文献情報
文献番号
201204004A
報告書区分
総括
研究課題名
寄生虫疾患の病態解明及びその予防・治療をめざした研究
課題番号
H24-国医-指定-004
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
平山 謙二(長崎大学熱帯医学研究所 宿主病態解析部門免疫遺伝学分野)
研究分担者(所属機関)
- 北 潔(東京大学大学院医学系研究科 国際保健学生物医化学教室)
- 狩野 繁之(国立国際医療研究センター研究所 熱帯医学・マラリア研究部)
- 坪井 敬文(愛媛大学無細胞生命科学工学研究センター プロテオーム・医薬部門)
- 野崎 智義(国立感染症研究所 寄生動物部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(国際医学協力研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
9,569,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
多くの寄生虫疾患は「見捨てられた病気」として分類され、途上国や研究環境の貧弱な地域で流行し、たくさんの命が奪われ、あるいは脅かされ続けている。アジアに拡がる寄生虫疾患に関する基礎研究を推進し、その制圧、予防、治療に資する革新的な知見を集積することを目的とする。
対象としたのはマラリア、住血吸虫症、フィラリア症、住血原虫症、新興再興感染症、媒介昆虫の6つの疾患で、以下のような3つの観点からアプローチすることで上記目的を達成する。
A)感染伝播メカニズム B)寄生虫の宿主適応 C)ヒト防御免疫および病態生理
対象としたのはマラリア、住血吸虫症、フィラリア症、住血原虫症、新興再興感染症、媒介昆虫の6つの疾患で、以下のような3つの観点からアプローチすることで上記目的を達成する。
A)感染伝播メカニズム B)寄生虫の宿主適応 C)ヒト防御免疫および病態生理
研究方法
上記目的のために、住血吸虫症の流行状況の把握や病害の程度、マラリアの診断技術やワクチン開発、条虫症の血清診断法の開発普及、など常に患者の存在を意識して具体的な成果を挙げられるような研究を行った。
各研究テーマに厳選した各領域の専門家を配し、計画に沿ってアジア各地のフィールド研究や研究者交流を進めた。本研究においてはアジアの流行地域での疫学調査の実施も含まれるので、各分担研究者は所属機関と各国の審査機関においてWHOの基準に従った倫理基準に基づく審査承認を得た上で研究を開始した。動物実験についても同様である。なお、日本においては臨床疫学、ヒトゲノム・遺伝子解析などの倫理指針に基づいて審査されている。
各研究テーマに厳選した各領域の専門家を配し、計画に沿ってアジア各地のフィールド研究や研究者交流を進めた。本研究においてはアジアの流行地域での疫学調査の実施も含まれるので、各分担研究者は所属機関と各国の審査機関においてWHOの基準に従った倫理基準に基づく審査承認を得た上で研究を開始した。動物実験についても同様である。なお、日本においては臨床疫学、ヒトゲノム・遺伝子解析などの倫理指針に基づいて審査されている。
結果と考察
狩野繁之は、長期間の韓国の三日熱マラリア検体のマイクロサテライト多型情報用いてマラリア対策による原虫集団の変動について解析し、2002年ごろを境にPv集団が遺伝的に大きく変化していることが明らかとなった。また年毎のPv集団間の遺伝的分化度を推定した結果、新たなPv株が継続的に韓国に流入していると推察された。再流行から約20年経過してもなお、同国が三日熱マラリアを制圧できずにいる原因だと推察された。
坪井敬文は、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いることにより、熱帯熱マラリア原虫メロゾイト期に特異的な分子のビオチン化マラリアタンパク質アレイを作製した。これをマラリア免疫ヒト血清を用いてスクリーニングし、マラリア防御抗体と特異的に反応するPfMSPDBL1を見出した。さらに、抗PfMSPDBL1抗体が培養熱帯熱マラリア原虫の増殖阻害活性を有することを明らかにした。その結果、それまで解析が全く行われていなかった未知の原虫分子PfMSPDBL1がマラリア赤血球期ワクチン候補となる可能性が示唆された。
