化学物質リスク評価における(定量的)構造活性相関((Q)SAR)およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究

文献情報

文献番号
201133002A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質リスク評価における(定量的)構造活性相関((Q)SAR)およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 真((財)食品農医薬品安全性評価センター )
  • 江馬 眞((独)産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 小野 敦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 吉田 緑(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部 )
  • 森田 健(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
33,310,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
安全性評価未実施の化学物質については早急な評価の実施が望まれるが、効率性や動物愛護の観点から、カテゴリーアプローチ(CA)や(定量的)構造活性相関((Q)SAR)の活用が期待されている。本研究では((Q)SAR)やCAの化学物質行政での実用化に向け、これら手法の改良や適用範囲の拡充、利用法・有用性の検証を行い、適用のためのガイダンス作成を目的とする。
研究方法
染色体異常試験結果の妥当性を検証し、最適とされる最高濃度を求めた。In vivo遺伝毒性予測のための分類ワークフローを開発し、既存試験データを適用し、ワークフローの調整を行った。反復投与毒性における標的臓器毒性のin silico評価を副腎、精巣、および、心臓毒性に対する拡張し、アラートの構築を行った。腎毒性について、定性的、もしくは定量評価モデルを構築して予測精度及び実用性について検討を行った。新規化学物質のラットでの短期反復投与毒性試験の病理組織学的所見を抜粋し、シソーラスを構築した。
結果と考察
染色体異常試験:国内外の既存化学物質データベースから染色体異常試験結果を再調査した結果、最高用量を2 mMあるいは1 mg/mLのいずれか高い方とした場合、感度、特異性とも最も効果的な検出力を示した。In vivo遺伝毒性:In vitro、in vivo肝臓、 in vivo骨髄の3レベルの試験データが存在する化学物質162について解析を行いin vitro-in vivo、肝臓―骨髄ギャップの生物学的特徴を明らかにした。In vitroでの代謝活性化、in vivoでのバイオアベラビリティを予測モデルに組み込むことが重要である。反復投与毒性予測:副腎、精巣、および、心臓毒性に対する11種のRapid Prototypeアラートを構築した。腎毒性評価の定性モデルについては、外部検証における特異度75%を得ることに成功した。Cramerの毒性分類モデルの拡張においては、構造ルールの拡張し、分離精度向上に成功した。反復投与毒性試験病理シソーラス:約1463の病理組織学的所見は13の臓器系、714のシソーラス、374の主な病理用語に細分類出来た。
結論
ヒト健康影響評価におけるin silico手法の実用化には、試験結果の再評価により信頼性が確認された情報をもとにしたモデル構築を進めることが重要である。((Q)SAR)やCAの利用に関しては、各国ともまだ検討段階であり、特にin vivo毒性の予測については、アプローチの仕方も含め議論の余地のあるところであり、今後とも国際協調のもとでの研究推進、情報交換が必要である。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201133002B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質リスク評価における(定量的)構造活性相関((Q)SAR)およびカテゴリーアプローチの実用化に関する研究
課題番号
H21-化学・一般-002
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
本間 正充(国立医薬品食品衛生研究所 変異遺伝部)
研究分担者(所属機関)
  • 林 真((財)食品農医薬品安全性評価センター )
  • 江馬 眞((独)産業技術総合研究所 安全科学研究部門)
  • 広瀬 明彦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 小野  敦(国立医薬品食品衛生研究所 総合評価研究室)
  • 吉田  緑(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 宮島 敦子(国立医薬品食品衛生研究所 医療機器部)
  • 森田  健(国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
平成21年の化審法改正にあたり既存化学物質も含めた全ての化学物質の包括的管理制度が導入され、定量的構造活性相関(QSAR)やカテゴリーアプローチ(CA)の活用の促進が高まっている。本研究では、これら手法の実用化に向けて、既存のQSARモデルの改良や予測適用範囲の拡充、CAの安全性評価研究を行い、研究成果をもとに、これらの手法のガイダンス案を提案することを目的とする。
研究方法
染色体異常試験結果の妥当性を検証し、最適とされる最高濃度を求め、改訂されたデータ基にQSARモデルの予測率を再計算した。組織代謝シミュレータ(TIMES)により小核試験結果の予測を行い、予測率向上のための分類ワークフローを開発した。化審法28日間試験成績と化学物質構造情報をもとに、3種類のQSARモデルを用いて肝毒性・腎毒性について毒性アラートもしくは予測モデルを構築して予測精度を検証した。LOAEL値をもとに、構造記述子と特徴部分構造を組み合わせによる判別分析モデルを構築して予測精度及び実用性について検討を行った。新規化学物質のラットでの短期反復投与毒性試験の病理組織学的所見を抜粋し、シソーラスを構築した。
結果と考察
染色体異常試験の最高濃度を1 mMに低減化することにより、QSARの予測率が向上した。また、染色体異常予測に対する新規アラート構築に成功した。TIMESは代謝物のin vivo染色体異常誘発性まで検出可能であるが、偽陰性率が高く、さらなる改良が必要である。遺伝毒性評価のためのワークフローによるギャップフィリングが改良に有効であろう。反復投与毒性においては肝臓、腎臓、脾臓、骨髄、および甲状腺毒性に対するアラートを構築した。肝毒性・腎毒性では最大でそれぞれ70%、93%以上の一致率を示すモデルが得られた。病理学的変化の種類やメカニズム、化学構造分類ごとにモデル構築することでより精度の高い予測が可能になると考察されるが、その一方で分子の物理化学的特性値である構造記述子と毒性化合物に特異的な部分構造の評価を組み合わせることで、ある程度の予測が可能であることが示された。毒性の分類に関しては、病理組織学的所見シソーラス構築が重要である。13の臓器系、714のシソーラス、374の主な病理用語に細分類出来た。
結論
In silico手法の実用化には、試験結果の再評価により信頼性が確認された情報をもとにしたモデル構築を進めることが重要である。また、試験結果からのみでは予測が難しい毒性メカニズムや生体内代謝情報について、文献情報やAOPなども含めて検討することで、信頼性の高い評価スキームの構築可能であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201133002C

