胎児仙尾部奇形腫の実態把握・治療指針作成に関する研究

文献情報

文献番号
201128118A
報告書区分
総括
研究課題名
胎児仙尾部奇形腫の実態把握・治療指針作成に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-158
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田口 智章(国立大学法人九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 左合 治彦(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 臼井 規朗(大阪大学 大学院医学系研究科)
  • 金森 豊(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 米田 光宏(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 中村 知夫(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 野坂 俊介(独立行政法人国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、胎児仙尾部奇形腫の治療実態と自然歴を明らかにし、胎児治療を含めた周産期の治療指針の基盤となる情報を集積して、患児を合併症なく救命するための集学的治療指針を作成することである。
研究方法
国内周産期センターのうち、調査研究の応諾が得られた施設において、2000年1月1日から2009年12月31日までの期間に、仙尾部奇形腫と出生前診断された症例を対象として、症例調査票を用いた調査研究を実施し、平成23年度は再発症例および、晩期合併症を認めた症例に対して三次調査を行った。
結果と考察
出生前診断された仙尾部奇形腫97例を検討の対象とした。対象となった出生前診断例は近年増加傾向にあった。11例で人工妊娠中絶が選択され、86例に妊娠が継続されたが、うち3例は子宮内胎児死亡し、11例が出生後に死亡した。従って、人工妊娠中絶を除いた本症の生存率は83.7%であった。31週未満に出生した症例、腫瘍構成成分に充実部分が多いこと、病理組織診断が未熟奇形腫であること、腫瘍が大きいこと、増大速度が速いことや、分娩前超音波検査における胎児水腫徴候、腫瘍径/児頭大横径比などが生命予後不良の因子であった。出生後は96.3%の症例に手術が行われ、うち31%に腫瘍栄養血管の先行遮断が行われた。出生後の主たる死因は出血死であった。手術例のうち、約16%に周術期合併症を認め、退院例のうち、約18%に術後後遺症を認めた。また、初回手術時に悪性であった症例はなかったが、再発例は生存退院例の9.7%に認められ、悪性化して再発した例が多かった。
結論
わが国の主要施設で、過去10年間に出生前診断された仙尾部奇形腫の約半数を集計し、その治療実態と自然歴を明らかにした。わが国の胎児仙尾部奇形腫の生存率は、過去の諸家の報告に比べても良好であった。在胎28週以降31週未満の生命予後不良の因子を持つ症例については、早期娩出を行うことで生存率が高まる可能性があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128118B
報告書区分
総合
研究課題名
胎児仙尾部奇形腫の実態把握・治療指針作成に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-158
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
田口 智章(国立大学法人九州大学 医学研究院)
研究分担者(所属機関)
  • 左合 治彦(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 臼井 規朗(大阪大学大学院 医学系研究科)
  • 金森 豊(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 米田 光宏(地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪府立母子保健総合医療センター)
  • 中村 知夫(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 野坂 俊介(独立行政法人国立成育医療研究センター)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
本研究の目的は、胎児仙尾部奇形腫の治療実態と自然歴を明らかにし、胎児治療を含めた周産期の治療指針の基盤となる情報を集積して、患児を合併症なく救命するための集学的治療指針を作成することである。
研究方法
初年度中に、国内周産期センターのうち、調査研究の応諾が得られた施設において、2000年1月1日から2009年12月31日までの期間に、仙尾部奇形腫と出生前診断された症例を対象として、症例調査票を用いた調査研究を実施した。また次年度は、再発症例および、晩期合併症を認めた症例に対して三次調査を行った。
結果と考察
出生前診断された仙尾部奇形腫97例を検討の対象とした。対象となった出生前診断例は近年増加傾向にあった。11例で人工妊娠中絶が選択され、86例に妊娠が継続されたが、うち3例は子宮内胎児死亡し、11例が出生後に死亡した。従って、人工妊娠中絶を除いた本症の生存率は83.7%であった。31週未満に出生した症例、腫瘍構成成分に充実部分が多いこと、病理組織診断が未熟奇形腫であること、腫瘍が大きいこと、増大速度が速いことや、分娩前超音波検査における胎児水腫徴候、腫瘍径/児頭大横径比などが生命予後不良の因子であった。出生後は96.3%の症例に手術が行われ、うち31%に腫瘍栄養血管の先行遮断が行われた。出生後の主たる死因は出血死であった。手術例のうち、約16%に周術期合併症を認め、退院例のうち、約18%に術後後遺症を認めた。また、初回手術時に悪性であった症例はなかったが、再発例は生存退院例の9.7%に認められ、悪性化して再発した例が多かった。さらにこの研究班からの提言として胎児仙尾部奇形腫の治療指針をまとめることができた。
結論
わが国の主要施設で、過去10年間に出生前診断された仙尾部奇形腫の約半数を集計し、その治療実態と自然歴を明らかにした。わが国の胎児仙尾部奇形腫の生存率は、過去の諸家の報告に比べても良好であった。在胎28週以降31週未満の生命予後不良の因子を持つ症例については、早期娩出を行うことで生存率が高まる可能性があることが示唆された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128118C

