Prader-Willi症候群の診断・治療指針の作成

文献情報

文献番号
201128125A
報告書区分
総括
研究課題名
Prader-Willi症候群の診断・治療指針の作成
課題番号
H22-難治・一般-165
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
永井 敏郎(獨協医科大学越谷病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
  • 堀川 玲子(国立成育医療研究センター 内分泌代謝科)
  • 村上 信行(獨協医科大学越谷病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はPrader-Willi症候群(PWS)の実態把握と、それに基づく治療指針の作成である。その必要性は、本症候群が、生涯にわたりQOLの低下を招く難病であるにもかかわらず、現行治療法の評価、遺伝的異質性による症状や治療反応性の解析、長期予後の解明がなされていないことにある。
研究方法
PWS187名を対象とし、遺伝子診断法の確立、詳細な(エピ)遺伝子型-表現型解析を行った。
本研究に当たっては、患者もしくは家族から研究の内容、臨床データの使用について同意を得た。
結果と考察
(エピ)遺伝子型―表現型解析の中で、診療指針作成にあたり重要であると考えられる結果を以下にまとめる。
1)内分泌学的症状
 GH使用は、低身長のみならず、体組成の改善、脂肪代謝の改善を促し、有益な治療法である。また、乳幼児期の粗大運動発達を促す作用もあることから早期にGH使用開始すること、また、GH中止後の内臓脂肪の蓄積が悪化することから、成人期でもGH使用を継続する必要性が示された。
男性患者に対する男性ホルモン補充に関しては、従来想定されていた攻撃性の増悪などの有害事象はなく、むしろ体組成やQOLが改善された。したがって、男性ホルモン補充は、有益な治療法の一つであると考えられる。
 BMIの高いPWS患者では糖尿病の発症リスクが特に高く、慎重なフォローが必要である。また、食事療法、運動療法に加え、経口糖尿病薬、インスリン治療も有効であった。
2)神経学的症状
 本研究によりPWSに特異的な心理行動症状が少しずつ明らかとなり、これらはPWS特異的な治療指針の作成に非常に有用である。
 2歳未満のPWS患者における熱性痙攣発症頻度は一般小児集団と同様であり、また、PWS特異的な脳波異常も認められなかったことより、PWSにおける痙攣の合併リスクは高くないことが考えられる。
3)側彎症
 手術適応例に対しては、GH使用などによる体組成を改善し、術前管理を向上させることで、側弯症の治療に対する手術リスクを減じることができる。
 一部の症例で、GH使用後に側弯症の急性増悪例が存在し、GH開始後の身長の伸び始める時期および歩行開始時期には側弯の発症や増悪に留意する必要がある。

結論
詳細な実態調査、遺伝子診断法の確立、詳細な(エピ)遺伝子型-表現型解析、PWS発症に影響を及ぼす因子の検討、情報発信の基盤整備がなされた。この成果は、疑いなく、PWSの診断・治療指針の作成に結実する筈である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128125B
報告書区分
総合
研究課題名
Prader-Willi症候群の診断・治療指針の作成
課題番号
H22-難治・一般-165
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
永井 敏郎(獨協医科大学越谷病院 小児科)
研究分担者(所属機関)
  • 緒方 勤(浜松医科大学 小児科)
  • 堀川 玲子(国立成育医療研究センター(研究所) 第一専門診療部)
  • 村上 信行(獨協医科大学越谷病院 小児科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的はPrader-Willi症候群(PWS)の実態把握と、それに基づく治療指針の作成である。その必要性は、本症候群が、生涯にわたりQOLの低下を招く難病であるにもかかわらず、現行治療法の評価、遺伝的異質性による症状や治療反応性の解析、長期予後の解明がなされていないことにある。
研究方法
患者187名を対象とし、遺伝子診断法の確立、詳細な(エピ)遺伝子型-表現型解析を行った。また、全国患者会連合大会の開催と全国患者会を対象とする詳細な実態調査を行った。
結果と考察
全国患者会連合大会の開催と全国患者会を対象とする詳細な実態調査;
患者会を対象とした詳細な調査がなしえたことは、PWS症候群の研究を大きく進展させるものであり、今後、(エピ)遺伝子型-表現型解析に基づく、治療効果の判定、長期予後や合併症の評価に大きく貢献すると考えられる。

