文献情報
文献番号
201128212A
報告書区分
総括
研究課題名
炎症性動脈瘤形成症候群の新規診断バイオマーカーの開発と診断基準の作成
課題番号
H23-難治・一般-056
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
吉田 恭子 (今中 恭子)(三重大学 大学院医学系研究科(基礎医学系講座修復再生病理学分野))
研究分担者(所属機関)
- 阿部淳(国立成育医療研究センター研究所(免疫アレルギー研究部))
- 白石公(国立循環器病研究センター(小児科))
- 松下竹次(国立国際医療研究センター(小児科))
- 廣江道昭(国立国際医療研究センター(循環器内科))
- 須田憲治(久留米大学医学部 (小児科学))
- 吉兼由佳子(福岡大学筑紫病院(小児科) )
- 橋本淳一(福岡大学医学部(小児科学))
- 市田蕗子(富山大学大学院医学薬学研究部(小児科学))
- 三谷義英(三重大学大学院医学系研究科(小児科学))
- 青木浩樹(久留米大学循環器病研究所(分子生物学))
- 吉村耕一(山口大学大学院医学系研究科(血管外科学))
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
炎症性動脈瘤形成症候群は全身性急性汎血管炎に続発し、大動脈や、冠動脈など血管壁の破壊、不可逆的な著しい拡張をおこす。ほとんどが小児期に発症し、川崎病に合併することが多い。免疫グロブリン治療の普及により、川崎病に合併する冠動脈瘤発症数は減少したが、免疫グロブリン不応性例や、全身性炎症疾患で冠動脈瘤を合併する症例が存在し、いずれの場合も、動脈瘤形成を予知する指標はない。我々は、新しい病態マーカー候補分子として,テネイシンCに注目して、バイオマーカーとしての有用性を評価し、新しい病勢マーカーおよび治療効果判定マーカーの開発を目的とした。
研究方法
川崎病を含む小児有熱疾患「炎症性動脈瘤形成症候群」患者の過去の症例の血清、病理サンプルを用いた後ろ向き研究によりテネイシンCの血中濃度の経時的変化、投薬歴、治療反応性、冠動脈瘤形成との相関の解析を行った。ほとんどが厚生労働省川崎病研究班作成改定5版ガイドラインに従った治療をうける現状に即し、粘膜、皮膚病変、冠動脈病変の有無により有熱入院患者を分類して登録して,治療前、(初回)治療開始後2日、第10-14病日、第30病日に採血、超音波検査による前向き研究を行った。理論的裏付けのためにカンジダ・アルビカンス抽出液投与によりマウスモデルを作成し、テネイシンCの測定、瘤形成、組織所見との対比を行った。
結果と考察
今回の対象となった症例は全例川崎病に合併していたが、テネイシンCの濃度は,炎症急性期に高値を示し、回復期に低下したが、CRPとの相関は認められなかった。従って、テネイシンCは単なる炎症マーカー以上の新たな病態マーカーと考えられた。冠動脈瘤を形成する症例や、超大量免疫グロブリン療法不応例は,テネイシンC値が高い傾向にあったが,いずれも,症例数が少なく有意差は得られなかったため、さらなる症例の蓄積が必要である。また,血管病変部位でのテネイシンCの発現は動物モデルでは認められたが,今回入手できたヒト剖検症例はすでに組織学的には回復期にあり、テネイシンCの発現はすでに消失していたと考えられる。現在、川崎病急性期死亡率は非常に低く、ヒト剖検組織を用いた解析は困難になっており,治療法の開発だけでなく病態解析、新しい診断法の有用性評価のためには、動物モデルの併用が必須である。
結論
テネイシンCは冠動脈瘤形成症候群の新しいバイオマーカーとして有用であることが示唆された。
公開日・更新日
公開日
2013-03-13
更新日
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