違法ドラッグの精神依存並びに精神障害の発症機序と乱用実態把握に関する研究

文献情報

文献番号
201132023A
報告書区分
総括
研究課題名
違法ドラッグの精神依存並びに精神障害の発症機序と乱用実態把握に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-031
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経情報学分野)
  • 富山 健一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 嶋根 卓也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
7,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)である合成カンナビノイドおよびフェネチルアミン系化合物の精神依存性、自覚効果および細胞毒性の評価とその基盤研究を行った。また、違法ドラッグの評価に関する基礎資料を提供する目的で、クラブ利用者を対象に、違法ドラッグを含む薬物乱用実態に関する疫学調査を実施した。
研究方法
行動解析:条件付け場所嗜好性試験法と薬物弁別試験法により、精神依存性および自覚効果の評価を行った。細胞毒性の評価:神経芽細胞腫由来NG108-15細胞、ドパミン系培養神経細胞CATH.a細胞およびセロトニン系培養神経細胞B65細胞を用いて細胞毒性を検討した。疫学調査:4回イベントの利用者420名を対象として、無記名自記式による調査を実施した。
結果と考察
行動解析:合成カンナビノイドであるJWH-210およびRCS-4の条件付けにより、報酬効果の発現が認められた。また、CP-55,940弁別訓練動物において、大麻成分であるTHC、JWH-210およびRCS-4は般化が認められた。JWH-210およびRCS-4は、THCと類似の弁別刺激特性を有することが明らかになった。JWH-210およびRCS-4は、乱用される危険性が高い薬物であることが判明した。細胞毒性の評価:NG108-15細胞、B65細胞およびCATH.a細胞において、合成カンナビノイド、2CT-7、 trichloro-2C-H暴露により、細胞毒性が発現した。疫学調査:対象者の過去1年間の薬物別経験率は、大麻20.0%、LSD2.9%、コカイン2.9%、覚せい剤1.9%であった。
結論
合成カンナビノイドであるJWH-210およびRCS-4は、精神依存形成能および大麻の精神活性成分であるTHCと類似の中枢作用を有する危険性があるため、(保健衛生上の危害の恐れに応じた)適切な規制が必要である。また、CP-55,940を標準薬とした薬物弁別試験法は、多くの類縁化合物が存在する薬物の自覚効果(薬理効果)の評価に有用である。培養細胞を利用した細胞毒性の評価は、迅速かつ正確な評価法として有用である。こうした一連の薬物評価システムにより、効果的に違法ドラッグの有害作用を解析できる。実態調査の結果から、クラブ利用者は高い薬物使用経験率を示すことが判明した。クラブにおいて薬物乱用・依存に対する予防介入を行うことは効率的であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

