症候性頭蓋縫合早期癒合症(クルーゾン/アペール/ファイファー/アントレー・ビクスラー症候群)に対する治療指針の作成および新規治療法の開発に関する研究

文献情報

文献番号
201128124A
報告書区分
総括
研究課題名
症候性頭蓋縫合早期癒合症(クルーゾン/アペール/ファイファー/アントレー・ビクスラー症候群)に対する治療指針の作成および新規治療法の開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-164
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 眞司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 形成外科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒澤健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 安達昌功(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科)
  • 伊藤進(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 脳神経外科)
  • 谷口英樹(横浜市立大学医学研究科 臓器再生医学)
  • 前川二郎(横浜市立大学附属病院 形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
症候性頭蓋縫合早期癒合症は極めて低い頻度にもかかわらず、症状は複雑で致死的なものまで多彩である。これらの症候群は専門的・集学的治療を必要とするが適切な治療時期や方法は確立されていない。特に、顔面骨の低形成に起因する致死的な睡眠時無呼吸に関する機能的問題と顔貌に関する整容的問題の治療の確立は急務である。本研究は、致死的な睡眠時無呼吸に対する新規の「顔面骨延長システム」と整容的問題に対する「軟骨再生療法」の開発を目的とする。 
研究方法
(1)新しい「ハイブリッド型顔面骨延長システム」の開発
企業と協同して新しい「3次元角度可変型顔面骨延長装置」を開発する。創外型骨延長装置と併用し、延長方向と距離の制御を行う。
(2)「軟骨間葉系幹細胞」を用いた軟骨再生療法の開発
基礎的な基盤技術の確立と臨床応用へ向けたアプローチを行う。GMP準拠プロトコール作成および細胞調整室(Cell Processing Center:CPC)を駆使して自家血清培養法などの医療グレードの操作基盤技術を確立する。また、厚生労働省「ヒト幹細胞指針」へ申請の準備を行う。
結果と考察
(1)新しい「ハイブリッド型顔面骨延長システム」の開発
5症例に臨床応用した。術中の合併症はなく、術後の経過も順調であった。従来2-3回行われていた手術が1回で済み、社会的・経済的負担の軽減に大きく寄与し、今後の標準術式に成り得ると考えられた。
(2)「軟骨間葉系幹細胞」を用いた軟骨再生療法の開発
試薬類は、全て医療グレードの医薬品に置き換えても散骨を再生することができ、自家血清にても培養することに成功した。弾性軟骨再生だけではなく、関節軟骨への移植にも成功した。「ヒト幹細胞指針」に向けたプロトコールと手順書の作成がほぼ終了し提出予定である。一方、本細胞は関節軟骨修復のための有効なシーズになることが判明し、研究を加速する予定である。
結論
症候性頭蓋縫合早期癒合症に対して「ハイブリッド型顔面骨延長システム」と「軟骨幹細胞による軟骨再生療法」を開発した。前者は臨床応用され良好な成績を挙げている。後者は、臨床応用可能なところまで来ている。本症候群は、成人に至るまで多くの外科的治療を必要とし、患児の苦痛だけでなく治療に対する社会的および経済的な負担は極めて大きい。この2つの治療法を駆使することにより、比較的速やかに治療の改善が図られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128124B
報告書区分
総合
研究課題名
症候性頭蓋縫合早期癒合症(クルーゾン/アペール/ファイファー/アントレー・ビクスラー症候群)に対する治療指針の作成および新規治療法の開発に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-164
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
小林 眞司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 形成外科)
研究分担者(所属機関)
  • 黒澤健司(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 遺伝科)
  • 安達昌功(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 内分泌代謝科)
  • 伊藤進(地方独立行政法人神奈川県立病院機構 神奈川県立こども医療センター 脳神経外科)
  • 谷口英樹(横浜市立大学医学研究科 臓器再生医学)
  • 前川二郎(横浜市立大学附属病院 形成外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
症候性頭蓋縫合早期癒合症は極めて低い頻度にもかかわらず、症状は複雑で専門的・集学的治療を必要とするが、適切な治療時期や方法は確立されていない。治療の中でも、顔面骨の低形成に起因する致死的な睡眠時無呼吸に関する機能的問題と顔貌に関する整容的問題の治療の確立は急務である。本研究は、症候性頭蓋縫合早期癒合症における治療指針の作成および睡眠時無呼吸に対する新規の「顔面骨延長システム」と整容的問題に対する「軟骨再生療法」の開発を目的とする。 
研究方法
(1)頭蓋縫合早期癒合症に対する治療指針の作成
適切な治療時期を視覚化するために生後から成人に至るまで経年的図表化を行う。
(2)新しい「ハイブリッド型顔面骨延長システム」の開発
企業と協同して新しい「3次元角度可変型顔面骨延長装置」を開発する。
(3)「軟骨間葉系幹細胞」を用いた軟骨再生療法の開発
基礎的な基盤技術の確立と臨床応用へ向けたアプローチを行う。GMP準拠プロトコール作成および細胞調整室を駆使して自家血清培養法などの基盤技術を確立し、厚労省「ヒト幹細胞指針」へ申請の準備を行う。
結果と考察
(1)頭蓋縫合早期癒合症に対する治療指針の作成 
治療指針を作成した。治療は日進月歩であり、不断の更新が必要であると考えられた。
(2)新しい「ハイブリッド型顔面骨延長システム」の開発
5症例に臨床応用し、術後の経過も順調であった。従来2-3回行われていた手術が1回で済み、社会的・経済的負担の軽減に大きく寄与し、今後の標準術式に成り得ると考えられた。高度先進医療への申請予定である。
(3)「軟骨間葉系幹細胞」を用いた軟骨再生療法の開発
全て医療グレードの医薬品にすることができ、自家血清にても培養することに成功した。「ヒト幹細胞指針」に向けたプロトコールと手順書の作成がほぼ終了し提出予定である。さらに、本細胞は関節軟骨修復のための有効なシーズになることが判明し、研究を加速する予定である。
結論
「治療指針」を作成し、新規「ハイブリッド型顔面骨延長システム」と「軟骨幹細胞による軟骨再生療法」を開発した。前者は臨床応用され良好な成績を挙げている。後者は、臨床応用可能なところまで来ている。本症候群は、成人に至るまで多くの外科的治療を必要とし、患児の苦痛だけでなく治療に対する社会的および経済的な負担は極めて大きい。この2つの治療法を駆使することにより、比較的速やかに治療の改善が図られることが期待される。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128124C

