文献情報
文献番号
201206006A
報告書区分
総括
研究課題名
ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のための基盤技術の創成
課題番号
H23-再生-一般-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター 生殖・細胞医療研究部)
研究分担者(所属機関)
- 佐藤 陽治(国立医薬品食品衛生研究所 遺伝子細胞医薬部)
- 末盛 博文(京都大学再生医科学研究所)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 厚生科学基盤研究分野 再生医療実用化研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
30,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
細胞・組織加工医薬品等による再生医療は、ヒトの臓器や組織の確保が難しいわが国の医療状況下において強く期待されており、研究の進歩に伴う技術的な実現可能性の高まりとともに、医療としての実用化を望む声がますます強くなっている。その中で、わが国をあげて再生医療の実用化に向けた動きが急速に進められており、特にヒト由来の多能性幹細胞、すなわち間葉系幹細胞、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)について、近い将来に予想される製品の評価を円滑に進めるための準備を早期に行う必要がある。各種幹細胞の実用化のために必要な要件を開発初期から示すことは、これらをより迅速に実用化するために必須である。「細胞・組織加工医薬品等の品質及び安全性の確認申請記載要領」(薬食審査発0420第1号、平成22年4月20日)をベースとし、本年度に通知された「ヒトES 細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針(薬食発0907第6号、平成24年9月7日)」を参考にして、ES細胞の安全性・有効性に関する検討を行う。具体的には原材料及び製造関連物質、製造工程、加工した細胞の特性解析、最終製品の形態・包装、製造方法の恒常性及び妥当性、製造方法の変更、製造施設・設備の概要、感染性物質の安全性評価、最終製品の品質管理法、試験方法のバリデーション、規格及び試験方法の妥当性、試験に用いた検体の分析結果、細胞・組織加工医薬品の非臨床安全性試験、細胞・組織加工医薬品等の効力又は性能を裏付ける試験、細胞・組織加工医薬品等の体内動態、臨床試験に関して詳細に検討し、細胞医療の安全性及び有効性に関するデータの蓄積と周辺基盤技術を構築する。特に小児難治性疾患(特に先天性代謝異常症)に対する再生移植療法応用を視野に入れた早期実用化に資することを目的とする。
研究方法
我々が従来から進めている、医薬品製造基準に基本的に適合した培養および工程管理の有効性を検証した。動物由来成分を含まない培養液と化学合成された基質を用いて培養をおこなったのち、仮想的にバンクスケールでの凍結保存ストックの作成を行った。また凍結保存サンプルについて品質検査を行い、これまでのところ未分化細胞としての特性を保持していることを確認した。あわせて、ヒトES細胞の自己増殖機構に着いての分子生物学的解析や、組換えタンパク質を基質の用いた培養方法の開発をおこなった。
結果と考察
今回は実際の製造工程にほぼ近い形で中規模のマスターセルバンク構築のウェットランにともない、品質評価を実施し特性がバンク構築の過程で変化することがないことを示すことができた。これらの環境に関する情報を統合し、社会に提示することで再生医療の汎用性向上のための大きな礎となることができる。
結論
現在までに国内で2施設がES細胞の樹立機関として認定されている(京都大学、国立成育医療研究センター)。しかしながら臨床応用を開始するまでは多くの基盤研究ならびに細胞の整備が必要となる。本研究に用いるES細胞は、主任研究者である梅澤(樹立責任者18諸文科振第832号平成19年3月5日)らが、樹立初期から「ヒトES細胞加工医薬品等の品質及び安全性の確保に関する指針案」を意識した、樹立・培養を進行させており、その、初期培養された細胞が蓄積されている。さらにこれらの細胞を用いた神経、心筋、肝臓、骨を構築する研究が進行している。このES細胞を用いた再生医療が現実味を帯びてきており、再生医療・細胞移植の最適の対象になっている。ES細胞自体を生体内マイクロデバイスとして利用する新たな治療戦略を現実するために必要なステップとして、1) 原材料及び製造関連物質の明確化(体外受精胚の起源・選択理由の明示、ドナー選択の倫理的妥当性、培養方法、培養材料の明示等)、2) 製造工程の明確化、3) 最終製品の品質管理法の確立がある。このような世界的な状況の中で、ヒトES細胞の維持および可塑性の分子基盤を明確にすることを目指し、その評価・検証システムの元にES細胞の提供までを視野に入れた「ヒト胚性幹細胞をドナー細胞とする再生医療の汎用性向上のための基盤技術開発」は再生医療促進にとって必要不可欠なものであり、速やかな確立が必要である。
公開日・更新日
公開日
2013-09-01
更新日
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