文献情報
文献番号
201128207A
報告書区分
総括
研究課題名
新生児横隔膜ヘルニアの重症度別治療指針の作成に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-051
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
臼井 規朗(大阪大学 大学院医学系研究科 外科学講座・小児成育外科学)
研究分担者(所属機関)
- 田口 智章(九州大学大学院医学研究院 小児外科学分野)
- 金森 豊(国立成育医療研究センター 臓器・運動器病態外科部)
- 奥山 宏臣(兵庫医科大学 小児外科)
- 早川 昌弘(名古屋大学医学部附属病院周産母子センター 新生児科)
- 稲村 昇(大阪府立母子保健総合医療センター 小児循環器科)
- 高橋 重裕(国立成育医療研究センター 新生児科)
- 藤野 裕士(大阪大学医学部附属病院 集中治療部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
5,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、全国調査によってわが国おける新生児横隔膜ヘルニア(以下本症)の治療実態と治療成績を把握し、生命予後の不良因子を特定したうえで、重症度別の治療指針確立のために、リスクに従って本症例を層別化することである。
研究方法
日本小児外科学会認定施設・教育関連施設および総合周産期母子医療センターを対象に一次調査を施行後、症例調査票を用いた詳細な二次調査を実施した。研究対象は2006年1月1日から2010年12月31日までの間に出生し、本症と診断された新生児とした。二次調査症例を対象にして、記述統計学的解析を行い、わが国における本症の治療実態と治療成績を明らかにしたのち、生命予後に影響する重篤な奇形や染色体異常を合併する症例を除外して、生後90日生存をプライマリアウトカムとして生命予後不良の因子を特定し、リスクによる層別化を行った。
結果と考察
159施設に対して一次調査を実施し、110施設から回答を得た。次いで応諾が得られた72施設614例に対して二次調査を実施して対象とした。90日生存例は475例(78.4%)、最終生存例は463例(75.4%)で、在宅治療を要せず退院した症例は396例(64.5%)であった。442例(72.0%)が出生前診断例、172例(28.0%)が非出生前診断例であり、各々の生存率は70.8%、87.2%であった。生命予後に影響する重篤な奇形や染色体異常を合併した症例は94例(15.3%)あり、合併しなかった症例(Isolated症例)は520例(84.7%)であった。各々の生存率は27.7%、84.0%であった。横隔膜ヘルニア根治術は530例(86.3%)に施行され、うち463例(87.4%)が救命された。90日生存に対する調節済みオッズ比が最も高い因子は、生後24時間以内の最良OI<8.0であり、次いでオッズ比の高い因子は、Apgar score 1分値: 5-10であった。上記2つの因子を用いてリスクに従って症例を4群に層別化した。わが国の主要施設で過去5年間に出生した新生児横隔膜ヘルニアの約60%に相当すると思われる症例の治療実態と治療成績が明らかとなった。さらに本症の予後に影響する様々な因子を特定することができた。
結論
出生後24時間以内の所見からリスクによる症例の層別化を行うことが可能となった。今後これらの重症度指標に応じた治療指針を早急に確立することが必要と考えられた。
公開日・更新日
公開日
2013-03-10
更新日
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