金惠淑は、過酸化構造を有する有機合成品、及び天然生薬資源由来の化合物、計31種についてin vitroでの薬効評価を行った。In vitro薬効評価に用いた計31種の化合物は、いずれも 1μM程度で熱帯熱抗マラリア活性を示すか、あるいは、それ以下の濃度で阻害活性を示した。哺乳動物細胞への細胞毒性も解析し、10倍以下の選択毒性を示すことが分った。
伊藤誠は、尿免疫診断法に改良、測定のステップを減らし、抗体あるいは抗原結合プレートを常温で長期間保存できるようにした。LAMP法による媒介蚊中のフィラリア由来DNA検出法を定量化し、フィラリア伝播調査の精度を上げることができた。尿診断法とLAMP法は「住民に優しい」フィラリア症制圧のための疫学調査が可能となった。
片倉賢は、ミャンマー産薬用植物Vites repensの抽出物から抗トリパノソーマ活性をもつ3種の化合物を分離した。今後医薬品開発のパイプラインへの導入を検討する。
丸山治彦は、独自の血清診断システムにより同定した多数の動物由来回虫類感染症の原因虫種について、組換えブタ回虫抗原As16と組換えイヌ回虫抗原rTcAgを組み合わせた抗体検査により、イヌ回虫かブタ回虫の可能性のうち、イヌ回虫症が90%程度であることを示した。
伊藤亮は人獣共通寄生虫疾患である脳嚢虫症とエキノコックス症についての免疫、遺伝子診断法の開発、改善と、病原体である寄生虫の遺伝子多型解析ならびに解析結果に基づく感染地域の特定、リアルタイムで正確な検査結果を出せる迅速免疫診断キット開発研究を前年度からの継続研究として実施し、人体エキノコックス症(多包虫症、単包虫症)、嚢虫症に関する迅速免疫診断キットが完成し、市販されるにいたった。
坪井敬文は、コムギ胚芽無細胞タンパク質合成系を用いることにより、熱帯熱マラリア原虫メロゾイト期に特異的な分子のビオチン化マラリアタンパク質アレイを作製した。これをマラリア免疫ヒト血清を用いてスクリーニングし、マラリア防御抗体と特異的に反応するPfMSPDBL1を見出した。さらに、抗PfMSPDBL1抗体が培養熱帯熱マラリア原虫の増殖阻害活性を有することを明らかにした。その結果、それまで解析が全く行われていなかった未知の原虫分子PfMSPDBL1がマラリア赤血球期ワクチン候補となる可能性が示唆された。
金惠淑は、過酸化構造を有する有機合成品、及び天然生薬資源由来の化合物、計31種についてin vitroでの薬効評価を行った。In vitro薬効評価に用いた計31種の化合物は、いずれも 1μM程度で熱帯熱抗マラリア活性を示すか、あるいは、それ以下の濃度で阻害活性を示した。哺乳動物細胞への細胞毒性も解析し、10倍以下の選択毒性を示すことが分った。
伊藤誠は、尿免疫診断法に改良、測定のステップを減らし、抗体あるいは抗原結合プレートを常温で長期間保存できるようにした。LAMP法による媒介蚊中のフィラリア由来DNA検出法を定量化し、フィラリア伝播調査の精度を上げることができた。尿診断法とLAMP法は「住民に優しい」フィラリア症制圧のための疫学調査が可能となった。
片倉賢は、ミャンマー産薬用植物Vites repensの抽出物から抗トリパノソーマ活性をもつ3種の化合物を分離した。今後医薬品開発のパイプラインへの導入を検討する。
丸山治彦は、独自の血清診断システムにより同定した多数の動物由来回虫類感染症の原因虫種について、組換えブタ回虫抗原As16と組換えイヌ回虫抗原rTcAgを組み合わせた抗体検査により、イヌ回虫かブタ回虫の可能性のうち、イヌ回虫症が90%程度であることを示した。
伊藤亮は人獣共通寄生虫疾患である脳嚢虫症とエキノコックス症についての免疫、遺伝子診断法の開発、改善と、病原体である寄生虫の遺伝子多型解析ならびに解析結果に基づく感染地域の特定、リアルタイムで正確な検査結果を出せる迅速免疫診断キット開発研究を前年度からの継続研究として実施し、人体エキノコックス症(多包虫症、単包虫症)、嚢虫症に関する迅速免疫診断キットが完成し、市販されるにいたった。
結論
アジアに蔓延する広範囲な寄生虫疾患を対象にした分子レベルから公衆衛生レベルまでの活発な研究が行われ、本プログラムが日米における各研究グループの間の情報交換や新しいプロジェクトの提案、若手研究者の育成に重要な役割を果たした。
公開日・更新日
公開日
2013-05-28
更新日
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