先進諸国における家族政策と雇用政策の関係

文献情報

文献番号
199800006A
報告書区分
総括
研究課題名
先進諸国における家族政策と雇用政策の関係
課題番号
-
研究年度
平成10(1998)年度
研究代表者(所属機関)
小島 宏(国立社会保障・人口問題研究所)
研究分担者(所属機関)
研究区分
厚生科学研究費補助金 行政政策研究分野 政策科学推進研究事業
研究開始年度
平成8(1996)年度
研究終了予定年度
平成10(1998)年度
研究費
1,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究は先進諸国における家族政策と雇用政策の関係について、人的資本投資施策の観点から家族政策を評価することを目的としてアメリカ、イギリス、ドイツにおける最近の家族政策の動向を比較検討するとともに、公共政策の出生行動に対する影響を探るため、スウェーデンを事例とした分析を行った。
研究方法
本研究は文献研究および実証研究から成る。本研究の主要部分を成す文献研究では、国際機関・各国政府の刊行物や学術書・論文を分析・評価した上で総括した。また、リサーチ・レジデントによる実証研究ではスウェーデンのHUS(Household and Nonmarket Activities)パネル調査データに生存分析の手法を適用し、出生タイミングの規定要因を分析した。なお、招聘外国人研究者と出生行動の日仏比較分析の準備作業も行った。
(倫理面への配慮)個票データの分析に際しては個人が特定できないような形で分析し、プライバシーの侵害等の倫理面の問題が生じないように配慮した。
結果と考察
アメリカ、イギリス、ドイツでは女性の人的資本の維持・拡充と子どもへの人的資本投資との関連でも家族政策が実施されているものの必ずしも十分なものでないため、アメリカとイギリスでは企業の努力や協力が期待され、ドイツでは政策転換が期待されていることが明らかになった。スウェーデンの家族政策については人的資本投資施策としての意味合いがどの程度あるか不明であるが、その変化が少なくとも出生タイミングに影響を与え、期間出生率の変化をもたらした可能性があることが示された。
各国において人的資本投資施策としての家族政策の重点は異なるが、これは対象として(母)親と子どものどちらに焦点を合わせるかにもよる。母親に焦点を合わせれば両立支援施策や再訓練施策が中心となるが、子どもに焦点を合わせれば保育施策や家族手当制度が中心となる。連続出産促進的な育児休業制度はどちらかといえば後者であろうが、パートタイム就業制度と組み合わされれば前者にもなりうる。
結論
家族政策を人的資本投資施策として捉える研究者は少数派かもしれないが、育児だけでなく出生も人的資源を増やすという意味では人的資本投資であるので、雇用政策だけでなく人口政策も統合した総合的家族政策を人的資本投資の観点から再検討する必要があろう。その場合、世代間関係・ジェンダー関係の視点やグローバルな視点も不可欠となろう。

公開日・更新日

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