先天性QT延長症候群の家族内調査による遺伝的多様性の検討と治療指針の決定

文献情報

文献番号
201128244A
報告書区分
総括
研究課題名
先天性QT延長症候群の家族内調査による遺伝的多様性の検討と治療指針の決定
課題番号
H23-難治・一般-088
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
堀江 稔(滋賀医科大学 医学部 内科学講座(循環器・呼吸器))
研究分担者(所属機関)
  • 清水 渉(国立循環器病研究センター 心臓血管内科 )
  • 林 研至(金沢大学医薬保健研究域医学系臓器制御学)
  • 牧山 武(京都大学大学院医学研究科循環器内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成24(2012)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
先天性QT延長症候群を対象とし我が国で発見・同定できた遺伝子異常(変異と多型)の機能解析を行い、その遺伝的背景の臨床的重症度を決定する。現在、遺伝性QT延長症候群コホートは、現在、600家系以上が集積され、遺伝子診断の確定例は300症例を超えた。本研究では、分担研究者の4施設および関連施設に集積され解析可能であった560例の発端者を対象に、その発症様式から、先天性と2次性(このカテゴリーはさらに症候性と無症候性に分ける)に分類して、その遺伝的背景や重症度により変異の違いについて詳細に調べた。本邦での遺伝子検査を踏まえたテーラメイド医療を実践するうえでの、臨床データを提供することが目的である。
研究方法
登録症例を対象に遺伝子型一臨床型の病態理解をより深めるために、QT延長症候群症例のゲノム解析も行ない分子生物学あるいは電気生理学的の手法を用いて分子病態の解明を行う。今回の検討では、すでに証明されている6つの関連遺伝子、すなわち、KCNQl,KCNH2,SCNA5,KCNEl,KCNE2,KCNJ2について、すべてのエクソンを調べた。あらかじめ、施設の倫理委員会で承認されたプロトコール通り、すべての患者からインフォームド・コンセントを得て可能な限りの臨床情報と血液サンプルを採取した。
結果と考察
2次性(acquired LQTS)において、女性の比率が有意に高く、その年齢も発症年齢も高かった。一方、先天性において、有意に家族歴の頻度が高く、QTc値は有意に長くT波のノッチなどの形態異常も多かった。さらに(1)先天性QT延長症候群に比べて2次性における病的な遺伝遺伝子異常は少なかったが、(2) torsade de pointesなど重症の2次性では、先天性の半分程度の頻度で関連遺伝子の変異が発見(24%)された。(3)その約半分は、先天性で同定される変異と同じであった。我々の2次性での、遺伝子同定率は、従来の報告よりも高かった。さらに、興味深いことにその発見率は、2次性でも、その重症度に比例して上昇した(28%)。
結論
今後、もっと大きな2次性QT延長症候群コホートで、いわゆる修飾遺伝子(modifier gene)の検索を行うべきである。すでに報告されたmodifier gene variantとして有名なものに、Y1103-SCN5A, K897T-KCNH2, D85N- KCNE1などがあるが、さらに最近のgenome-wide association study (2009)で同定されたvariantsにも注目して、検討を加える必要があると考えられた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-12
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128244Z