国内外の歯科補綴物の実態に関する研究

文献情報

文献番号
201129017A
報告書区分
総括
研究課題名
国内外の歯科補綴物の実態に関する研究
課題番号
H22-医療・一般-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 秀夫(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 博信(福岡歯科大学)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)
  • 吉成 正雄(東京歯科大学)
  • 阿部 智(帝京大学大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
6,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
諸外国の歯科技工士の免許制度、歯科補綴物の管理体制および、日本の歯科補綴物の再委託の実態と歯科技工所の構造設備基準の達成度について調査し、作成履歴(トレーサビリティー)も含めた日本の歯科補綴物の管理体制を客観的に評価することを目的とした。
研究方法
歯科診補綴物の再委託に関する調査は無作為抽出した2,000件の歯科診療所(日本歯科医師会会員)を対象とし、歯科技工所の構造設備基準に関する調査は無作為抽出した2,000名の歯科技工士(日本歯科技工士会会員)を対象とした。諸外国の管理体制等については、文献調査および聞き取り調査をした。
結果と考察
EUには歯科医師とは別に約58万人の歯科補助職が存在し、歯科技工士が約15万人と歯科助手に次いで多く、そのうち38.6% (58,000万人)がドイツに認められた。EUの歯科技工教育はEU圏内で統一されておらず、各国の従来の制度が存在したままであった。
台湾と大韓民国では、日本の歯科技工士法と同様な身分法による歯科技工士の免許制度によって管理され、中国では歯科技工業務が製造業と位置付けられ、歯科技工所は食品薬品監督局の下、ISO9000の基準に準じた規制によって管理され、歯科技工の工業化に順応していた。アメリカでは、電子歯科技工指示書について協議されていた。EUでは歯科技工所がISO9001・EN ISO13485を取得し、CE認証された材料を用いて歯科補綴物が製作され、CEマークに則っている事を適合宣言書にて自己宣言することで、安全管理体制を確立させようとしていた。使用材料や生産履歴まで記載する日本の歯科補綴物のトレーサビリティ制度のようなシステムはなかった。
歯科補綴物の再委託は歯科技工所からの調査で42.7%であったが、委託先の歯科技工所が再委託をしていると認識している歯科医師が25.6%であった。再委託されている場合の歯科技工所からの報告について、報告なしが56.4%、無記名が16.8%と、70%近くは再委託について歯科医師は認知していなかった。
歯科補綴物製作の製造責任が問われる「歯科技工録」の作成に関しては実施体制を整える必要があると示唆された。
結論
諸外国では日本の歯科補綴物のトレーサビリティ制度のようなシステムはなく、世界的に統一した規格がない。各国が様々な管理体制を独自に模索している段階であることから、この制度が先進的な試みであると考えられた。
日本における歯科補綴物の再委託については、歯科医師の指示に基づかない再委託が存在することが明らかとなった。

公開日・更新日

公開日
2012-06-05
更新日
-

文献情報

文献番号
201129017B
報告書区分
総合
研究課題名
国内外の歯科補綴物の実態に関する研究
課題番号
H22-医療・一般-019
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮崎 秀夫(新潟大学 医歯学系)
研究分担者(所属機関)
  • 佐藤 博信(福岡歯科大学)
  • 末瀬 一彦(大阪歯科大学 歯科技工士専門学校)
  • 吉成 正雄(東京歯科大学)
  • 阿部 智(帝京大学大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 健康安全確保総合研究 地域医療基盤開発推進研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
歯科技工士法によって管理される我が国の制度と諸外国の歯科補綴物の管理体制が異なる中で、歯科補綴物の国境を越えたグローバルな流通に対応するために、①国内外の歯科補綴物の管理体制、②歯科補綴物の作製履歴(トレーサビリティ)、③歯科補綴物の安全性の3点について調査を行った。
研究方法
①国内外の歯科補綴物の管理体制:歯科診補綴物療所の再委託に関する調査は無作為抽出した2,000件の歯科診療所(日本歯科医師会会員)を対象とし、歯科技工所の構造設備基準に関する調査は無作為抽出した2,000名の歯科技工士(日本歯科技工士会会員)を対象とした。諸外国の管理体制等については、文献調査および聞き取り調査をした。②歯科補綴物の作製履歴:47都道府県歯科医師会各会員から抽出した計553件の歯科医院、その委託歯科技工所計1713軒、その患者計5710名を対象に、質問票調査と「補てつ物管理票」の試験使用を実施した。③歯科補綴物の安全性:日本、アメリカ、ヨーロッパ、中国を対象として歯科技工所計16ヵ所から計64個の陶材焼付鋳造冠を収集し、陶材焼付鋳造冠の陶材部分の成分分析<電子線マイクロアナライザー(EPMA)>と、鋳造冠のからの溶出物質試験<誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP)>およびその細胞培養試験を行った。
結果と考察
台湾と大韓民国では、身分法による歯科技工士の免許制度によって歯科補綴物は管理され、EU、米国、中国では歯科技工業務を製造業と位置付けていた。歯科補綴物のトレーサビリティを導入できている国はなかった。
歯科補綴物の再委託は42.7%であったが、再委託を認識している歯科医師が25.6%であり、歯科医師の指示に基づかない再委託が存在した。歯科技工所の設備構造基準について、「歯科技工録」の作成に関してはなお一層の実施体制を整える必要があった。
84.2%の歯科医院が歯科補綴物に関する情報を患者に提供していたが、患者が最も知りたいとする「補綴物等の材料の安全性」(83.6%)に関する情報を得ているとする患者は11.1%と少なかった。「補てつ物管理票」については、歯科医師、歯科技工士の専門家から使い勝手の悪さが指摘された。
EPMA分析およびICP分析の結果、すべての試料においてPbは検出されなかった。細胞培養試験の結果、細胞毒性は認められなかった。
結論
歯科医師は歯科補綴物の作製履歴を把握する必要があり、患者が求める歯科補綴物に関する情報の提供に努める必要がある。

