マリネスコ-シェーグレン症候群におけるシャペロン機能と病態との関連

文献情報

文献番号
201128261A
報告書区分
総括
研究課題名
マリネスコ-シェーグレン症候群におけるシャペロン機能と病態との関連
課題番号
H23-難治・一般-105
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
林 由起子((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第一部)
研究分担者(所属機関)
  • 小牧 宏文((独)国立精神・神経医療研究センター 病院小児神経科)
  • 後藤 昌英((独)国立精神・神経医療研究センター 病院小児神経科)
  • 大久 敬((独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所 疾病研究第一部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
マリネスコ-シェーグレン症候群(MSS)は、小脳失調、精神発達遅滞、先天性白内障、ミオパチーを主症状とする希少疾患である。小胞体シャペロン蛋白質HSPA5のATP-ADP交換因子であるSIL1をコードする遺伝子(SIL1)の変異による。我々は、MSSに関する全国アンケート調査の結果に基づき、その臨床病理学的特徴を明らかにするとともに、遺伝子変異と臨床病型についての解析も進めた。また、sil1変異を有するメダカモデルの探索を行った。
研究方法
二次アンケート調査を行い、MSS症例の情報収集ならびにデータ解析を行った。また遺伝子診断の承諾が得られた場合、SIL1遺伝子解析を行った。一方、国立精神・神経医療研究センター骨格筋ライブラリーよりMSS疑い例を抽出し、筋病理学的解析を行った。モデルメダカの獲得を目的に、大阪大学との共同研究でメダカENU変異体ライブラリーのスクリーニングを行った。
結果と考察
アンケート調査の結果、35名のMSSの疑われる症例を見いだした。このうち23人でSIL1変異を同定し、MSS確実例とした。一方、変異の認められなかった3例ならびに遺伝子解析が不可能であった9例は、MSS疑い例として分類した。MSS確実例の臨床症状は、白内障(100%)、小脳症状(100%)、精神発達遅滞(86%)、ミオパチー(96%)であった。乳児期より精神運動発達の遅れがあるものの、予後は比較的良好で、最高齢は52才であった。一方、MSS疑い例であっても、ほとんどは4徴候を満たしており、MSSの遺伝的多様性が示唆された。SIL1 c.937dupGは高頻度に認められ、本邦に好発する変異であることが示唆された。
変異メダカのスクリーニングでは、Exon2にミスセンス変異を有する1系統が得られたが、現在ナンセンス変異を有する個体の選別を目的にexon 9, 10の変異体のスクリーニングをおこなっている。
結論
本邦MSSの発症頻度は10万人当たり1〜2人程度であり希少疾病であること、SIL1 c.937dupGは、日本人における好発変異であることを明らかにした。またSIL1変異を有する症例はいずれも典型的な臨床病理学的所見を呈しているが、SIL1変異がないにもかかわらず類似した症状を示す例も見出され、MSSは遺伝的多様性を明らかにした。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128261Z