化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発-

文献情報

文献番号
201133001A
報告書区分
総括
研究課題名
化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発-
課題番号
H21-化学・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 北野 宏明(特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
  • 相崎 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
57,460,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分子メカニズムに依拠した毒性予測評価システムの実用化の最終段階として、先行研究にて構築済みの100以上の化合物についての約280実験の延べ3.5億遺伝子発現情報からなるトキシコゲノミクスデータベース(PercellomeDB)、及びそこから毒性学的意味付けを網羅的に抽出するプログラム群を基盤に、毒性と直結したネットワークの動的な反応を結論として導き出す遺伝子発現ネットワーク描出技術の開発と、毒性予測評価システムの実用化を目指す。
研究方法
遺伝子発現データは、国立医薬品食品衛生研究所・動物実験の適正な実施に関する規程に則り、尚且つ照明時間等を厳密に管理して行った動物実験で組織サンプルを採取し、Percellome法(BMC Genomics. 7, 64, 2006 / 特許441507 / 細胞1個当たりのmRNAコピー数として発現値を得る方法)を適用したマイクロアレイ解析で生成した。研究に用いる主なアルゴリズム及びプログラムは独自に開発した。
結果と考察
局所のネットワーク描出を、野生型及びエストロゲン受容体(ERα)ホモ欠失マウスに、2種類のERαリガンドを投与した際のデータの差分解析から、また自律的なネットワーク描出を、成熟期マウスの肝の概日変動性について新たにフーリエ変換技術を導入した解析から行い、新規知見を得た。インフォマティクス開発では、データベースから網羅的に、有意な発現変動を示す遺伝子の自動抽出アルゴリズムRSortと、これを元に実験間の共通変動遺伝子を高速抽出するプログラムPercellomeExplorer、初期反応ネットワークを描出する、高速クラスタリング技術AGCTとオルソローグ制御領域の分析ソフトウェアSHOEを開発・改良した。これらは、既存化学物質毒性機序解析に加え新規化学物質の毒性機序解析に有効である。
結論
PercellomeDBを構成する全ての化学物質の総当たり評価や、クラスタリングによるネットワーク分析と抽出が、用量依存性と,経時的変化の両方を考慮して厳密に実施できるようになった。これらの技術を用い、遺伝子発現ネットワークの新規知見を得て、毒性評価への適応を行いつつ、研究計画通りにシステムの実用化作業を進めた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201133001B
報告書区分
総合
研究課題名
化学物質の有害性評価手法の迅速化、高度化に関する研究-網羅的定量的大規模トキシコゲノミクスデータベースの維持・拡充と毒性予測評価システムの実用化の為のインフォマティクス技術開発-
課題番号
H21-化学・一般-001
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
菅野 純(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部)
研究分担者(所属機関)
  • 北野 宏明(特定非営利活動法人システム・バイオロジー研究機構)
  • 北嶋 聡(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 )
  • 相﨑 健一(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター 毒性部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 化学物質リスク研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
分子メカニズムに依拠した毒性予測評価システムの実用化の最終段階として、先行研究にて構築済みの100以上の化合物についての約280実験の延べ3.5億遺伝子発現情報からなるトキシコゲノミクスデータベース(PercellomeDB)、及びそこから毒性学的意味付けを網羅的に抽出するプログラム群を基盤に、毒性と直結したネットワークの動的な反応を結論として導き出す遺伝子発現ネットワーク描出技術の開発と、毒性予測評価システムの実用化を目指す。
研究方法
トランスクリプトーム(T.ome)データは、国立医薬品食品衛生研究所・動物実験の適正な実施に関する規程に則り、尚且つ照明時間等を厳密に管理して行った動物実験で組織サンプルを採取し、Percellome法(BMC Genomics. 7, 64, 2006 / 特許441507 / 細胞1個当たりのmRNAコピー数として発現値を得る方法)を適用したマイクロアレイ解析で生成した。研究に用いる主なアルゴリズム及びプログラムは独自に開発した。
結果と考察
局所的なネットワーク描出を、野生型マウスと遺伝子改変マウスのT.omeの差分解析手法から、また自律的なネットワーク変動描出を、マウス胚あるいはES(胚性幹)細胞・EB(胚葉体)の分化過程の追跡から、あるいは概日性T.omeの周期性解析から描出し、新規知見を得た。インフォマティクス開発では、PercellomeDBからの有意な情報の導出とそれらの網羅的対比を、特徴的な発現を示す遺伝子の自動抽出アルゴリズムRSortと、実験間共通変動遺伝子の高速抽出プログラムPercellomeExplorerの連携活用により実現した。さらに初期反応ネットワークを描出するための、高速クラスタリング技術AGCTとオルソローグ制御領域の分析ソフトウェアSHOEを構築した。これらは、既存化学物質のみならず新規化学物質の毒性機序同定・安全性評価に有効である。
結論
本研究はほぼ計画に沿い進行し、PercellomeDBと、毒性メカニズム解析のインフォマティクス開発とを融合し、そこに遺伝子欠失マウスなどの所見や人に於ける遺伝子病の所見等からの客観的な遺伝子情報を参照させる方法を構築し、毒性判定・予測の精度をより向上させた。今後、網羅性な毒性ネットワークの生成が可能となることが見込まれる。