公開日・更新日

公開日
2012-06-05
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201129017C

成果

専門的・学術的観点からの成果
2009年1月に台湾で制定された歯科技工士法および関連資料(「歯科技工士法」、「歯科技工士法施行細則」、「専門職業及び技術人員高等試験歯科技工士試験」、「専門職業及び技術人員高等試験歯科技工士試験規則」、「歯科技工士試験実地試験評価項目及び配分表」、「専門職業及び技術人員高等試験歯科技工士試験実習認定基準」)の日本語訳を行った。これらの資料は理系研究者が通常解読できる英語圏のものでないことから、今後の研究において第一級の日本語による一次資料となると考えられる。
臨床的観点からの成果
テレビ等のマスコミ報道で不安が広がる中、臨床的視点から最も必要である有害物質溶出の有無を測定し、溶出がないことを確認した。さらに、細胞毒性についても問題ないことを確認することで、風評による患者の不安を解消するデータを示すことができた。
歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について」で示される「補てつ物管理票」については、実際に使用する際の改善点を示し、臨床の現場で使いやすいものとなった。
ガイドライン等の開発
2011年6月28日に厚生労働省医政局から発出された「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について」(医政発0628第4号)の作成にあたり、2010年12月から2011年2月にかけて歯科医師(歯科医院:553施設)、歯科技工士(歯科技工所:1713施設)、患者(5710名)に対して、同指針で示される「補てつ物管理票」の大規模な使用試験を実施し、「補てつ物管理票」の臨床現場における使用可能性の確認および指針内容の最終調整を行った。
その他行政的観点からの成果
歯科補綴物の海外委託については、国内流通を前提としている現行の歯科技工士法では対応が難しく、取扱いが曖昧であったが、指針が発出されたことによりルールが明確となった。さらに、この指針で示される歯科補綴物のトレーサビリティ制度が諸外国に先駆けて導入されたもので、今後、歯科補綴物の国際流通の統一規格などが議論される際に、日本が指導的役割を果たすことが期待できる。
また、歯科補綴物の再委託ついては、歯科医師の指示に基づかない再委託が存在することが明らかとなり、今後の歯科行政の課題が明確となった。

その他のインパクト
一連の歯科技工所などの関係者、関係当局、専門家への聞き取り調査によって、世界的に問題となっている歯科補綴物の海外委託について、日本では監督省庁である厚生労働省が研究班を発足させて対応していることを国際的に示すことができた。
日本の海外委託の主要な国である中国には「歯科医療における補てつ物等のトレーサビリティに関する指針について」を中国語へ翻訳し、聞き取り調査と同時に関係者に翻訳した資料を配布した。監督省庁の厳しい姿勢を示すことで、無秩序な日本市場への参入に対して心理的抑制効果が期待される。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
1件
その他成果(普及・啓発活動)
1件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

公開日・更新日

公開日
2018-08-16
更新日
-

収支報告書

文献番号
201129017Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
6,000,000円
(2)補助金確定額
6,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 137,369円
人件費・謝金 0円
旅費 1,809,990円
その他 4,052,641円
間接経費 0円
合計 6,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2018-08-16
更新日
-