フォン・ヒッペルリンドウ病の病態調査と診断治療系確立の研究

文献情報

文献番号
201128112A
報告書区分
総括
研究課題名
フォン・ヒッペルリンドウ病の病態調査と診断治療系確立の研究
課題番号
H22-難治・一般-152
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
執印 太郎(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(泌尿器科学))
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 信雄(北海道大学 大学院医学研究科腎泌尿器外科)
  • 矢尾 正祐(横浜市立大学 大学院医学研究科泌尿器分子遺伝学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学 医学部脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学 大学院医学研究科脳神経外科学分野)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 国際医療センター脳神経外科)
  • 夏目 敦至(名古屋大学 大学院医学系研究科脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学 大学院生命科学研究部脳神経外科学)
  • 米谷 新(埼玉医科大学 眼科)
  • 福島 敦樹(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(眼科学))
  • 石田 晋(北海道大学 大学院医学研究科眼科学分野)
  • 西森 功(高知大学)
  • 伊藤 鉄英(九州大学 大学院医学研究院病態制御内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
VHL病は希少な優性遺伝性難治疾患である。本年度は、発症数が少ない難治性疾患VHL病について本格的な調査を行い作成した診断ガイドラインを完成させ、拠点施設による組織を形成し、試験的に運用する。また、患者さんにも理解できるようにガイドラインをわかりやすくしたガイドブックの作成することが目的である。
研究方法
国内の専門家の合議により国内VHL病の病態に適したガイドラインを検討した。全国調査結果を集計した結果からガイドラインの内容見直しを行い、海外の指針や開発中の治療方法に従い改訂を行った。各専門学会にガイドラインの適否の審査を依頼した。
ガイドラインほぼ全体の項目を患者向けに平易に記載し、患者の意向をふまえてVHL病に関する一般的な質問事項に回答したVHL病ガイドブックと、患者が一生の病歴や手術や投薬履歴等も記載するマイカルテを作成した。
研究代表者、分担者間の連携で、VHL病患者症例の症例提示と治療案の検討を試行した。ガイドラインを利用して専門家間で討議し適正な治療案を提示して主治医に示すことを試行した。これを行うに当たっては情報漏洩に配慮し守秘性の高いネット会議システムを用いた。
結果と考察
VHL病の解説も含めて診断と治療に関するガイドラインを作成した。最終的には文献的な再考察、日本人の考え方、医療の形態に合った形式を考慮して完成させた。また、関連学会の推薦を得た。
さらに本年度はガイドラインを利用して、その運用による診断、治療の検討会を開催した。担当者が経験した症例以外にも難治例を集めて、本ガイドラインの検証を試みるとともに、今後必要となるVHL病の重症度判定などにも利用可能かを検討した。
希少疾患であり患者が自己の治療指針を判断しがたい状況があることを理解し、患者会からの要望も加味して、患者向けガイドライン「VHL病ガイドブック」と患者携帯用の診療記録ノートである「マイカルテ」を作成した。これを主治医経由、患者会から各患者に配布することとした。これはまだ、使用されてはいないため今後、患者が使用して、内容の改良を行う。
また、今後は重症度分類などを検討する予定である。
結論
全国疫学調査結果に基づきガイドラインを作成し、さらにその運用を試みた。ガイドラインを簡略化し、患者にわかりやすく「VHL病ガイドブック」と患者携帯病歴ノート「マイカルテ」を作成した。これらの結果は希少疾患VHL病の長期治療に有用と判断された。今後、専門医連携によるガイドライン、ガイドブックの運用が重要と判断された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