成果

専門的・学術的観点からの成果
In vitro染色体異常試験については、上限濃度を低減化することにより、偽陽性が低下し、新たなアラートの抽出に成功した。これは染色体異常の予測精度の向上に貢献できる。さらにこの結果を体内動態および代謝予測モデルを組み合わせin vivo遺伝毒性の予測手法の構築を行い、実際の化学物質リスク評価への適用が期待できる。反復毒性については、各種臓器毒性について構築した毒性アラートについて、毒性メカニズムに立脚した検討を加えるとともに定量的な予測手法を提供する。
臨床的観点からの成果
なし
ガイドライン等の開発
2010年11月から医薬品ICH会議では医薬品の遺伝毒性不純物に関するガイドラインの策定作業が開始された。医薬品不純物の遺伝毒性評価はエームス試験によって行うが、QSARや、カテゴリーアプローチ等のデータベースサーチの利用もガイドラインに取り入れる。現在、その手法やデータベースの標準化等が議論されているが、本研究班の成果を反映させる。本ガイドラインはQSARの利用を示した最初の国際ガイドラインであり2013年の発行を目指す。
その他行政的観点からの成果
2012年2月23日、3月19日、3月26日に三省合同の「化審法リスク評価におけるQSAR等活用検討会」が開催された。化審法におけるin silico活用について、基本方針、活用場面、in silicoツールの選定に関する基本方針と選定条件、今後の課題等について論議し、今後のガイドライン化に貢献した。
その他のインパクト
なし

発表件数

原著論文(和文)
3件
H21-H23年度成果
原著論文(英文等)
30件
H21-H23年度成果
その他論文(和文)
9件
H21-H23年度成果
その他論文(英文等)
14件
H21-H23年度成果
学会発表(国内学会)
12件
H21-H23年度成果
学会発表(国際学会等)
19件
H21-H23年度成果
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsumoto M, Harada T, Shibuya T, 他
A chemical category approach of genotoxicity studies for branched alkylphenols.
Bull, Natl. Inst. Health Sci., , 129 , 68-75  (2011)
原著論文2
T. Morita, M. Honma, K. Morikawa
Effect of reducing the top concentration used in the in vitro chromosomal aberration test in CHL cells on the evaluation of industrial chemical genotoxicity.
Mutation Research , 741 , 32-59  (2011)
原著論文3
Takeshi Morita, Kaoru Morikawa
Expert Review for GHS Classification of Chemicals on Health Effects.
Industrial Health , 49 , 559-565  (2011)
原著論文4
T. Morita, J. T. MacGregor, M. Hayashi
Micronucleus assays in rodent tissues other than bone marrow.
Mutagenesis , 26 , 223-230  (2011)
原著論文5
Yoshida M, Takahashi M, Inoue K, 他
Lack of chronic toxicity and carcinogenicity of dietary administrated catechin mixture in Wistar Hannover GALAS rats.
J Toxicol Sci. , 36 , 297-311  (2011)
原著論文6
Ono, A., Takahashi, M., Hirose, A.他
Validation of the (Q)SAR combination approach for mutagenicity prediction of flavor chemicals.
Food Chem Toxicol , 50 , 1538-1546  (2012)
原著論文7
Hirata-Koizumi, M., Fujii, S., Furukawa 他
Two-generation reproductive toxicity study of aluminium sulfate in rats.
Reprod Toxicol , 31 , 219-230  (2011)
原著論文8
Hirata-Koizumi, M., Fujii, S., Ono, A.他
Repeated dose and reproductive/developmental toxicity of perfluorooctadecanoic acid in rats.
J Toxicol Sci , 37 , 63-79  (2012)
原著論文9
本間正充
構造活性相関による遺伝毒性の予測
国立医薬品食品研究所報告 , 128 , 39-43  (2010)
原著論文10
小野 敦
in vivo反復投与毒性の構造活性相関による予測評価の展望
国立医薬品食品研究所報告 , 128 , 44-49  (2010)
原著論文11
広瀬明彦
レギュラトリーサイエンスにおけるコンピュータを用いた構造活性予測研究の現状と展望
国立医薬品食品研究所報告 , 128 , 27-28  (2010)
原著論文12
Ema M, Kobayashi N, Naya M,他
Reproductive and developmental toxicity studies of manufactured nanomaterials
Reprod Toxicol , 30 (3) , 343-352  (2010)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
2018-05-28

収支報告書

文献番号
201133002Z