読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上―経網膜電気刺激(STS)法)の実用化

文献情報

文献番号
201212022A
報告書区分
総括
研究課題名
読書が可能な人工視覚システム(脈絡膜上―経網膜電気刺激(STS)法)の実用化
課題番号
H24-医療機器-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
不二門 尚(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 西田幸二(大阪大学 医学系研究科)
  • 瓶井資弘(大阪大学 医学系研究科)
  • 大路正人(滋賀医科大学)
  • 林篤志(富山大学 医学部)
  • 平形明人(杏林大学 医学部)
  • 貴島晴彦(大阪大学 医学系研究科)
  • 梅垣昌士(大阪大学 医学系研究科)
  • 北澤茂(大阪大学 医学系研究科)
  • 太田淳(奈良先端科学技術大学院大学)
  • 小澤素生((株)ニデック)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、確立した有効な治療法がない、本邦の視覚障害原因3位の網膜色素変性(RP)に対して、本邦独自に開発した、脈絡膜上経網膜電気刺激(STS)法による人工視覚システムを実用化して、失明したRPの患者に対して、読書が可能な視力を取り戻すことである。われわれは、2010年に、STS法による、9チャンネル(Ch)の慢性埋め込み型システムを2名のRPの患者に対して1ヶ月間埋植し、箸箱を認識して把持することが可能であることを示した。本研究は、電極数を9Chから 49Chに増加させ、読書可能な人工網膜を実用化することを目的とする。平成24年度は、49Chの慢性埋め込み型システムのパーツ(協力企業(株)Nidek製作)の安全性・有効性試験(家兎,ネコ)を行った後49Chのトータルシステムの安全性試験(イヌ)を行う。最適な刺激パラメータを、網膜機能画像を用いた動物実験等により検討する。人工網膜の適応を決定するための低視力者の視力評価法、および適応基準を確立し、患者のリクルートを行う。また、本システムによる人工視覚の評価法、視覚リハビリテーション法を検討し、実用的な視覚を早期に得られる方法を探索する。
研究方法
I.  49Ch人工網膜システムの安全性、有効性試験
    1) 49Ch電極システムのパーツごとの安全性、有効性試験 (家兎)
    2) 49Ch-STSトータルシステムの安全性試験 (イヌ)
II. 49Ch-STSトータルシステムの術式の安全性確立 (献体)
III. 人工網膜の適応患者の選択基準の確立   
IV. STS人工網膜システムによる人工視覚の評価法、リハビリテーション法の確立
V.  臨床研究のデザインの検討
結果と考察
Ⅰ) (1)家兎を用いた実験で、多孔化電極の安全性が、刺激電流値が1mA以下であることが確認された。また、Multiplexerを設置した多極電極の埋植術の安全性は、家兎で確認された。
(2)イヌに関してトータルシステムの長期(>3か月)埋植実験を行い、術後の前眼部および眼底検査で安全性が確認され、角膜上での電位検査でシステムが有効に稼働していることが確認された。
Ⅱ)2次コイルおよびデコーダーの埋め込み位置、方法について献体を用いて検討し、耳の後部の皮下で頭蓋骨を切削することにより、デバイスを安定して固定できることが確認された
Ⅲ)進行したRP患者に対して、経角膜電気刺激で擬似光覚が誘発される電流閾値と光干渉断層計(OCT)での網膜厚の関係を検討した結果、OCTの傍中心窩網膜厚が250um以上の症例で、有効な疑似光覚が得られることが分かり、以前行った9Ch人工網膜の結果と併せて、擬似光覚が得られる電流閾値1mA, 傍中心窩網膜厚が250um以上が適応基準として妥当と考えられた。
Ⅳ)コンピュータに縞視力視標を組み込んだ低視力検査装置を開発し、超低視力者の視力を数値的に解析できることが示された。また、Localization Testを開発し、光を自覚した位置を触覚でフィードバックすることにより、眼と手の共同運動の訓練ができることが示された。
Ⅵ)PMDAへの事前相談を行い、デバイスの安全性試験の基準、臨床試験のエンドポイントに関する助言を得た。
結論
49Ch電極によるSTS人工視覚装置の体内システムは、少なくとも3か月間の埋植に対して安全性が確認され、適応患者の選択基準も確立し、臨床研究を行う準備が整った。また、低視力者の視力測定装置、リハビリテーション法も擬似的な低視力者に対して確立し、デバイス埋植後の視機能評価、およびリハビリテーションの体制がほぼ整った。さらにPMDAに対して事前相談を行い、臨床試験のプロトコール作成に対する有益な助言が得られ、治験を視野に入れた今後の開発方針が固まった。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201212022Z