急性脳梗塞治療加速のための薬物超音波併用次世代普及型低侵襲システムの開発
課題番号
H24-医療機器-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
小川 武希(東京慈恵会医科大学 救急医学講座)
研究分担者(所属機関)
  • 峰松 一夫(国立循環器病研究センター 内科脳血管部門)
  • 山本 晴子(国立循環器病研究センター 脳循環内科)
  • 古賀 政利(国立循環器病研究センター 内科脳血管部門)
  • 羽野 寛(東京慈恵会医科大学 人体病理学)
  • 井口 保之(東京慈恵会医科大学 神経内科学)
  • 横山 昌幸(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究室)
  • 金本 光一(東京慈恵会医科大学 医用エンジニアリング研究室)
  • 福田 隆浩(東京慈恵会医科大学 神経病理学)
  • 三村 秀毅(東京慈恵会医科大学 神経内科学)
  • 丸山 一雄(帝京大学 薬学部)
  • 幸 敏志(田辺三菱製薬株式会社 研究本部 薬理第一研究所第二部)
  • 川島 裕幸(株式会社カネカメディックス 開発本部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
現在、急性期脳梗塞に対して唯一の強く勧められる治療法がrt-PA静注療法である。本研究はrt-PA静注療法の効果と安全性を飛躍的に高めるための超音波照射併用療法を開発する。この開発は、中周波数超音波照射、定在波抑制、ソフトな貼付型超音波振動子、経頭蓋カラードブラ頭部固定具、バブルリポソームの技術を組み合わせることで、より効果が高く安全で,施行が簡便で広く普及し得る急性期脳梗塞治療法を確立する。さらに、臨床のヒストリカルデータを精密に収集・解析することで、より少人数での短期間の臨床試験を可能とする。
研究方法
本研究では機械作用及び発熱作用による両側面での脳組織への障害作用が最も小さいと考えられる500kHzの中周波数超音波照射を行う。これに各種超音波変調による定在波抑制技術を組み合わせることで、過去の臨床試験での脳出血の発生を抑制する。また、定在波の程度を、シュリーレン法を用いた画像解析によって行う。ソフトな貼付型超音波振動子はハイQ材とローQ材の素材、サイズ,形状を変えたもの数種を作製する。一方、超音波の血栓溶解促進作用を容易かつ高精度に測定するためのin vitro超音波血栓溶解促進効果測定法を新しく構築する。さらに、超音波照射の際に血栓溶解作用をさらに高めるバブル成分としてC3F8ガスを含み,直径が1ミクロン未満のバブルリポソームを作製する。臨床サイドでは、本研究の治療プロトコル作製のため、国立循環器病研究センターでの,急性期脳梗塞患者およびrt-PA静注療法実施患者の臨床データ解析を行うとともに、経頭蓋カラードブラ探触子を容易に患者に長時間固定するための固定具を作製する。
結果と考察
(1)超音波変調による定在波抑制:Standing Wave Ratioを定義することで、シュリーレン画像の輝度に基づく解析法を確立した。超音波変調をPMN法、PSRF法、RSBIC法の3種類の方法によって加え、輪切りのヒト頭蓋骨を用いたところ、いずれの方法によっても、定在波は抑制されたが、RSBIC法が最もその程度が大きかった。この結果は、頭蓋骨超音波透過性等と合わせて、超音波条件の最適化に活用される。 (2)in vitro超音波血栓溶解促進効果測定法:2枚のプラスチック板よりなるセル内に作製した血栓の厚さ変化を分光学的に測定するという新測定法を確立した。セルの材質とサイズを工夫することで、反射の影響が無く、超音波の音響強度と対応した,rt-PA血栓溶解促進効果を定量的に測定することが可能となった。(3)バブルリポソーム作製:バブル成分としてC3F8ガスを含み、血栓特異リガンドとして環状化RGDペプチドを外側に結合させた平均粒径614nmのバブルリポソームを作製した。in vitroでの活性化血小板への結合が、RGDペプチドの存在によって顕著に高まることが、フローサイトメトリーでの解析で実証された。次年度は主に、更なる特異性・ターゲティング性能の向上のための、組成最適化を行う。(4)貼付型ソフト振動子設計・作製:素材としてハイQ材、ローQ材、サイズ(直径16mm〜50mm),形状(角形、円状)の組合せから数種の貼付型ソフト振動子を作製し、概ね本開発が求める性能を得た。次年度は様々な要素の比較検討により、超音波振動子とその超音波照射条件の最適化を遂行する。(5)急性脳梗塞ヒストリカルデータ解析:急性脳梗塞患者1002例とrt-PA静注療法施行の354例の解析を行った。2012年9月のrt-PA療法治療開始可能時間が発症3時間以内から4時間半以内に延長されたことによるrt-PA静注療法適用患者数は1.3倍に増加すると推定された。一方、rt-PA静注療法施行患者の閉塞血管の再開通はrt-PA静注療法開始から1時間までが50%,2時間までが51%,24時間までが57%,14日までが74%であった。これらのデータは、本研究開発技術の臨床試験計画作成および効果判定のための対照群として有用である。(6)経頭蓋カラードプラ探触子固定具作製:容易に患者に長時間固定するため適すると考えられるヘルメット式で3つの試作品を作製した。主な改良点は様々な超音波探触子サイズへ対応するためのクランプ方式での固定、アームの反転方法の改善であり、試作品第3号は実用に値するものとなった。
結論
平成24年度は、本研究開発の基本的要素技術を確立した。予定通りの成果が得られたものと考えられる。平成25年度はこの要素技術を組合せて研究を推進する。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201212024Z