我が国の経験を踏まえた開発途上国における献血制度の構築と普及に関する研究

文献情報

文献番号
201203008A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の経験を踏まえた開発途上国における献血制度の構築と普及に関する研究
課題番号
H23-地球規模-指定-009
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 泰司(国立大学法人長崎大学 医歯薬学総合研究科附属原爆後障害医療研究施設原爆・ヒバクシャ医療部門)
研究分担者(所属機関)
  • 野崎 慎仁郎(国立大学法人長崎大学 国際連携研究戦略本部・国際関係学)
  • 福吉 潤(株式会社キャンサースキャン)
  • 井上 慎吾(日本赤十字社血液事業部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 地球規模保健課題推進研究(地球規模保健課題推進研究)
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
我が国の献血制度の構築と普及に関する経験とノウハウをパッケージ化し、開発途上国に提示し、以って、開発途上国における献血制度の普及を促進するという国際貢献を図っていくことが本研究の目的である。
研究方法
我が国の献血制度の構築と普及の方策をパッケージ化し、開発途上国に供与できる教材を作成する。開発途上国数カ国を対象に調査を実施し、パッケージ化された教材を活用してパイロットプロジェクトを行うについて最も効率的で効果が期待できる諸国を抽出する。その際、対象国の献血政策・施策担当者へのインタビュー調査も行い、ニーズに応じたパイロップロジェクト及びパッケージの提供を行う。次いでそれらの国々にふさわしい技術協力の形態・内容・実施方法などの技術協力を行う際に必要な事項を整理して戦略を策定し、パイロットプロジェクトを開始する。
結果と考察
(1) 我が国の献血制度のパッケージ化
 我が国で売血から献血への移行を可能にした要素として「血液の安全性に対する社会的関心」、「移行的預血制度の存在」「『二十歳(ハタチ)の献血』などに代表される善行・社会貢献のキャンペーンの要素」を取りまとめてパッケージ化した。

(2)途上国における献血状況の把握とノウハウ共有
 途上国における献血状況の具体的な把握とそれぞれの国が有するノウハウを共有することを目的にカンボジア・プノンペンにおいて国際会議を開催した。その国際会議の中で上述のパッケージを紹介した。また国際会議実施に際してはWHOと密な連携を行った。会議は、2012年12月5-6日にカンボジア・プノンペン市において行われた。

(3) アジア諸国の血液事業の実態
 カンボジア王国との協議を重ね、我が国の経験のパッケージ・モジュールを活用してのパイロットプロジェクトの実施対象に大学での献血活動を取り上げることを決定し、3月初旬に首都プノンペン市にある6つの大学の大学関係者、学生献血のリーダー、保健省、赤十字、外国援助機関の代表を集め、ワークショップを開催し、各大学のこれまでの取り組みと問題点を考察し、次年度の夏及び秋に実施する献血キャンペーンの構想を検討した。我が国の経験を活用しての献血キャンペーン計画を各大学が策定し、その計画に対し、研究班が指導助言を与えつつ、キャンペーンを実施することとした。

(4)考察

献血制度推進に至るまでの道筋は各国の現状に応じた推進策が求められる。預血制度を部分的に実施している国(例:カンボジア)においては、預血制度を足掛かりに献血制度を普及していくこと、学校という関係が密なコミュニティにおいて集団献血を行い献血意識を向上させることが社会に献血を推進していくにあたっては有効であることなど、日本のノウハウを凝縮したパッケージが各国の関係者に多くの示唆を与えたことは、会議への参加者からのフィードバックや各国の関係者とのディスカッションを通して実感された。
 カンボジア王国において、我が国の献血の経験を生かしたキャンペーンを大学を対象として実施することは、カンボジア王国にとっても、時宜を得たものであったといえる。
 カンボジア王国の血液事業の実態は、我が国の昭和30年代の状況と言え、血液製剤の質及び量の確保が喫緊の課題になっており、献血体制のみならず、法整備、体制整備、製剤技術の向上、検査体制の確立、供給システムの確立等、多くの課題が山積している現状にあるが、保健省管下の国立血液銀行を中心にそれらの改善に向けての努力が始まったばかりである。そのような状況下で大学生が自らの意思で献血の普及に立ち上がったことは、昭和30年代の我が国の経験と一致する。
結論
献血制度推進など保健事業におけるるノウハウをパッケージ化し途上国に共有するという一連の目的と活動は大変有意義であり、我が国の国際貢献のあり方として今後大いに拡大が検討されるべきものと考える。
 しかしながら、単にノウハウの提供にとどまらず実際に現地でそのノウハウがどのように活かされ根付いていくのかというところまで研究し検討してくことが必要である。
 本年度研究を通じて、カンボジア保健省、国立血液銀行、カンボジア赤十字、外国援助機関との効果的な協力関係を構築でき、首都プノンペン市内の6大学の大学関係者及び学生リーダーとの密接な連絡体制も確保できた。
次年度には我が国経験とカンボジア独自の文化に基づく効果的な献血キャンペーンをパイロットプロジェクトとして、6大学で実施できるものである。

公開日・更新日

公開日
2013-05-31
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201203008Z