文献情報
文献番号
201211001A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト iPS 細胞を用いた有用な医薬品等創出のための基盤技術開発研究
課題番号
H24-iPS-指定-001
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
川端 健二(独立行政法人医薬基盤研究所 創薬基盤研究部 幹細胞制御プロジェクト)
研究分担者(所属機関)
- 関野 祐子(国立医薬品食品衛生研究所 薬理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 創薬基盤推進研究(iPS細胞等ヒト幹細胞を用いた創薬基盤研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
ヒトiPS細胞は再生医療だけでなく、創薬への応用も強く期待されている。医薬品の開発初期段階において免疫毒性や神経毒性等の薬物毒性を精度高く予測することは、創薬コスト削減・期間短縮・創薬シーズのヒット率の向上をもたらし、我が国の基幹産業のひとつである製薬産業の国際競争力向上に繋がると期待される。しかしながら、薬物毒性を in vitro で簡便にスクリーニング可能な評価系は確立されていない。そこで、ヒトiPS細胞を用いて、薬物免疫毒性評価系および薬物神経毒性評価系を新たに構築することを目指す。
研究方法
マウスiPS細胞から分化誘導したマスト細胞を用いた薬物毒性評価系構築に関する基礎的検討、ヒトiPS細胞から血液前駆細胞および血管内皮細胞への分化誘導法の確立、ヒト iPS 細胞由来神経細胞を用いたin vitro 毒性評価系の構築、in vitro 血液脳関門(BBB)モデルの改良を試みた。
結果と考察
マウスiPS細胞から得られたマスト細胞は、アレルギーを惹起する薬物(バンコマイシン等)に対して感度良く脱顆粒応答を示した。また、ヒトiPS細胞と支持細胞をVEGF存在下で共培養することにより、血液前駆細胞への分化誘導法が確立された。今後、本手法によって得られたヒトiPS細胞由来CD34陽性CD43陽性細胞を用いて、各種血液細胞への分化誘導法を確立する。ヒトiPS細胞から形成させた胚様体(embryoid body; EB)にBMP4やVEGFを作用させることにより、血管内皮細胞を効率よく分化誘導できた。今後、得られた細胞の機能の評価を行う予定である。また、ヒトiPS細胞から誘導した血管内皮細胞とアストロサイト様細胞株等との共培養により、脳血管内皮細胞が高発現しているタイトジャンクション蛋白質・トランスポーター蛋白質等の発現が上昇するかどうか検討を進めることで、脳特異的血管内皮細胞の作製を試みる予定である。さらに、BBBを構成する細胞として、ニューロン、血管内皮細胞、アストロサイト以外にもミクログリアが知られている。このうち、ミクログリアはマクロファージと形状および機能が非常に似ているため、前述したヒトiPS細胞由来血液前駆細胞からミクログリアを分化誘導できる可能性がある。ヒトiPS細胞からミクログリアが分化誘導可能となれば、全てヒト細胞から成るin vitro BBBモデルの作製へと繋がると考えられる。
ヒト iPS 細胞由来神経細胞で機能する伝達物質受容体を調べるための細胞内カルシウムイメージング系を確立した。また、ミクログリア を従来型血液脳関門(BBB)モデルに添加しバリア機能の定量的解析を行ったところ、バリア機能が増強することを見出した。分子レベルでの詳細な解析は今後進める予定であるが、我々は生後初期の神経新生、グリア新生をミクログリアが複数のサイトカインを介して促進することを見いだしている。従って、同様のメカニズムにより、内皮細胞の機能分化を促進している可能性も考えられる。我々が構築しているモデル系は従来のモデル系より生体内の脳に近いことから、薬物や障害に対する反応性に関してこれまでのモデルとの比較データをとる必要があろう。
ヒト iPS 細胞由来神経細胞で機能する伝達物質受容体を調べるための細胞内カルシウムイメージング系を確立した。また、ミクログリア を従来型血液脳関門(BBB)モデルに添加しバリア機能の定量的解析を行ったところ、バリア機能が増強することを見出した。分子レベルでの詳細な解析は今後進める予定であるが、我々は生後初期の神経新生、グリア新生をミクログリアが複数のサイトカインを介して促進することを見いだしている。従って、同様のメカニズムにより、内皮細胞の機能分化を促進している可能性も考えられる。我々が構築しているモデル系は従来のモデル系より生体内の脳に近いことから、薬物や障害に対する反応性に関してこれまでのモデルとの比較データをとる必要があろう。
結論
ヒトES/iPS細胞から支持細胞との共培養法あるいはEB形成法を介してCD34陽性の血液前駆細胞への分化誘導法が確立された。また、適切なサイトカインを作用することで、ヒトiPS細胞からCD34やCD31、CD144を発現する細胞の作製に成功した。これらの結果は、薬物毒性スクリーニングに応用可能な細胞を作製するための基盤技術となることが期待される。また、ヒト iPS 細胞由来神経細胞を用いた in vitro 毒性評価系として、神経細胞死評価法、シナプス機能障害評価法を確立した。さらに、 従来の in vitro BBB モデルにミクログリアを添加することにより、BBB のバリア機能が亢進することを明らかにした。
公開日・更新日
公開日
2013-09-24
更新日
-