公開日・更新日

公開日
2012-05-30
更新日
-

研究報告書(紙媒体)

公開日・更新日

公開日
2013-02-18
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201133001C

成果

専門的・学術的観点からの成果
100以上の化学物質についての約280実験の延べ3.5億遺伝子発現情報からなるトキシコゲノミクスデータベース(PercellomeDB)、及びそこから毒性学的意味付けを網羅的に抽出するプログラム群を生成した。これらを基盤に毒性と直結したネットワークの動的な反応を結論として導き出す遺伝子発現ネットワーク描出技術を開発し、毒性機序に関わる新規知見を多数得た。本技術は毒性機序研究や毒性評価業務へ応用可能な実用的な成果であり、後続の厚労科学研究班の基盤として、新規の知見獲得や技術開発に活用されている。
臨床的観点からの成果
本研究によるトキシコゲノミクスデータベースや解析プログラム群は、化学物質による毒性の機序解明研究を推進し、化学物質による健康被害の予防のみならず、被害を受けてしまった後の治療法開発に繋がる研究にも貢献する他、創薬など関連産業への応用も期待される。成果還元のためのオンラインサービスサイトも開設済みであり、研究期間終了後も国際的ソフトウエア共通基盤Garudaとの接続機能追加など、機能拡張を進めた。Garudaを介した一般公開は高い評価を得ており、ミラーサイトを開設して利用拡大に対応している。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドライン開発に至っていないが、独自の諸技術(遺伝子発現データの絶対標準化(Percellome法)、厳密な管理下での精緻な動物実験プロトコール、高精度トキシコゲノミクスデータベース、及びそこから毒性学的意味付けを網羅的に抽出して毒性と直結したネットワークの動的な反応を導き出す遺伝子発現ネットワーク描出)は、トキシコゲノミクスを用いるガイドライン開発に役立つものであり、OECDのAOP(Adverse outcome pathway)、ECETOC、米国EPA等から照会を受けている。
その他行政的観点からの成果
特になし
その他のインパクト
諸学会の他、特に以下の会議に於いて、本研究内容を発表し、学術的・行政的なインパクトを内外に与えた。
・総合科学技術会議(科学技術連携施策群)の平成21年度対象施策成果報告会において、厚生労働省施策報告
・第五回国際トキシコゲノミクス会議・第二回トキシコゲノミクス環境科学会議 合同会議(ICT-TIES 2009)において、招待講演
・2012 Global Summit on Regulatory Science - Modernizing Toxicology において基調講演

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
25件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
27件
学会発表(国際学会等)
23件
その他成果(特許の出願)
0件
その他成果(特許の取得)
1件
出願2010-294175、特許第5177712号
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
1件
http://percellome.nihs.go.jp

特許

特許の名称
競合的ハイブリダイゼーションにおける遺伝子データの補正方法及び補正装置
詳細情報
分類:
特許番号: 5177712
発明者名: 松本伸哉, 菅野純, 相崎健一 , 濱島健一, 柴田武文
権利者名: 株式会社エヌ・ティ・ティ・データ, 国立医薬品食品衛生研究所長
出願年月日: 20101228
取得年月日: 20130118
国内外の別: 国内

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
菅野純
Percellomeトキシコゲノミクスの進捗
医学のあゆみ , 236 (12) , 1125-1126  (2011)

公開日・更新日

公開日
2016-06-09
更新日
-

収支報告書

文献番号
201133001Z