特発性正常圧水頭症の病因・病態と診断・治療に関する研究

文献情報

文献番号
201128174A
報告書区分
総括
研究課題名
特発性正常圧水頭症の病因・病態と診断・治療に関する研究
課題番号
H23-難治・一般-018
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
新井 一(順天堂大学 医学部脳神経外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石川 正恒(洛和会音羽病院 正常圧水頭症センター)
  • 和泉 唯信(徳島大学医学部 歯学部附属病院 神経内科)
  • 大井 静雄(聖トマス大学 人間文化共生学部)
  • 折笠 秀樹(富山大学大学院 医学薬学研究部 バイオ統計学・臨床疫学教室)
  • 数井 裕光(大阪大学大学院 老年精神医学)
  • 加藤 丈夫(山形大学医学部 第三内科 神経内科)
  • 榊原 隆次(東邦大学医療センター佐倉病院 神経内科)
  • 佐々木 秀直(北海道大学大学院医学研究科神経病態学講座 神経内科学分野)
  • 佐々木 真理(岩手医科大学 放射線診断学)
  • 伊達 勲(岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科脳神経外科学)
  • 中野 今治(自治医科大学内科学講座 神経内科学部門神経内科)
  • 橋本 卓雄(聖マリアンナ医科大学 脳神経外科)
  • 橋本 正明(公立能登総合病院 脳神経外科)
  • 橋本 康弘(福島県立医科大学医学部生化学講座)
  • 平田 好文(熊本託麻台病院 脳神経外科)
  • 藤井 幸彦(新潟大学脳研究所 脳神経外科)
  • 堀 智勝(森山記念病院 脳神経外科)
  • 松前 光紀(東海大学医学部外科学系脳神経外科領域)
  • 三宅 裕治(西宮協立脳神経外科病院 脳神経外科)
  • 宮田 元(秋田県立脳血管研究センター 脳神経病理学研究部 臨床病理部)
  • 森 悦朗(東北大学大学院医学系研究科 行動神経学)
  • 森 敏(滋賀県立大学 人間看護学部)
  • 山田 晋也(東海大学医学部附属大磯病院 脳神経外科)
  • 湯浅 龍彦(鎌ヶ谷総合病院 千葉神経難病医療センター 難病脳内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成23(2011)年度
研究終了予定年度
平成25(2013)年度
研究費
27,692,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究班の目的は、特発性正常圧水頭症(iNPH)の原因及び病態を明らかし、治療法と予防法を確立し、老年期の難治性病態の一つを解決に導くことにある。
研究方法
方向性を明確する為に、病因研究、病態研究、治療研究のとりまとめ幹事を中心に各分担者がおのおのの課題について研究を行った。斑全体では3つの全国疫学調査(AVIMの多施設共同追跡調査、シャント治療の前向き観察研究Japan Shunt Registry 2、疫学班との共同によるiNPHの全国疫学調査)が計画・開始された。
結果と考察
病因研究ではAVIMの多施設共同研究の中間報告では喫煙が新たなiNPHのリスクファクターの候補に抽出された。広島県備北地域の調査でも、健常高齢者におけるAVIMの頻度は約1%で、これは既報告と同程度の頻度であり、AVIMの頻度は東北地方と西日本では差のないことが明らかとなった。これは世界に類を見ない調査研究であり、今後AIVMの危険因子が同定されることにより、iNPHの病因が明らかになることが期待される。髄液バイオマーカーの研究では、髄液型トランスフェリンとsAPPαがiNPHの診断マーカーとなることが明らかになった。病態研究では最新鋭の領域抽出プログラムとTBMを用いることで、iNPHのシャント術前後の軽微な形態変化を定量的に自動検出することが可能となった。本手法はiNPHの早期診断や治療効果判定に有望と考えられた。NPHの新分類が提唱され、iNPH以外の水頭症病態について調査研究が開始された。治療研究では、前研究班にて改訂されたガイドラインに基づいたiNPH治療の実態調査を行うべく、JSR2が企画立案された。現在行われているシャント術の安全性と治療成績の向上を目指すのは勿論、内科的治療の開発・導入、リハビリテーションシステムの構築、更に予防法の開発に取り組んで行きたい。
結論
本年度から新たに始まった本研究班で扱うiNPHは、パーキンソン病の2倍、アルツハイマー病の1/4程度と潜在的には比較的頻度の多い疾患である。しかし現実にはその数パーセントのみが診断・治療されているにすぎない。診断基準が整い、徐々に診断治療される例が増加しているにも関わらず、未だiNPHの発症機序は不明であり、その為、診断法、根本療法や予防法の問題は依然として残されている。その意味から本疾患を難治性疾患として研究を推進することの意義は大きいと考える。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128174Z