文献情報
文献番号
201205025A
報告書区分
総括
研究課題名
化学テロ等健康危機事態における医薬品備蓄及び配送に関する研究
課題番号
H24-特別・指定-020
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
吉岡 敏治(公益財団法人日本中毒情報センター)
研究分担者(所属機関)
- 嶋津 岳士(大阪大学大学院 医学系研究科)
- 水谷 太郎(筑波大学 医学医療系 救急・集中治療医学)
- 黒木 由美子(公益財団法人日本中毒情報センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 厚生労働科学特別研究
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
7,600,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究は、化学剤による健康危機管理対策に必要な解毒剤の備蓄の在り方と地方自治体での管理・供給を想定した場合の最適なシステム構築方法を検証することを目的とした。
研究方法
都市型(大阪府)と地方型(茨城県)の自治体をモデルとして、化学テロ等発生想定と備蓄解毒剤配送を中心とした対応シナリオを作成し、備蓄解毒剤の最適配置・配送について検証した。シナリオ検討に際して、府県内主要医療機関および医薬品卸に対し、必要医薬品の備蓄に関するアンケート調査を実施し現状を明らかにした。さらに医療関係者(コ・メディカル、医師)向けに、備蓄解毒剤の医薬品情報および関連する化学物質の中毒情報の整備を行った。
結果と考察
都市型自治体では大規模サリン散布事案とヒ素の食品混入事案の事例研究を行った。大阪府内のある人口密集地でサリン撒布シナリオ(患者数4,000名うち解毒剤投与対象者1、000名(重症100名、中等症900名)が発生する事態)を想定した。この場合、搬送先となりうる医療機関は10施設あり、近隣医薬品卸を含めた解毒剤プラリドキシム製剤の在庫量を勘案すると、初回投与が行える患者は治療対象者のわずか4割程度と見込まれた。解毒剤の備蓄として基幹災害医療センターに初回投与2,500名分を準備したとすると、重症患者100名は発生後120分以内に初回投与を完了できると考えられた。また、より迅速に対応するためには、日本国内では静注製剤である解毒剤プラリドキシムの筋注製剤の開発が必要であることが課題として挙げられた。また大阪府内でのヒ素食品混入事案シナリオ(患者数100名うち解毒剤投与対象者70名(重症10名、中等症60名)が発生する事態)を想定したところ、繰り返し投与も考慮すると延べ150名分のジメルカプロール製剤が必要であるところ、医療機関7施設と近隣医薬品卸の在庫量は90%程度であり、目標とする曝露後120分程度で全患者に投与完了することは困難であることが判明した。同製剤の備蓄が初回投与で250名分基幹災害医療センターにあったとすると、原因物質接触から2時間半で赤タグおよび黄タグのすべての患者に、同剤の1回目の投与が完了すると考えられた。
地方型自治体では、サリン散布事案とシアン化学災害を検討した。サリン散布事案(患者数2,000名、解毒剤投与が必要な患者数200名(重症20名、中等症180名)と想定)においては、搬送先の医療機関5施設および近隣医薬品卸のプラリドキシム製剤在庫量では、初回投与でも治療可能になるのは対象者の2/3に過ぎなかった。県内の二カ所の三次医療機関に1,250名分の備蓄があったとすると、投与推奨時間の120分以内に投与が終了できると考えられた。ある工場地帯でのシアン化学災害事案(患者数100名、解毒剤投与が必要な患者数50名(重症15名、中等症35名)を想定)においては、搬送先と考えられる医療機関3施設と近隣医薬品卸には解毒剤のヒドロキソコバラミン製剤の在庫が全くなく、解毒剤投与推奨時間30分以内の投与は非常に困難であることが判明した。県内の二カ所の三次医療機関に各50名分備蓄していたとしても、50名分の解毒剤投与が完了するのは発災から180分後であり、各都道府県の実情に即した備蓄配備体制の検討が必要であると考えられた。
地方自治体レベルでの解毒剤の備蓄の在り方として、本研究班での検討では各都道府県の災害対応の基幹となり、重症患者を多数受け入れ可能な医療機関が望ましいと考えた。一方、備蓄地からは他院への配送が必要な事態も考えられ、その際の配送方法の在り方について薬事法上の問題も含めた検討が必要なことも指摘され、医薬品卸の備蓄センターの活用といった可能性についても検討すべきと考えられた。また、備蓄スペースの確保と医薬品管理のコスト負担についても検討が必要であることを指摘した。
医療情報は、医療関係者(コ・メディカル、医師)に対し6種類の解毒剤および関連する15種類の中毒起因化学物質(群)について整備し、日本中毒情報センターのホームページに掲載することにより、災害現場でも活用可能なモバイル型システムとして稼動可能となった。
地方型自治体では、サリン散布事案とシアン化学災害を検討した。サリン散布事案(患者数2,000名、解毒剤投与が必要な患者数200名(重症20名、中等症180名)と想定)においては、搬送先の医療機関5施設および近隣医薬品卸のプラリドキシム製剤在庫量では、初回投与でも治療可能になるのは対象者の2/3に過ぎなかった。県内の二カ所の三次医療機関に1,250名分の備蓄があったとすると、投与推奨時間の120分以内に投与が終了できると考えられた。ある工場地帯でのシアン化学災害事案(患者数100名、解毒剤投与が必要な患者数50名(重症15名、中等症35名)を想定)においては、搬送先と考えられる医療機関3施設と近隣医薬品卸には解毒剤のヒドロキソコバラミン製剤の在庫が全くなく、解毒剤投与推奨時間30分以内の投与は非常に困難であることが判明した。県内の二カ所の三次医療機関に各50名分備蓄していたとしても、50名分の解毒剤投与が完了するのは発災から180分後であり、各都道府県の実情に即した備蓄配備体制の検討が必要であると考えられた。
地方自治体レベルでの解毒剤の備蓄の在り方として、本研究班での検討では各都道府県の災害対応の基幹となり、重症患者を多数受け入れ可能な医療機関が望ましいと考えた。一方、備蓄地からは他院への配送が必要な事態も考えられ、その際の配送方法の在り方について薬事法上の問題も含めた検討が必要なことも指摘され、医薬品卸の備蓄センターの活用といった可能性についても検討すべきと考えられた。また、備蓄スペースの確保と医薬品管理のコスト負担についても検討が必要であることを指摘した。
医療情報は、医療関係者(コ・メディカル、医師)に対し6種類の解毒剤および関連する15種類の中毒起因化学物質(群)について整備し、日本中毒情報センターのホームページに掲載することにより、災害現場でも活用可能なモバイル型システムとして稼動可能となった。
結論
本研究の結果、現在の医療機関や医薬品卸が保有する解毒剤量では、解毒剤の推奨投与時間内に対応できないことが各シナリオにおいて判明した。今後も、緊急時の解毒剤の大量確保について、国レベルから都道府県、医療機関に至るレベルでの備蓄等のさらなる方策の検討が必要である。
公開日・更新日
公開日
2015-06-01
更新日
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