前向きコーホート研究に基づく先天異常，免疫アレルギーおよび小児発達障害のリスク評価と環境化学物質に対する遺伝的感受性の解明

文献情報

文献番号

201133021A

報告書区分

総括

研究課題名

前向きコーホート研究に基づく先天異常，免疫アレルギーおよび小児発達障害のリスク評価と環境化学物質に対する遺伝的感受性の解明

課題番号

H23-化学・一般-003

研究年度

平成23(2011)年度

研究代表者(所属機関)

岸　玲子(北海道大学　環境健康科学研究教育センター)

研究分担者(所属機関)

水上　尚典(北海道大学　医学研究科)
遠藤　俊明(札幌医科大学　医学部)
千石　一雄(旭川医科大学　医学部)
野々村　克也(北海道大学　医学研究科)
有賀　正(北海道大学　医学研究科)
梶原　淳睦(福岡県保健環境研究所　保健科学部)
松村　徹(いであ株式会社　環境創造研究所)
石塚　真由美(北海道大学　獣医学研究科)
安住　薫(北海道大学　環境健康科学研究教育センター)
吉岡　英治(旭川医科大学　健康科学講座)
佐々木　成子(北海道大学　医学研究科)

研究区分

厚生労働科学研究費補助金健康安全確保総合研究化学物質リスク研究

研究開始年度

平成23(2011)年度

研究終了予定年度

平成25(2013)年度

研究費

60,000,000円

研究者交替、所属機関変更

-

研究報告書（概要版）

研究目的

妊婦を対象に，前向きコーホート研究で環境化学物質曝露が胎児発育や先天異常，甲状腺機能，アレルギー，感染症，発達障害，思春期発来等に及ぼす影響を総合的にリスク評価し，化学物質による健康障害の予防策を構築する。

研究方法

産科施設の協力により二つの前向きコーホートを設定し，医師が記載した新生児個票から55種マーカー奇形や，出生体重などを調べた。本年度は血中OH-PCB，ビスフェノールA(BPA)の微量分析方法を確立した。血中PCBs，ダイオキシン類，PFCs，および毛髪水銀濃度の相互関係及び曝露レベルに影響する生活要因を検討した。先天異常の交絡要因となる葉酸およびコチニンを全員について測定した。

結果と考察

(1)平成23年10月末までに新生児個票が提出された18,383名のうち，先天異常の児総数は354名，マーカー奇形248名，その他の異常136名で，先天異常児の出産頻度は1.93%，在胎22週以降の出産18,119名あたり，先天異常児は307名，有病率は1.69%であった。(2)OH-PCBを好感度検出できるよう改良した。同位体希釈LC/MS/MS法を採用し，前処理方法と組み合わせた血中微量BPA分析方法を確立した。血液70検体のBPA濃度は平均0.058ng/mLであった。(3) PCBs・ダイオキシン類，水銀などの環境化学物質濃度は分娩年経過と供に低下し，環境中の曝露レベルの低下を反映することが示唆された。(4) 標準血清と母体血中のPFCs濃度14種を測定し，測定法の精確性を確認した。(5)ダイオキシン類だけでなく有機フッ素化合物も喫煙により代謝亢進が起こる可能性が示唆された。(6)妊娠中の飲酒によりPCBs・ダイオキシン類濃度が上昇し，飲酒による肝代謝への影響が考えられた。(7)ダイオキシン類濃度は北海道在住2年以上の妊婦で低く，母体血中濃度は過去数年の居住地域での曝露状況を反映すると考えられた。

結論

本研究で微量血液によるOH-PCBを含む一斉分析法を確立できたので，マーカー奇形や甲状腺機能，発達との関連を今後明らかにする。また血中BPA分析方法を確立できたので神経発達や思春期発来に及ぼす影響を検討できる。PFCsと乳幼児期の体格，アレルギー感染症との関連について解析を行う予定である。