諸外国における医療制度改革と日本への適用可能性に関する研究

文献情報

文献番号
201201035A
報告書区分
総括
研究課題名
諸外国における医療制度改革と日本への適用可能性に関する研究
課題番号
H24-政策-一般-008
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
松本 勝明(北海道大学 大学院公共政策学連携研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 加藤 智章(北海道大学 大学院法学研究科)
  • 片桐 由喜(小樽商科大学 商学部企業法学科)
  • 白瀬 由美香(国立社会保障・人口問題研究所 社会保障応用分析研究部)
  • 松本 由美((社)全日本病院協会 全日病総研)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成24(2012)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
3,960,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
高齢化の進展、医療技術の進歩などに伴い医療費が増大する一方で、経済が低迷し、財政赤字が拡大するなかで、質の高い医療を効率的に提供するとともに、増加する費用を安定的かつ公平に賄える制度が求められている。
このような状況を踏まえ、本研究は、近年、医療制度に関して様々な改革が実施され、多くの議論が積み重ねられているドイツ・フランス・イギリスを対象として、医療制度(医療保障制度及び医療供給体制)が直面する課題及びそれに対応した制度改革について把握・分析し、改革の効果と問題点を明らかにするとともに、日本への適用可能性を探ることを目的とする。
研究方法
本年度においては、まず、日本の現状と問題点を踏まえ、医療制度改革に関する重要な論点となるべき事項を整理した。つぎに、文献研究を基に前記論点に沿った検討を行い、各国の課題及び実施された改革の内容などを把握した。そのうえで、現地の担当行政機関、関係団体、研究機関などを訪問し、ヒアリング調査及び資料収集を行い、文献調査では不足していた情報を把握した。
以上の調査結果を基に検討を行い、前記の論点ごとに、各国が直面する課題及び改革の内容などを把握するとともに、他国と比較した改革の特徴とそれをもたらした要因及び日本にとって重要と考えられる点を考察した。さらに、各国間の横断比較を行った。
結果と考察
本年度における研究の結果、改革の重要な論点(公私関係の見直し、給付範囲の見直し及び選択制の導入、診療報酬の改善、保険者・費用負担者の役割、財政的な公平と安定の確保、新たな治療方法・薬剤の導入、平等な医療アクセスの確保、供給者間の連携確保、質の確保)ごとに、各国が直面する課題、実施された制度改革の基本的考え方、具体的な内容、効果及び問題点を把握し、改革全体の主要目的及び改革の中心的な手段を明らかにした。また、他国と比較した各国改革の特徴及びそれをもたらした要因並びに日本にとって重要と考えられる点を明らかにした。
さらに、三カ国間の横断比較により、個別の論点ごとの各国の課題及び改革の内容等にみられる重要な共通点・相違点と併せて、次のことを明らかにした。改革の主要目的に関しては、全ての国民に質の高い医療を保障することが共通している。これと併せて、ドイツ・フランスでは医療保険財政の安定を図ることが主要目的となっている。一方、改革のための手段に関しては、ドイツでは「当事者間の競争」の促進、フランスでは法律の制定等を通じた国の関与、イギリスではNHS予算の増額に重点が置かれており、国による大きな違いがみられる。
他国と比較した改革の特徴とそれをもたらした要因に関しても、国による大きな違いがみられる。すなわち、ドイツの改革の特徴は、当事者間の競争の促進及び事業主負担の軽減に重点が置かれていることである。その背景には、費用抑制のための公的介入が持続的な効果を挙げなかった経験や、国際競争が激化するなかで賃金コストの増加が国内雇用の減少をもたらすことへの危惧がある。フランスの改革の特徴は、補足的医療組織による普遍的な医療給付の実現と包括的な医療供給のコントロールにある。その背景には、分立した保険制度が不平等を生み出す恐れがあること及び医療アクセスの確保についての政策的重要性が高いことがある。イギリスの改革の特徴は、多くの予算を投入することにより医療サービスの質と量を確保しようとする点にある。この背景には、長期にわたる予算抑制により、患者に対する十分な医療が確保できなかったことがある。
各国の改革は、様々な点において、日本にも重要な示唆を与えるものであるが、特に重要な点として次のものがあげられる。ドイツに関しては、保険料負担の公平性の確保、診療報酬制度の改革、新たな供給システムの導入、新たな薬剤に関する有用性評価の導入があげられる。フランスに関しては、社会保障財政法律というシステム、在宅医療制度、ARSの導入及び供給者の柔軟な連携制度があげられる。イギリスに関しては、医療費の削減と医療の質の確保を両立する方策、医療アクセスの確保、医療供給者の役割分担の見直しがあげられる。
結論
本年度の研究を通じて、共通の論点に沿って、ドイツ、フランス、イギリスの医療制度が直面している課題、実施された改革の内容などを把握することができた。これに基づき、他国と比較した各国の改革の特徴とそれをもたらした要因を明らかにするとともに、日本にとって重要と考えられる点を示した。さらに、三か国間の横断比較を行うことにより、重要な共通点と相違点を明らかにした。これらの結果、平成25年度においてこの三か国の医療制度改革の日本への適用可能性を検討するための重要な基盤を整備することができた。

公開日・更新日

公開日
2013-12-17
更新日
-

研究報告書(PDF)

収支報告書

文献番号
201201035Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
4,740,000円
(2)補助金確定額
4,740,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 713,798円
人件費・謝金 0円
旅費 2,760,689円
その他 485,513円
間接経費 780,000円
合計 4,740,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2014-05-21
更新日
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