文献情報
文献番号
201201014A
報告書区分
総括
研究課題名
我が国の保健医療制度に関する包括的実証研究
課題番号
H22-政策-指定-033
研究年度
平成24(2012)年度
研究代表者(所属機関)
渋谷 健司(東京大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学総合研究(政策科学推進研究)
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
2,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の主な目標は、皆保険制度50周年の節目に当たる平成23年度に計画されているランセット日本特集号の掲載論文を作成するとともに、我が国の保健医療制度や国内外における保健政策に向けてエビデンスに基づいた提言を行うことである。具体的には、グローバルヘルスや米国の保健制度改革において議論の中心である「皆保険制度(universal coverage)」を念頭に6つのテーマにおける実証分析を行い(①生活習慣病疾病負担と保健介入有効カバー率、②わが国の皆保険度の歴史的考察と現状分析、③医療の質と費用、④高齢者医療と介護の分析、⑤国際保健戦略、⑥我が国の保健医療制度の総括)、国内外向けの戦略提言をまとめることである。
研究方法
6つのテーマごとに研究協力者を定め、包括的な実証分析のために、関連官庁統計調査の個票データの目的外使用を行った。これらデータをもとに2年度目(平成23年度)には、当初の予定通りに、6つの学術論文を英国「ランセット誌」日本特集号において発表した。最終年度である平成24年度は、これまでの学際的な研究活動を集大成し、個々の研究成果を個別に専門誌へ投稿を進めるともに、それぞれの研究領域における課題や分析を更に進展させ、我が国の保健医療改革への提言をまとめ、国内外へ向けた政策提言並びに広く市民社会へ情報の発信を行った。
結果と考察
各研究の詳細は分担研究報告を参照のこと。ランセット日本特集号で行った我が国の保健アウトカムに関する研究を発展させ、世界の疾病負担研究(GBD 2010)の枠組みを用いて、死亡数のみではなくDALYsを用いて我が国の疾病負担の初期推計を行った。また、特集号でも繰り返し述べられた震災関係の研究として、原発事故後高齢者の避難による死亡リスクの解析を行い、避難に伴うリスクや保健医療体制の事前の連携の必要性を示した。さらに、税と社会保障改革に関する文脈から我が国の保健医療に関する総括的な提言を、幅広い読者を想定して和文にて発表した。また、ランセット日本特集号における保健医療の質に関する研究を更に進展させ、特定健診導入の影響、介護保険導入以降における居宅介護サービス、生活援助サービスが軽度の要介護高齢女性の自立状況に与える影響、分娩取扱い施設における医師の適正規模についての研究、年齢による医療制度が受診率および健康に与える影響、レセプト電子化の受診率や人々の健康に与える影響に関する分析を行った。ランセット日本特集号における高齢化や介護保険に関する研究を進め、介護サービスの利用と家族介護、糖尿病患者の喫煙行動とストレスの実態、および喫煙行動に関連する日常生活上のストレッサーの検討、介護保険サービス利用点数の生活保護者と一般利用者の差およびその経年変化、高齢者の精神健康と社会経済状況、疾患、ストレッサーとの関連、高齢者における日常生活の制限と心身健康・社会経済的要因との関連に関する研究を実施した。
結論
本研究班には3つの大きな特色がある。第一に、世界的権威のあるランセット誌と連携することで、きわめて高いインパクトを持つ成果を上げたことである。次に、既存のデータの2次的利用の積極的推進による実証分析を主に行ったことである。特に、多くのステークホルダーが関係し、ともすると感情的議論が横行する中で、公的2次データを用いた質の高い研究は、保健医療改革議論においては欠くべからざるものである。 最後に、論文を作成する過程において、保健医療研究者と政策決定者の連携により我が国の保健医療のこれまでの成果を検証し、現在の課題と将来に向けたビジョンと戦略を包括的かつ実証的に議論し、我が国の保健医療制度や国内外における保健政策への提言を行ったことである。多くの政策・疫学研究は、エビデンスを提示して終わりである。しかし、エビデンスは使われて初めて価値がある。本研究では、研究成果はすべてオープンにし、情報を積極的に広く市民社会へ発信した。
研究班の成果は「健康日本21(第二次)」の基礎資料として用いられ、さらには、各種メディアや講演を通して、国内医療改革の議論の喚起を行うことができた。また、国際的には、我が国からの知見を世界に発信し、各種論文で引用をされ、グローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献の強化を行うことができた。
研究班の成果は「健康日本21(第二次)」の基礎資料として用いられ、さらには、各種メディアや講演を通して、国内医療改革の議論の喚起を行うことができた。また、国際的には、我が国からの知見を世界に発信し、各種論文で引用をされ、グローバルヘルスにおけるプレゼンスと知的貢献の強化を行うことができた。
公開日・更新日
公開日
2014-03-28
更新日
-