文献情報

文献番号
201132023B
報告書区分
総合
研究課題名
違法ドラッグの精神依存並びに精神障害の発症機序と乱用実態把握に関する研究
課題番号
H21-医薬・一般-031
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
舩田 正彦(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部)
研究分担者(所属機関)
  • 浅沼 幹人(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科神経情報学分野)
  • 富山 健一(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
  • 嶋根 卓也(独立行政法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部 )
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 医薬品・医療機器等レギュラトリーサイエンス総合研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
違法ドラッグ(いわゆる脱法ドラッグ)の精神依存性、自覚効果および細胞毒性の評価とその基盤研究を行った。また、違法ドラッグの評価に関する基礎資料を提供する目的で、クラブ利用者を対象に、違法ドラッグを含む薬物乱用実態に関する疫学調査を実施した。
研究方法
行動解析:条件付け場所嗜好性試験法と薬物弁別試験法により、精神依存性および自覚効果の評価を行った。細胞毒性の評価:神経芽細胞腫由来NG108-15細胞、ドパミン系培養神経細胞CATH.a細胞およびセロトニン系培養神経細胞B65細胞を用いて細胞毒性を検討した。疫学調査:クラブ利用者を対象として、無記名自記式による調査を実施した。
結果と考察
合成カンナビノイドであるCP-55,940、 CP-47,497、CP-47,497-C8、 JWH-018、JWH-210およびRCS-4において、運動抑制作用および体温下降作用の発現用量を参考に、条件付け場所嗜好性試験を行うことにより、効率良く化学物質の精神依存性を予測できることが確認された。CP-55,940弁別獲得動物では、大麻の精神活性物質であり、麻薬として規制されているTHCにおいて般化が認められた。同様に、CP-55,940弁別獲得動物では、合成カンナビノイドにおいて般化が認められた。細胞毒性の評価:NG108-15細胞、B65細胞およびCATH.a細胞において、合成カンナビノイド、2Cシリーズの暴露により、細胞毒性が発現した。疫学調査:クラブ利用者層の最近の薬物使用経験率は、大麻32.7%、MDMA9.1%、LSD8.2%、コカイン5.8%、ケタミン3.8%であった。
結論
薬物弁別試験法は、合成カンナビノイドの自覚効果を迅速に評価できるため、類似化合物が多く存在している化学物質規制のための科学的データの収集に、最も適している解析法であると考えられる。培養細胞を利用した細胞毒性の評価は、迅速かつ正確な評価法として有用である。こうした一連の薬物評価システムにより、効果的に違法ドラッグの有害作用を解析できるものと期待される。実態調査の結果から、クラブ利用者は高い薬物使用経験率を示すことが判明した。クラブにおいて薬物乱用・依存に対する予防介入を行うことは効率的であると考えられる。

公開日・更新日

公開日
2017-05-30
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201132023C

成果

専門的・学術的観点からの成果
薬物弁別試験法は、薬物の自覚効果を迅速に評価できるため、類似化合物が多く存在している違法ドラッグ規制のための科学的データの収集に、最も適している解析法であると考えられる。樹立安定株の細胞を利用した毒性評価を実施し、2CシリーズはB65細胞およびCATH.a細胞、合成カンナビノイドの細胞毒性を評価するためにはNG108-15細胞が適している事を明確にし、細胞を利用した毒性評価方法を確立した。
臨床的観点からの成果
実態調査の結果から、クラブ利用者は高い薬物使用経験率を示すことが判明した。クラブにおいて薬物乱用・依存に対する予防介入を行うことは効率的であると考えられる。
ガイドライン等の開発
なし
その他行政的観点からの成果
薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会(平成23年8月2日)
合成カンナビノイドであるJWH-210およびRCS-4において、精神依存形成能を有することを明確にし、指定薬物として指定するための基礎データとなった。
その他のインパクト
脱法ハーブと称される違法ドラッグに合成カンナビノイドが混在していることから、本研究において明確になった依存性や細胞毒性について解説し、乱用の危険を訴え乱用防止のための啓発を行った。TBS、NHK、日本テレビニュース番組、読売新聞、埼玉新聞、静岡新聞、愛媛新聞等において「脱法ハーブの危険性」を解説した。

発表件数

原著論文(和文)
11件
原著論文(英文等)
17件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
79件
学会発表(国際学会等)
12件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
3件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
K. Tomiyama, M. Funada
Cytotoxicity of synthetic cannabinoids found in "Spice" products: the role of cannabinoid receptors and the caspase cascade in the NG 108-15 cell line.
Toxicol Lett. , 207 (1) , 12-17  (2011)
原著論文2
舩田正彦
合成カンナビノイド誘導体の薬理学的特性とその乱用について
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 45 (3) , 167-174  (2010)
原著論文3
嶋根卓也、和田清、三島健一、藤原道弘
危険飲酒行動と薬物乱用リスクグループとの関連について―大学新入生を対象とした調査より-
日本アルコール・薬物医学会雑誌 , 44 (6) , 649-658  (2009)

公開日・更新日

公開日
2018-06-21
更新日
-

収支報告書

文献番号
201132023Z