成果

専門的・学術的観点からの成果
胎児仙尾部奇形腫は近年増加傾向にあり、人工妊娠中絶を除いた本症の生存率は83.7%であった」。31週未満の早産、腫瘍成分に充実部分が多い、病理診断が未熟奇形腫、腫瘍が大きい、増大速度が速い、分娩前超音波検査における胎児水腫徴候、腫瘍径/児頭大横径比が大きいなどが生命予後不良の因子であった。
出生後の主たる死因は出血死であった。手術例のうち16%に周術期合併症を認め18%に術後後遺症を認めた。初回手術時に悪性であった症例はなかったが、再発例は9.7%に認められ、悪性化して再発した例が多かった。
臨床的観点からの成果
わが国の主要施設で、過去10年間に出生前診断された仙尾部奇形腫の約半数を集計し、その治療実態と自然歴を明らかにした。わが国の胎児仙尾部奇形腫の生存率は、過去の諸家の報告に比べても良好であった。在胎28週以降31週未満の生命予後不良の因子を持つ症例については、早期娩出を行うことで生存率が高まる可能性があることが示唆された。これらの結果は英文誌 Journal of Pediatric Surgery 47(3)441-117,2012 にすべて掲載された。
ガイドライン等の開発
「診断の手引き」「疾患概要」を作成し、日本小児外科学会のauthorizeを受けた。
その他行政的観点からの成果
平成27年1月小児慢性特定疾患に指定された。現在ガイドラインをMindsの方法に従って作成中である。
その他のインパクト
出生前診断された本症の生存率は、人工妊娠中絶例を含めると74.2%であった。また、人工妊娠中絶例を除いた生存率は83.7%で、周産期死亡率は11.6%、新生児死亡率は10.5%であった。以上の結果は、これまでの海外からの報告に比べても良好であった。その理由として、わが国における新生児管理や新生児外科の治療水準が高いことに加え、胎児超音波診断装置の飛躍的な性能向上に伴い、本症の出生前診断率が向上し、以前では診断しえなかった予後良好例までが出生前診断されるようになったことも関与していると推測される。

発表件数

原著論文(和文)
72件
原著論文(英文等)
66件
その他論文(和文)
8件
その他論文(英文等)
2件
学会発表(国内学会)
118件
学会発表(国際学会等)
33件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Usui N, Kitano Y, Sago H, et al.
Outcomes of prenatally diagnosed sacrococcygeal teratomas: the results of a Japanese nationwide survey.
Journal of Pediatric Surgery , 47 (3) , 441-447  (2012)
10.1016/j.jpedsurg.2011.08.020.
原著論文2
金森豊、臼井規朗、北野良博、他
本邦で胎児診断された仙尾部奇形腫の生命予後に関する検討-厚生労働省科学研究・胎児仙尾部奇形腫の実態把握・治療方針作成に関する研究から-
日小外誌 , 48 (5) , 834-839  (2012)
原著論文3
宗崎良太、木下義晶、臼井規朗、他
胎児診断された仙尾部奇形腫の胎児治療の適応と予後
小児外科 , 45 (1) , 74-79  (2013)
原著論文4
Yoneda A, Usui N, Taguchi T, Kitano Y, Sago H, Kanamori Y, Nakamura T, Nosaka S, Oba MS
Impact of the histological type on the prognosis of patients with prenatally diagnosed sacrococcygeal teratomas: the results of a nationwide Japanese survey.
Pediatr Surg Int , 29 (11) , 1119-1125  (2013)
10.1007/s00383-013-3384-7.
原著論文5
宗崎良太、木下義晶、臼井規朗、左合治彦、左勝則、米田光宏、中村知夫、野坂俊介、金森豊、斉藤真梨、北野良博、田口智章
胎児診断された仙尾部奇形腫の胎児治療の適応と予後
小児外科 , 45 (1) , 74-79  (2013)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2017-06-12

収支報告書

文献番号
201128118Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 3,476,015円
人件費・謝金 342,118円
旅費 4,144,309円
その他 2,037,558円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
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公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
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