文献情報
文献番号
201203015A
報告書区分
総括
研究課題名
わが国の生活習慣病対策を世界各国の政策へ適切に反映させるための比較政策的研究
課題番号
H24-地球規模-一般-006
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
曽根 智史(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究分担者(所属機関)
- 冨田 奈穂子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 堀井 聡子(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
- 大澤 絵里(国立保健医療科学院 国際協力研究部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,900,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
わが国が今後生活習慣病対(NCD)策に関する経験を諸外国に活用してもらい、今後この政策分野でのリーダーシップをとるためには、日本と諸外国のNCD政策の詳細な比較分析が必須である。背景要因も考慮した、対象国にとってより受け入れやすい政策パッケージを提示することを最終目的として、今年度は以下の3研究を実施した。
(1)途上国の非感染性疾患対策の現状と文化的背景に関する研究
(2)グローバリゼーション下のたばこ対策の国際比較
(3)幼児・小児・青年期の健康的な栄養摂取の促進に関わる各国の対策
(1)途上国の非感染性疾患対策の現状と文化的背景に関する研究
(2)グローバリゼーション下のたばこ対策の国際比較
(3)幼児・小児・青年期の健康的な栄養摂取の促進に関わる各国の対策
研究方法
(1)途上国の非感染性疾患対策の現状と文化的背景に関する研究
WHOが公開しているNCD関係の資料、WHOが主催したNCD関連のワークショップ資料(2012年マレーシア、中国)、及び各国保健省が公開している政策文書等から、途上国のNCD及びその対策の現状を分析した。また、生活習慣に影響を及ぼす文化的要因についてPubMedなどのデータベースを用いて文献レビューを行い、NCDとの関連から分析した。
(2)グローバリゼーション下のたばこ対策の国際比較
たばこ対策、生活習慣病対策、グローバリゼーションをキーワードにWHOの出版物及び国内外の学術誌を中心とした文献調査ならびに関係者への聞き取り調査を行い、たばこ規制への取り組みが進む欧州諸国の施策について、さらにグローバリゼーションがたばこ対策に及ぼす影響について分析を行った。
(3)幼児・小児・青年期の健康的な栄養摂取の促進に関わる各国の対策
文献及び関係者へのヒアリングによる情報収集・分析を実施した。関係者へのヒアリング調査では、主に各国の小児の栄養摂取についての現状、既に実行している政策、将来に向けての政策展開の情報収集を行った。本年度は、比較的生活習慣病対策が先進しているフィンランド及びスウェーデンで、インタビュー調査を実施した。
WHOが公開しているNCD関係の資料、WHOが主催したNCD関連のワークショップ資料(2012年マレーシア、中国)、及び各国保健省が公開している政策文書等から、途上国のNCD及びその対策の現状を分析した。また、生活習慣に影響を及ぼす文化的要因についてPubMedなどのデータベースを用いて文献レビューを行い、NCDとの関連から分析した。
(2)グローバリゼーション下のたばこ対策の国際比較
たばこ対策、生活習慣病対策、グローバリゼーションをキーワードにWHOの出版物及び国内外の学術誌を中心とした文献調査ならびに関係者への聞き取り調査を行い、たばこ規制への取り組みが進む欧州諸国の施策について、さらにグローバリゼーションがたばこ対策に及ぼす影響について分析を行った。
(3)幼児・小児・青年期の健康的な栄養摂取の促進に関わる各国の対策
文献及び関係者へのヒアリングによる情報収集・分析を実施した。関係者へのヒアリング調査では、主に各国の小児の栄養摂取についての現状、既に実行している政策、将来に向けての政策展開の情報収集を行った。本年度は、比較的生活習慣病対策が先進しているフィンランド及びスウェーデンで、インタビュー調査を実施した。
結果と考察
1.途上国におけるNCD対策が進まない要因の一つにヘルスシステム全体の脆弱性がある。ヘルスシステム強化を通じた包括的な支援が必要である。
2.途上国のポピュレーションアプローチにおいては、グッドプラクティスが蓄積されている日本の経験は有用と考えられる。
3.ハイリスクアプローチに必要な医薬品・医療機器については、日本の技術をもとに官民が連携し支援することも可能である。
4.生活習慣には多様な文化的価値観の影響があり、NCD対策ではそれらに配慮した施策の策定が必要である。
5.今後は、各国の共通の目標となるグローバルな枠組みがますます重要になる。日本にはその策定プロセスに参画すること、交渉能力を強化することが求められる。
6.たばこ対策においてはWPRO加盟国とヨーロッパの取り組み状況に違いが見られた。政策の適用可能性を考える際には、地政学的要因も加味する必要がある。
7.たばこ対策では、禁煙治療に対する医療給付や、禁煙外来、特定健診・特定保健指導において培ってきたわが国の知見が活かせるものと考えられる。
8.グローバリゼーションは貿易や投資と絡んで一国のたばこ政策にしばしば問題をもたらす。さらに、多国籍たばこ企業は、低中所得国への市場の拡大を行っており、これらの動きに対抗し得るような政策パッケージの提示が望まれる。
9.わが国では学校給食制度が発達している反面、子どもに対するフードマーケティング対策については、未だ問題提起されていない段階であり、今後は英国の状況などを参考にしつつ、グローバルな視点から検討すべき課題であると考えられた。
2.途上国のポピュレーションアプローチにおいては、グッドプラクティスが蓄積されている日本の経験は有用と考えられる。
3.ハイリスクアプローチに必要な医薬品・医療機器については、日本の技術をもとに官民が連携し支援することも可能である。
4.生活習慣には多様な文化的価値観の影響があり、NCD対策ではそれらに配慮した施策の策定が必要である。
5.今後は、各国の共通の目標となるグローバルな枠組みがますます重要になる。日本にはその策定プロセスに参画すること、交渉能力を強化することが求められる。
6.たばこ対策においてはWPRO加盟国とヨーロッパの取り組み状況に違いが見られた。政策の適用可能性を考える際には、地政学的要因も加味する必要がある。
7.たばこ対策では、禁煙治療に対する医療給付や、禁煙外来、特定健診・特定保健指導において培ってきたわが国の知見が活かせるものと考えられる。
8.グローバリゼーションは貿易や投資と絡んで一国のたばこ政策にしばしば問題をもたらす。さらに、多国籍たばこ企業は、低中所得国への市場の拡大を行っており、これらの動きに対抗し得るような政策パッケージの提示が望まれる。
9.わが国では学校給食制度が発達している反面、子どもに対するフードマーケティング対策については、未だ問題提起されていない段階であり、今後は英国の状況などを参考にしつつ、グローバルな視点から検討すべき課題であると考えられた。
結論
今年度の研究では、WPRO地域を中心とした途上国のNCD政策の推進状況をまとめ、わが国が貢献することのできる分野とその方法を特定することができた。また、社会文化的な背景に対する検討も行った。個別の分野については、たばこを取り上げ、政策比較を行った。また、子どもに対するフードマーケティング対策について、英国等の状況を比較することができた。
公開日・更新日
公開日
2013-05-31
更新日
-