化学物質の胎内ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法に関する研究

文献情報

文献番号
201133010A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の胎内ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
成田 正明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田代 朋子(青山学院大学 理工学部)
  • 成田 奈緒子(文教大学 教育学部)
  • 横山 和仁(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
27,180,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は「化学物質の胎内ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法」に関し、妊娠中の化学物質ばく露が児に情動・認知行動異常を引き起こすメカニズム解明のための動物実験、ばく露の有無を知るためのバイオマーカー検索のための網羅的発現遺伝子検索、情動・認知行動異常を臨床的に把握する手法解明、生体(歯や毛髪)に蓄積する有害物質と情動・認知行動異常との関連を調べることを目的とする、安全な国民生活の向上を目指した基礎医学・臨床医学・社会医学にまたがる融合研究である。
研究方法
①ヒトでの化学物質の事象(サリドマイドによる自閉症)を動物で再現したモデル動物をはじめその他(予防接種中に防腐剤として含まれるチメロサール(有機水銀))の化学物質ばく露動物の解析、②化学物質ばく露の有無の診断のためのバイオマーカー確定(発現遺伝子網羅的解析)、③ヒトでの生後の情動・認知行動異常の評価のための臨床的診断法の確立(近赤外線酸素モニターを用いて)、④疫学的検討、即ち有害化学物質と情動・認知行動の異常との関連、を研究協力者から検体収集、調査質問票回収。当該事業年度(2年目)に、モデル動物解析からの生物学的データ、発現遺伝子の網羅的解析を行い、並行してヒトからの臨床データ、疫学データ(毛髪・乳歯・質問紙)を蓄積する。
結果と考察
化学物質の胎内ばく露による生後の情動・認知行動の異常について、妊娠動物を用いたばく露モデル実験で様々な機能異常、形態異常が見つかった。また予防接種中に防腐剤として含まれるチメロサール(有機水銀)の胎内ばく露で、胎仔の神経系の初期発生に異常をきたす所見を得るに至った。動物実験でのこの異常はヒトでどう表現型として表れるか、近赤外線酸素モニターを用いた非侵襲的脳機能評価法で、情動・認知行動の異常を定量的にとらえてきている。今後標準化したい。疫学調査では、発達期の研究協力者から、歯牙・毛髪の提供を依頼、有害物質の測定を行っている。発達に関する質問紙と突き合わせ、順次分析中である。これまでのところ、妊娠中に母親が薬剤服用があると発達に問題がある場合が多かった。また乳歯や毛髪分析では、発達に問題がある児に、特定の微量元素が低値である結果が得られた。
結論
胎生期の化学物質のばく露は、生後の情動・認知行動に深刻な影響を及ぼすと言える。化学物質ばく露モデル動物の解析では、新たに、胎生期有機水銀ばく露ラットでセロトニン初期発生異常を認めており、妊婦の魚介類接種指針への理論的裏付けとなる。全国の疫学調査で得られた試料・質問紙のデータを解析し、環境有害化学物質との関連を解析した。

公開日・更新日

公開日
2012-04-25
更新日
-

文献情報

文献番号
201133010B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質の胎内ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
成田 正明(三重大学 大学院医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
  • 田代 朋子(青山学院大学 理工学部)
  • 成田 奈緒子(文教大学 教育学部)
  • 横山 和仁(順天堂大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は妊娠中の化学物質ばく露が児に情動・認知行動異常を引き起こすメカニズム解明のための動物実験、ばく露の有無を知るためのバイオマーカー検索のための網羅的発現遺伝子検索、情動・認知行動異常を臨床的に把握する手法解明、生体(歯や毛髪)に蓄積する有害物質と情動・認知行動異常との関連を調べることを目的とする、安全な国民生活の向上を目指した基礎医学・臨床医学・社会医学にまたがる融合研究である。
研究方法
1、ヒトでの化学物質の事象(サリドマイドによる自閉症)を動物で再現したモデル動物をはじめその他(予防接種中に防腐剤として含まれるチメロサール(有機水銀))の化学物質ばく露動物の解析、2、化学物質ばく露の有無の診断のためのバイオマーカー確定(発現遺伝子網羅的解析)、3、ヒトでの生後の情動・認知行動異常の評価のための臨床的診断法の確立(近赤外線酸素モニターを用いて)、4、疫学的検討、即ち有害化学物質と情動・認知行動の異常との関連、を研究協力者から検体収集、調査質問票回収。モデル動物解析からの生物学的データ、発現遺伝子の網羅的解析を行い、並行してヒトからの臨床データ、疫学データ(毛髪・乳歯・質問紙)を蓄積する。
結果と考察
化学物質の胎内ばく露による生後の情動・認知行動の異常について、妊娠動物を用いたばく露モデル実験で様々な機能異常、形態異常が見つかった。また予防接種中に防腐剤として含まれるチメロサール(有機水銀)の胎内ばく露で、胎仔の神経系の初期発生に異常をきたす所見を得るに至った。ヒトの情動・認知行動の異常を近赤外線酸素モニターを用い定量的に捉えることを可能にした。疫学調査では、発達期の研究協力者から、歯牙・毛髪の提供を依頼、有害物質の測定を行っている。発達に関する質問紙と突き合わせ、分析を行った。妊娠中に母親が薬剤服用があると発達に問題があるといえる。また乳歯や毛髪分析では、発達に問題がある児に、特定の微量元素が低値であった。
結論
胎生期の化学物質のばく露は、生後の情動・認知行動に深刻な影響を及ぼすと言える。化学物質ばく露モデル動物の解析では、新たに、胎生期有機水銀ばく露ラットでセロトニン初期発生異常を認めており、今後データの蓄積が求められる。3年間で上記の基礎研究・臨床研究をさらに推進していくと共に、全国の疫学調査で得られた試料・質問紙のデータを解析し、環境有害化学物質との関連を解析した。

