化学物質の経気道暴露による毒性評価の迅速化、定量化、高精度化に関する研究-シックハウス症候群を考慮した低濃度暴露における肺病変の確認、及び、中枢神経影響を包含する新評価体系の開発-

文献情報

文献番号
201133019A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の経気道暴露による毒性評価の迅速化、定量化、高精度化に関する研究-シックハウス症候群を考慮した低濃度暴露における肺病変の確認、及び、中枢神経影響を包含する新評価体系の開発-
課題番号
H23-化学・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 慶長 直人(国立国際医療研究センター研究所 呼吸器疾患研究部)
  • 菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 )
  • 大西 誠(中央労働災害防止協会 日本バイオアッセイ研究センター 試験管理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
29,878,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、第一に、極低濃度下での比較的長期暴露(7ー28日間)後の肺を電子顕微鏡等により高精度に解析し、暴露による有害性を実証し、先行研究の遺伝子発現変動データの予見性を確認することにある。第二に、シックハウス症候群等において通常の検査からは病因が特定されない「不定愁訴」の分子実態を把握することにある。この為に、肺・肝に加え中枢神経のトキシコゲノミクス解析を実施し、惹起される反応を抽出し、超微形態解析等の標的の絞り込みを行う。
研究方法
研究班は、化学物質の極低濃度での経気道暴露、得られたマウス肺・肝・脳サンプルの網羅的遺伝子発現変動解析、得られたマウス肺サンプルの電子顕微鏡を用いる高精度な解析、ヒト気道上皮細胞株を用いたin vitro解析系、以上4部から成り、人への外挿性を考慮した高精度な解析をおこなう。
結果と考察
今年度はホルムアルデヒドについて室内濃度指針値(0.08ppm)を考慮した極低濃度にて、6時間/日×7日間暴露(労働暴露モデル)及び22時間/日×7日間暴露(生活暴露モデル)にて経気道暴露(4用量、16群構成、各群3匹)を実施し、マウス肺・肝・脳mRNAについてPercellome法による網羅的遺伝子発現変動解析を行った。22時間暴露時では海馬における神経活動に関わる遺伝子の発現抑制が認められたが、6時間暴露時では顕著に認められない事を見いだした。また、ホルムアルデヒド22時間/日×28日間暴露の際の肺について、超微細形態学的手法により網羅的に検索中である。加えて、ヒト気道上皮細胞株を用いるin vitro解析系において、外来微生物由来の刺激であるpolyI:C存在下でのホルムアルデヒド添加によるサイトカイン遺伝子の発現増強にJNKのリン酸化が関与する事を示唆する結果を得た。
結論
シックハウスレベルの極低用量の化学物質の経気道暴露に於いても、脳サンプルを用いた網羅的遺伝子発現解析手法により、中枢影響を予測することが可能である事が明らかとなった。特に、海馬での神経活動の抑制が示唆された事は「不定愁訴」の分子実態の一端を明らかにしたものと考えられた。加えて、ヒト気道上皮細胞株を用いるin vitro解析系の実用性が示され、人への外挿性の向上を計ることが可能となった。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133019Z