食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201131010A
報告書区分
総括
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
20,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般毒性、変異原性および発がん性(前がん病変)評価を同一動物で実施するgpt deltaラットあるいはマウスを用いた短期包括的試験法の開発を目的とし、香料を主とする食品添加物の安全性評価に資する研究を実施した。
研究方法
実験1: 有機材料の不完全燃焼で発生する多環芳香族炭水化物の一つの成分である1-methylnaphthalene (1-MN) はマウスにおける肺発がん性が報告されている。その発がん機序を解明するため、発がん用量の1-MNをgpt deltaマウスに投与して、標的臓器肺におけるin vivo変異原性を検索した。実験2: ラット肝発がん性が知られているestragoleの発がん機序について、細胞動態への影響を追究した。実験3: 香料のmethyleugenol (MEUG) はげっ歯類における肝発がん性が報告されているため、gpt deltaラットを用いた短期包括的試験法によりMEUGのin vivo変異原性を検索するとともに、一般毒性ならびに発がん性について総合的な評価を行った。実験4: げっ歯類において肝発がん性が知られている香料furan-substituted物質の基本骨格であるfuranについて、gpt deltaマウスを用いて検討した。
結果と考察
実験1: レポーター遺伝子変異頻度に変化は認められず、1-MN肺発がん機序への遺伝毒性メカニズムの関与はないことが示唆された。実験2: estragoleの発がん機序にはDNA付加体が寄与する遺伝毒性のみならず細胞増殖や抗アポトーシスなどの促進作用が寄与していることが明らかになった。実験3: MEUGはラットの肝臓においてin vivo変異原性を有し、その発がん機序には遺伝毒性メカニズムが関与していることが明らかとなった。実験4: in vivo変異原性試験、肝臓におけるコメットアッセイ、骨髄を用いた小核試験の結果がいずれも陰性であったことから、furanのマウスにおける肝発がん機序に遺伝毒性メカニズムは関与していない可能性を示した。
結論
本試験法を用いることで、比較的短期間で発がん性を含めた評価が可能であり、さらに、評価物質の発がん機序をも明確にすることができ、ヒトの食に対する安全を担保する上で大きく貢献するものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

文献情報

文献番号
201131010B
報告書区分
総合
研究課題名
食品添加物等における遺伝毒性・発がん性の短期包括的試験法の開発に関する研究
課題番号
H21-食品・一般-010
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
西川 秋佳(国立医薬品食品衛生研究所 安全性生物試験研究センター)
研究分担者(所属機関)
  • 梅村 隆志(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
  • 小川 久美子(国立医薬品食品衛生研究所 病理部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 食品の安全確保推進研究
研究開始年度
平成21(2009)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
一般毒性、変異原性および発がん性(前がん病変)評価を同一動物で実施するgpt deltaラットあるいはマウスを用いた短期包括的試験法の開発を目的とし、香料を主とする食品添加物の安全性評価に資する研究を実施した。
研究方法
実験1: マウスにおける肺発がん性が知られている多環芳香族炭水化物である1-methylnaphthalene (1-MN) の発がん機序を解明するため、発がん用量の1-MNをgpt deltaマウスに投与して、肺におけるin vivo変異原性を検索した。実験2: ラット肝発がん性が知られているestragoleの発がん機序について、発がん過程早期の遺伝子変動を分子病理学的に解析した。実験3: 香料のmethyleugenol (MEUG) はげっ歯類における肝発がん性が報告されているため、gpt deltaラットを用いた短期包括的試験法によりMEUGのin vivo変異原性を検索するとともに、一般毒性ならびに発がん性について総合的な評価を行った。実験4: げっ歯類において肝発がん性が知られている香料furan-substituted物質の基本骨格であるfuranについて、gpt deltaマウスおよびラットを用いて検討した。
結果と考察
実験1: レポーター遺伝子変異頻度に変化は認められず、1-MN肺発がん機序への遺伝毒性メカニズムの関与はないことが示された。実験2: estragoleの発がん機序にはDNA付加体形成に起因した遺伝毒性のみならず細胞増殖や抗アポトーシスなどの促進作用の関与の可能性が示された。実験3: MEUGはラットの肝臓においてin vivo変異原性を有し、その発がん機序には遺伝毒性メカニズムが関与していることが明らかとなった。実験4: in vivo変異原性試験、肝臓におけるコメットアッセイ、骨髄を用いた小核試験の結果がいずれも陰性であったことから、furanのマウスおよびラットにおける肝発がん機序に遺伝毒性メカニズムは関与していない可能性が示された。
結論
本試験法を用いることで、比較的短期間で発がん性を含めた評価が可能であり、さらに、評価物質の発がん機序をも明確にすることができ、ヒトの食に対する安全を担保する上で大きく貢献するものと考えられた。

公開日・更新日

公開日
2012-05-31
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201131010C

成果

専門的・学術的観点からの成果
一般毒性、遺伝毒性および発がん性(前がん病変)の評価を同一動物で実施するgpt deltaラットあるいはマウスを用いた短期包括的試験法の開発を目的として、香料を主とするいくつかの食品中化学物質について調べた結果、本試験法を用いることにより比較的短期間で発がん性を含めた評価が可能であり、さらに評価物質の遺伝毒性を含めた発がん機序を明確にできることを明らかにした。研究成果は日本癌学会や日本毒性病理学会等で報告し、一部を論文に掲載した。
臨床的観点からの成果
食品の安全性確保に寄与するばかりでなく、その応用性は環境化学物質一般に広く適用できることから、化学物質を要因として発症するいろいろな疾患の発生機序解明や医薬品開発における安全性評価の面から多大な貢献が可能である。
ガイドライン等の開発
gpt deltaラットあるいはマウスを含む遺伝毒性検出用遺伝子改変モデルは2011年にOECDのガイドラインとして認められたが、それを反復投与毒性試験に応用し、遺伝毒性に加えて、一般毒性および発がん潜在性を包括的に評価する動物モデルの開発を推進し、早期のガイドライン化を目指している。
その他行政的観点からの成果
gpt deltaを含む遺伝毒性検出用遺伝子改変モデルは、長期の発がん性試験が陽性で、遺伝毒性が疑われる場合に、がんが発生した臓器での遺伝毒性の有無を確認する最終的なツールとして利用されることが多いが、我々の成果は一つの反復投与試験で最終的な結論が得られる可能性を示唆している。特に、90日間試験と遺伝毒性試験が必須である既存添加物や国際汎用香料の評価において有効であると考えられる。
その他のインパクト
本研究の対象物質は食品中の化学物質であったが、我々が開発を目指す方法論は医薬品、農薬をはじめ全ての環境化学物質に適用可能であり、その汎用生は極めて大きいと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
5件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
1件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsushita K, Kijima A, Ishii Y et al.
Development of a medium-term animal model using gpt delta rats to evaluate chemical carcinogenicity and genotoxicity
J. Toxicol. Pathol. , 26 , 19-27  (2013)
原著論文2
Jin M, Kijima A, Hibi D et al.
In vivo genotoxicity of methyleugenol in gpt delta transgenic rats following medium-term exposure
Toxicol Sci. , 131 , 387-394  (2013)
原著論文3
Jin M, Kijima A, Suzuki Y et al.
In vivo genotoxicity of 1-methylnaphthalene from comprehensive toxicity studies with B6C3F1 gpt delta mice
J. Toxicol. Sci. , 37 , 711-721  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-06-02
更新日
-

収支報告書

文献番号
201131010Z