ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて

文献情報

文献番号
201203027A
報告書区分
総括
研究課題名
ソーシャル・キャピタルを活用した保健医療福祉ネットワークの構築-震災復興の効果的推進に向けて
課題番号
H24-地球規模・一般(復興)-005
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
濱野 強(島根大学 プロジェクト研究推進機構)
研究分担者(所属機関)
  • 塩飽 邦憲(島根大学 医学部)
  • 並河 徹(島根大学 医学部)
  • 伊藤 勝久(島根大学 生物資源科学部)
  • 片岡 佳美(島根大学 法文学部)
  • 福間 美紀(島根大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成26(2014)年度
研究費
3,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
 東日本大震災は,死者・行方不明者が震災関連死を含め2万人を超え,避難住民が約35万人,建物の全半壊38万戸以上という甚大な被害をもたらした。この数字は,多くの住民が生活の場を失っただけでなく,住民同士が地域で培ってきた関係性(=絆)も喪失したことを意味している。阪神・淡路大震災では,震災後10年間で500名以上の孤独死が報告されており,被災前の絆をいかに復興に結びつけ,活用し,醸成していくかが重要な課題である。
 そこで,本研究では,ソーシャル・キャピタルの効用に関する国際比較とSCを基盤とした復興を支える保健医療福祉ネットワークのモデル化を試みることを目的とした。
研究方法
 上記の目的を達成するために,本研究課題では3年間の研究計画に基づき実施する。具体的には,わが国のソーシャル・キャピタルの特徴とその政策的インプリケーションを整理し,諸外国の知見との国際比較を行うとともに(平成24~25年度),ソーシャル・キャピタルが復興に及ぼす直接的・間接的な社会的効用を整理し(平成25年度),被災地域でのソーシャル・キャピタル評価を通して復興を支援する保健医療福祉ネットワークのモデル化を試みる(平成26年度)。
結果と考察
 本年度は,既存資料を活用した先行研究の収集,及びヒアリング調査を通してソーシャル・キャピタル概念が震災復興においてどのような政策課題の解決に有益であるかという論点整理が図られた。具体的には,健康,医療・福祉,教育,安心・安全といった生活課題解決の一助となる,もしくは政策推進上の重要な概念という認識で一定のコンセンサスが図られていた。一方で,具体的な政策展開に際しては,未だソーシャル・キャピタルを評価するツールの信頼性,妥当性が課題として浮き彫りになったことから,次年度以降の研究課題として位置づけた。合わせて,被災地住民の多くが農山漁村で古くからの地域コミュニティを基盤とした生活を送ってきたことから,震災復興の議論に際してはソーシャル・キャピタルを形成してきた地域の歴史等の丁寧な整理と把握に基づく政策的議論が必要であることが示された。
 また,被災地でのヒアリング調査より,震災被害によって衰退(崩壊)したと考えられるソーシャル・キャピタルが住民の自助努力によって再構築されつつある状況が明らかとなった。以上の知見は,被災地でソーシャル・キャピタルをどのように形成し,住民の自立を促していくかという問いに対しても有益な示唆を提起すると考えられる。したがって,次年度以降は,地域のソーシャル・キャピタル評価を通して保健医療福祉ネットワークのあり方について検討を進めていく必要性が示された。
結論
 本研究成果よりソーシャル・キャピタルは,健康,医療・福祉,教育,安心・安全等の生活課題を解決する上での一助となる,もしくは政策推進上の重要な概念として一定のコンセンサスが図られていることが明らかとなった。したがって,今後は,各地域での震災復興計画を策定する際にソーシャル・キャピタルを中心に据え各種課題を整理することで,世代を問わず住民が安心して生活できる新たな地域設計のあり方をモデル的に示すことが可能となる。本議論は,次年度以降の研究において議論を深めていく予定である。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201203027Z