成果

専門的・学術的観点からの成果
1.従来確立されていなかった専門的・集学的治療法を系統化した「治療指針」をまとめた。
2.致死的な睡眠時無呼吸に対して「ハイブリッド型顔面骨延長システム」を新規開発した。7例の患児に対して世界的に不可能であった延長方向と距離を正確にかつ確実に制御することができた。
3. 整容的問題の治療法として、ヒト軟骨幹細胞から軟骨を再生することに成功した(PNAS,2011)。「軟骨幹細胞による軟骨再生療法」は、軟骨膜から低浸襲で軟骨細胞を増やすことで軟骨再生が可能であり、有効な治療法になり得る。
臨床的観点からの成果
1.「ハイブリッド型顔面骨延長システム」を5症例に臨床応用し成功した。複数回行われていた長時間手術が1回で済むと予想される。高度先進医療の申請を予定している。
2.「軟骨幹細胞による軟骨再生療法」の臨床応用に向けて、細胞調整室でのGMPに準拠した管理が行われ、「ヒト幹細胞指針」への申請を予定している。
本症候群は、多くの治療を必要とし、患児の苦痛だけでなく、社会的・経済的な負担は極めて大きい。これらの治療法を駆使することにより、比較的速やかに治療の改善が図られることが期待される。 
ガイドライン等の開発
該当なし
その他行政的観点からの成果
該当なし
その他のインパクト
「軟骨幹細胞による軟骨再生療法」の技術は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載され、NHKニュース、読売、朝日など多くの新聞を通じて紹介された。また、YAHOOニュースなどのマスコミにも取り上げられた。

発表件数

原著論文(和文)
0件
原著論文(英文等)
2件
その他論文(和文)
11件
その他論文(英文等)
12件
学会発表(国内学会)
24件
学会発表(国際学会等)
4件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Shinji Kobayashi, Takanori Takebe, Mitsuru Mizuno,et al
Presence of cartilage stem/progenitor cells in adult mice auricular perichondrium
PLoS ONE , 6 (10) , 26393-26401  (2011)
原著論文2
Shinji Kobayashi, Takeshi Nishikouri, Jiro Maegawa,et al
A novel craniofacial osteogenesis distraction system enabling control of distraction distance and vector for the treatment of syndromic craniosynostosis
J of Craniofacial Surgery , 23 (2) , 422-425  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128124Z