文献情報
文献番号
201128145A
報告書区分
総括
研究課題名
カルパイン阻害剤による角膜内皮細胞のアポトーシス抑制効果の評価
課題番号
H22-難治・一般-186
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
馬場 耕一(大阪大学 医学系研究科)
研究分担者(所属機関)
- 西田 幸二(大阪大学 医学系研究科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
フックス角膜内皮変性症は、原発性に角膜内皮が傷害されアポトーシスの進行により角膜内皮細胞数が減少し重篤な視力障害に至る難治性疾患である。現在本疾患に対し角膜移植の他に良好な治療法はなく、角膜移植が抱えるドナー不足や拒絶反応などの問題から、角膜移植にかわる治療法に高い関心が寄せられている。本研究課題では、簡便な点眼液の使用によりカルパインの活動を阻害し、角膜内皮細胞のアポトーシスを抑制することで、フックス角膜内皮変性症の新たな治療法の可能性を探索した。
研究方法
点眼液の作製と構造物性評価を行った。薬剤にカルパイン阻害剤を検討した。特にスプレードライヤーの使用により薬剤ナノ粒子粉体を作製した。続いてナノ粒子型点眼液の作製を試みた。また培養角膜内皮細胞および実験動物(ウサギ)の角膜内皮障害モデルにおける点眼による角膜内皮細胞のアポトーシス抑制効果を評価した。
結果と考察
スプレードライヤーの使用により粒子サイズ1 μm以下程度の薬剤粒子粉体を作製することに成功した。スプレー由来の微小サイズ液滴の形成により液滴サイズを反映した粒子の作製に成功したと推測する。粒子粉体は界面活性剤等の併用により粒子分散させ点眼液として用いた。また過酸化水素添加による低酸化ストレス障害を与えた培養ウサギ角膜内皮細胞系で、カルパイン阻害剤の使用によるアポトーシス抑制効果が示唆された。ヒト角膜内皮セルラインおよび培養ヒト角膜内皮細胞系については最適な評価系の構築等を含め現在も薬理効果について検証を進めている。またクライオ処置で経角膜的に障害を施したモデルウサギ実験系において、クライオ処置直前より点眼を開始した系は、コントロール群と比較して角膜混濁の進行が遅れたことより角膜内皮細胞死の抑制が示唆された。
結論
ナノスプレードライヤーの使用により薬剤ナノ粒子粉体の作製に成功し、ナノ粒子点眼液を作製した。カルパイン阻害剤により培養ウサギ角膜内皮細胞のアポトーシス抑制効果が示唆された。カルパイン阻害剤を点眼した系においては角膜内皮細胞死に伴う角膜混濁の遅延が認められたため角膜内皮細胞の細胞死の抑制が示唆された。フックス角膜内皮変性症に対して新しいタイプの薬物治療法の可能性につながることが期待できる。
公開日・更新日
公開日
2013-03-10
更新日
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