肝臓に対する新規DDSを活用した経口遺伝子治療法の開発

文献情報

文献番号
201212009A
報告書区分
総括
研究課題名
肝臓に対する新規DDSを活用した経口遺伝子治療法の開発
課題番号
H23-医療機器-一般-002
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
横田 隆徳(東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 片岡 一則(東京大学 大学院マテリアル工学専攻)
  • 村上 正裕(大阪大谷大学 薬学部)
  • 小比賀 聡(大阪大学 大学院)
  • 和田 猛(東京大学 大学院)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 医療機器開発推進研究(医療機器[ナノテクノロジー等]総合推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
臨床応用を念頭に、合成機能性核酸分子の安定性及び有効性の向上、脂質分散製剤の送達効率及びその変動を改善するための核酸化学的検討、マウス動物実験を行なう。
研究方法
1) 脂質分散製剤の調製
オリゴ核酸モデルとしては、主にVE-siRNA(Cy3蛍光標識体又は非標識体)を、単独、又は、吸収促進剤との脂質分散製剤として実験に使用した。リノール酸等の吸収促進剤を、用時、3.0% HCO-60を添加後、5分間20kHz, 30W、氷上で超音波処理により分散し混合ミセル化し、さらにsiRNAを添加後、混合分散することにより調製した。
2) 動物実験
マウスを16時間絶食にし、300 µlのミルクを30分おきに3回強制経口投与し、小腸ループの近位側または肛門から、1回の投与につき10 mg/kgのsiRNAを投与し、24時間後の肝臓の組織学的検討や定量的RT-PCR (qRT-PCR) 解析を行った。
(倫理面への配慮)
動物実験は、動物愛護、および実験動物の適正管理、動物実験の適正化の観点から、東京医科歯科大学、大阪大谷大学動物実験委員会規定と動物実験指針に基づいて行った。
結果と考察
【研究結果】
1. 脂質ナノ分散製剤化による送達性の改善
前年度のDLSを用いた検討結果より、VE-siRNAは、リノール酸-HCO60混合ミセル(MM)と会合し、製剤中では約14nmのナノ微粒子(Lipid nanoparticles, LNP)を形成して存在することが示唆された。一方、この製剤には、少数ながら1500nm以上に多峰性の粒子分布を含むことが示された。そこで、肝臓への送達性が顕著に改善されることが明らかとなった。肝移行性の経時的変化の比較から、μmサイズの粒子の混在により、肝への送達効率の低下や遅延を生じることが示唆された。
2. 二本鎖核酸に結合するカチオン性ペプチドの開発
A型二重らせん構造を有する二本鎖核酸のメジャーグルーブに結合可能なカチオン性分子として、アミノ基を有し、側鎖メチレン長が1〜4のオリゴペプチド(カチオン性残基数=8)の合成を達成した。この分子の結合により、ΔTm=14.0 °Cと二重鎖の安定化効果を示し、蛍光異方性測定によりRNA二重鎖に対して強く結合することが示された。さらに、RNase A耐性が獲得されたことがポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、RNAi活性に影響がないことを培養細胞系への導入後の標的RNAのqRT-PCRにて検証した。
4. エンドソーム脱出素子の設計および作成
VE-siRNA/MMのsiRNAデリバリー効率を高めることを目的としてCharge Conversional Polymer (CCP)の側鎖にpH応答性結合を介してsiRNAを導入した新規siRNAコンジュゲート(siRNA-releasable/ endosome- disrupting conjugate, REC)を開発し、siRNAがポリマーから脱離することによって効率的な細胞質内へのsiRNAデリバリーが達成されることを、電気泳動法(PAGE)、蛍光相関分光(FCS)測定、培養細胞の細胞内における分布、標的遺伝子のルシフェラーゼのノックダウン効率にて検証した。

【考察】
消化管粘膜表層は、粘液層に被覆されており、これらはムコ多糖のような高分子により網目構造なし拡散層を形成している。このためμmオーダーの粒子では腸管上皮細胞層へ至るまでの拡散過程が律速を与えるため、注腸製剤の分散粒子からマイクロサイズの粒子を排除してナノ粒子として均質化することによって、肝送達性が顕著に改善したものと推察される。
一方、核酸医薬品開発において核酸分子の安定性はもう一つの大きな課題である。
その点で、和田らの開発したカチオン性ペプチドDab8は、A型構造を有する二本鎖RNAに結合することにより、RNase A耐性が獲得されるが、RNAi活性は阻害しないことが示さ、有望と考えられた。
さらに標的の肝細胞内でsiRNAの有効性向上のために、エンドソーム脱出効率を高めることを目的としたCCP)RECを利用した完全合成系のsiRNAキャリアPICの開発に成功した。今後はVE-siRNA/CMへの導入が課題である。
結論
VE修飾核酸-混合ミセル混合物を均一なナノ粒子製剤とすることによって、吸収の促進およびデリバリー効率の改善と、RNase A耐性を有してかつRNAi活性を阻害しない二重鎖核酸結合性を有するカチオン性ペプチドの合成に成功した。
核酸医薬の有効性向上のために、エンドソーム脱出効率を高めたCharge Conversional Polymer (CCP) :RECの開発に成功した。

公開日・更新日

公開日
2013-09-03
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201212009Z