文献情報
文献番号
201128276A
報告書区分
総括
研究課題名
非定型溶血性尿毒症症候群の診断法と治療法の確立
課題番号
H23-難治・一般-121
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
藤村 吉博(奈良県立医科大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
- 宮田 敏行(国立循環器病研究センター研究所 分子病態部)
- 松本 雅則(奈良県立医科大学 医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
4,500,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
溶血性尿毒症症候群(HUS)の約90%は腸管出血性病原性大腸菌への感染を契機に発症し下痢を伴うが、約10%は下痢を伴わず非定型(atypical, a)HUSと呼ばれる。最近aHUSの原因の多くはH因子(FH)に代表される補体調節因子の遺伝子異常によることが欧米で数多く報告される一方で、本邦におけるaHUS病態解析はほとんど行われていない。奈良医大輸血部では1998年よりTMA(血栓性微小血管障害症)患者の診断、登録を行っており、その中で家族性や症状反復性等から先天性aHUSと考えられる症例を同定した。本研究は、これら患者について解析を行うことで本邦aHUSの病態を明らかにし、症例に応じた適切な治療法の選択が可能となることを目的とする。
研究方法
a)対象症例
2011年末までに先天性aHUS疑診例として同定した31家系48症例、さらに2012年に新規に依頼を受けた7例について、同意を得られた症例から順次解析を行った。
b)解析方法
FHに焦点を当てたタンパク質レベルでの解析として、1)ヒツジ赤血球を用いた溶血試験、2)FH添加による溶血補正試験、3)抗FH抗体スクリーニングを奈良医大輸血部にて行った。これら解析による異常部位のスクリーニングの後に、遺伝子レベルでの解析として6種類の補体調節因子(FH, MCP, FI, TM, C3, FB)の網羅的遺伝子解析を国立循環器病研究センターにて行った。
2011年末までに先天性aHUS疑診例として同定した31家系48症例、さらに2012年に新規に依頼を受けた7例について、同意を得られた症例から順次解析を行った。
b)解析方法
FHに焦点を当てたタンパク質レベルでの解析として、1)ヒツジ赤血球を用いた溶血試験、2)FH添加による溶血補正試験、3)抗FH抗体スクリーニングを奈良医大輸血部にて行った。これら解析による異常部位のスクリーニングの後に、遺伝子レベルでの解析として6種類の補体調節因子(FH, MCP, FI, TM, C3, FB)の網羅的遺伝子解析を国立循環器病研究センターにて行った。
結果と考察
本年度新たに採血できた21例のうち、5例で明らかな溶血の亢進を認め、5例に軽度の溶血亢進を認めた。溶血亢進を認めた症例のうち、2症例でFH遺伝子に変異(R1215Q)を、溶血亢進が認められなかった5症例でC3遺伝子に変異(I1157TとS562L)を同定した。本結果より、溶血試験の結果から異常部位を推測し、遺伝子解析を行うという一連の解析方法が有用であることが確認できた。
結論
奈良医大輸血部のTMAデータベースより、32家系55症例のaHUS疑診患者を同定した。これら症例についてFHを中心とした補体調節因子の解析をタンパク質レベルと遺伝子レベルで行った。その結果、1家系2症例にFH遺伝子異常を、2家系5症例にC3遺伝子変異を同定することができた。本研究を継続することで多数の本邦aHUS症例における臨床所見と遺伝子異常の関連が明らかとなり、現在まで不明であった病態が明らかとなる可能性が高い。
公開日・更新日
公開日
2013-03-28
更新日
-