公開日・更新日

公開日
2012-04-25
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201133010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
胎生期の化学物質のばく露は、生後の情動・認知行動に深刻な影響を及ぼすと言える。化学物質ばく露モデル動物の解析では、新たに、胎生期有機水銀ばく露ラットでセロトニン初期発生異常を認めており、今後データの蓄積が求められる。ばく露動物実験からの知見、ばく露バイオマーカー確定、情動・認知行動異常を客観的に臨床評価する方法を確立したと言える。全国の疫学調査で得られた試料・質問紙のデータを解析し、環境有害化学物質との関連を明らかにしていく予定である。
臨床的観点からの成果
妊婦の魚介類摂取(有機水銀)の目安(厚生労働省の指針)についての科学的根拠付けを行い得た。有機水銀(チメロサール)は予防接種中の防腐剤として現在も用いられており、この点からも本研究の臨床的意義は大きい。また、本研究で情動・認知行動異常を客観的に評価する方法を近赤外線酸素モニター(NIRS)を用い開発した。これは前頭葉の機能の違いを検知するもので、診断ツールとして有用である。疫学的には全国に呼び掛けて、乳歯・毛髪を提供して頂き、鉛・カドミュウムなどの微量元素濃度を測定し行動との関連を調べている。
ガイドライン等の開発
環境健康学研究会(みえメディカル研究会主催)の講演会講師に招聘された(2010年2月19日)。
その他行政的観点からの成果
公明党第6回放射線による健康への影響に関するプロジェクトチーム、化学物質問題対策プロジェクトチーム公明党衆議院参議院両議員会議(加藤修一参議院議員座長)での講演講師に招聘された(2011年7月1日於参議院議員会館)。
その他のインパクト
1、NHKテレビ視点論点「妊娠中の化学物質と子どもの発達」(2010年9月21日放映)、視点論点「妊娠中の環境放射線と子どもの発達」(2011年6月放映)。2、新聞掲載:「妊婦の有機水銀摂取は胎児の感情神経に影響」2011年9月17日中日新聞、「発達障害の原因を探る」2010年6月15日。3、有機水銀の英文論文は、最重要論文に指定され、論評とともに巻頭掲載された。4、第82回日本衛生学会「小児の毛髪中微量元素濃度と情動・認知行動への影響」が最優秀演題賞に採択された。

発表件数

原著論文(和文)
7件
原著論文(英文等)
4件
このうち妊娠動物の有機水銀に関する英文論文(Neuroscience Letters)は、最重要論文Plenary Articleに指定され、エディターによる論評とともに巻頭に掲載された。
その他論文(和文)
10件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
42件
・第82回日本衛生学会「小児の毛髪中微量元素濃度と情動・認知行動への影響」が最優秀演題賞に採択された
学会発表(国際学会等)
14件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
化学物質問題対策プロジェクトチーム衆議院参議院両議員会議(加藤修一参議院議員座長)での講演(2011年7月1日於参議院議員会館)
その他成果(普及・啓発活動)
3件
・NHKテレビ“視点論点”「妊娠中の化学物質と子どもの発達」(2010年9月21日放映) ほか「その他のインパクト」の項参照

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Michiru Ida-Eto, Akiko Oyabu, Takeshi Ohkawara, et al.
Embryonic exposure to thimerosal, an organomercury compound, causes abnormal early development of serotonergic neurons
Neuroscience Letters , 505 , 61-64  (2011)
原著論文2
Naoko Narita,Akiyuki Saotome, Hiroki Higuchi, et al.
Impaired prefrontal cortex response by switching stimuli in autism spectrum disorders
Journal of Pediatric Neurology  (2012)
原著論文3
成田奈緒子
有害化学物質の地域分布と情動・認知行動異常発症との関連
文教大学教育研究ジャーナル , 1 , 77-78  (2009)
原著論文4
成田正明
化学物質の胎生期ばく露による情動・認知行動に対する影響の評価方法に関する研究
食品衛生研究 , 60 , 7-13  (2010)
原著論文5
成田正明
胎生期の化学物質ばく露による情動・認知行動への影響解明のための動物モデル
認知神経科学 , 13 (1) , 51-55  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133010Z