遺伝子診断法の確立;
PWS様表現型を有する患者の確定診断や鑑別診断のツールが完成し、さらに、遺伝子診断フローチャートも完成しえた。

(エピ)遺伝子型-表現型解析;
上記の遺伝子診断法が確立し、患者の遺伝的発症原因が決定したことで、大きく進展した。これは、今後のPWSの診断・治療指針の確立に重要な役割を果たすことに疑いがない。

各臨床症状および治療効果の判定;
成長ホルモン分泌動態、性線機能不全、精神症状、側彎症などの、PWSにおける様々な合併症に関する詳細なデータが得られたことは、治療指針の作成に極めて有用であったと考えられる。
特に、成長ホルモンや男性ホルモン使用の有用性、糖尿病発症リスクや有効な治療法、PWSに特異的な心理行動上の特徴、PWSにおける側彎症の特徴(増悪因子など)や外科手術前の成長ホルモン使用の有用性などが明らかとなった。

PWS発症に影響を及ぼす因子の検討;
高齢出産、生殖補助医療、患者出生の季節性につき、PWS発症との関連を検討した。高齢出産と母性ダイソミーの研究結果は、今後の生殖補助医療におけるPWSを含むインプリンティング疾患発症の評価において有用と考えられる。
患者出生の季節性の検討は、精子形成時の外的因子(環境物質、生活習慣など)がPWS発症に影響を及ぼす可能性を示唆するものであり、今後も検討を行う必要がある。
結論
詳細な実態調査、遺伝子診断法の確立、詳細な(エピ)遺伝子型-表現型解析、PWS発症に影響を及ぼす因子の検討、情報発信の基盤整備がなされた。この成果は、疑いなく、PWSの診断・治療指針の作成に結実する筈である。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128125C

成果

専門的・学術的観点からの成果
遺伝子診断法の確立、詳細な(エピ)遺伝子型-表現型解析(成長ホルモン分泌動態、性線機能不全、精神症状、側彎症、脂質代謝異常)、情報発信の基盤整備がなされた。また、PWS発症に影響を与える因子(高齢出産、生殖補助医療など)についても検討を行い、高齢出産が15番染色体母性片親性ダイソミー発症のリスクファクターであることを明らかとした。
臨床的観点からの成果
患者187名を対象とし、遺伝子診断法の確立、詳細な(エピ)遺伝子型-表現型解析(成長ホルモン分泌動態、性線機能不全、精神症状、側彎症、脂質代謝異常)、情報発信の基盤整備を行った。また、全国患者会連合大会の開催と全国患者会を対象とする詳細な実態調査を行った。また、これらの成果をWEB上での公開や、関係学会、研究会などにおける発表を行うことにより、PWS患者心療に関わる医療者への情報提供に努めた。
ガイドライン等の開発
遺伝子診断アルゴリズムを作成し、PWS疑い症例に対する解析を効率よく、高精度に行うことが可能となった。また、各種合併症(内分泌代謝学的異常、精神神経学的異常、側彎など)の詳細を明らかとしたことは、PWS患者診療の手引きやガイドライン作成に結実するはずである。
その他行政的観点からの成果
効率的な遺伝子診断法の確立、各種合併症に対する標準的な治療の検討を行い、これらの成果をWEB公開、および、関係学会や患者会において積極的に発表することで、日本全国におけるPWS患者診療技術の均てん化に寄与することができる。
その他のインパクト
本研究おいて実施した全国患者会連合大会の開催と全国患者会を対象とする詳細な実態調査により、医療者間のみならず、患者―医療者間、および患者間における相互関係の構築に寄与したと考えられる。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
16件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
15件
学会発表(国際学会等)
7件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Matsubara K, Murakami N, Nagai T, et al
Maternal age effect on the development of Prader-Willi syndrome resulting from upd(15)mat through meiosis 1 errors.
Journal of Human Genetics , 56 , 566-571  (2011)
原著論文2
Oto Y, Obata K, Matsubara K, Kozu Y, et al
Growth hormone secretion and its effect on height in pediatric patients with different genotypes of Prader-Willi syndrome.
American Journal of Medical Genetics Part A , 158 (6) , 1477-1480  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128125Z