文献情報

文献番号
201128112B
報告書区分
総合
研究課題名
フォン・ヒッペルリンドウ病の病態調査と診断治療系確立の研究
課題番号
H22-難治・一般-152
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
執印 太郎(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(泌尿器科学))
研究分担者(所属機関)
  • 篠原 信雄(北海道大学 大学院医学研究科腎泌尿器外科)
  • 矢尾 正祐(横浜市立大学 大学院医学研究科泌尿器分子遺伝学)
  • 菅野 洋(横浜市立大学 医学部脳神経外科)
  • 宝金 清博(北海道大学 大学院医学研究科脳神経外科学分野)
  • 西川 亮(埼玉医科大学 国際医療センター脳神経外科)
  • 夏目 敦至(名古屋大学 大学院医学系研究科脳神経外科)
  • 倉津 純一(熊本大学 大学院生命科学研究部脳神経外科学)
  • 米谷 新(埼玉医科大学 眼科)
  • 福島 敦樹(高知大学 教育研究部医療学系臨床医学部門(眼科学))
  • 石田 晋(北海道大学 大学院医学研究科眼科学分野)
  • 西森 功(高知大学)
  • 伊藤 鉄英(九州大学 大学院医学研究院病態制御内科学)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
VHL病は希少な優性遺伝性難治疾患で国内では本格的調査はされた事はない。本研究では 1.VHL病患者の全国の患者数、長期における腫瘍の発症と治療経過の調査を行い概要を解明する。2.現在の病態に即した診断と治療ガイドラインを作成し、関連領域の専門医に提示する。3.国内のVHL病について拠点施設による組織を構築しVHL病の治療・経過観察に貢献できる組織の確立と運用を図ることを目的とした。
研究方法
1.泌尿器科、脳神経外科、眼科、消化器内科の各領域の専門医でVHL病調査研究班を組織した。各専門学会の許可を得て全国調査を行った。
2.研究班の合議によりVHL病の病態に適したガイドライン(GL)を検討し、調査結果と海外の指針や開発中の治療方法に従いGLの改定を行った。各専門学会に審査を依頼した。
3.GLを患者向けに平易に記載し患者の質問事項に回答したVHL病ガイドブックと、患者が一生の病歴、手術や投薬履歴を記載できるマイカルテを作成した。
4.研究班の連携でGLを利用したVHL病患者の症例提示と治療案検討を試行した。
結果と考察
1.VHL病患者の全国調査結果で、VHL病患者は276家系、409名であった。各病態の発症数と各病態の頻度(括弧内)は、中枢神経系血管芽腫は294例(71%)、腎細胞癌は206例(50%)、網膜血管腫は140例(34%)、褐色細胞腫は62例(15%)であった。低頻度で悪性褐色細胞腫が存在した。膵神経内分泌腫瘍は53例(約13%)、膵嚢胞は152例(37%)であった。一般に発症する疾患に比べて20-30歳早期発症であった。2.VHL病調査研究班の合議によりVHL病の病態に適したガイドライン(GL)を作成した。さらに各専門学会でGLの内容の承認を得た。患者向けVHL病ガイドブックと、患者個人用のマイカルテを作成した。研究班の連携でGLを利用したVHL病患者の症例提示と治療案検討を試行した。これらの結果は長期にVHL病を診断治療、経過観察していく上で有効なものと考えられた。今後、これらをいかに活用していくかが重要な課題である。
結論
希少な優性遺伝性難治疾患であるVHL病について、全国疫学調査、診断治療ガイドライン、患者向けガイドラインであるガイドブック、(+マイカルテ)を3年間で作成した。これらは今後VHL病の長期の治療を行っていくにあたって必要なものであると結論された。

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128112C

成果

専門的・学術的観点からの成果
希少難病であるVHL病の1. 日本国内での中枢神経系血管芽腫、網膜血管腫、腎癌、褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍の発症頻度、発症年齢と治療経過に関する病態の概要が明らかとなった。2. 2型あるVHL病の発症割合、国内の発症地域分布が明らかとなった。3. VHL病の治療方法の実態と経過が明かとなった。4. ガイドライン検討と病態調査によりVHL病の各病態や発症時期に関する診断法、治療法が明らかとなった。
臨床的観点からの成果
希少難病であるVHL病の1. 日本国内の中枢神経系血管芽腫、網膜血管腫、腎癌、褐色細胞腫、膵神経内分泌腫瘍の臨床経過の関連が明らかとなった。2. 2型あるVHL病の発症割合、国内発症の地域分布が明らかとなった。3. VHL病の治療方法の実態と効果が明かとなった。4. ガイドライン検討と病態調査によりVHL病の各病態や発症時期に関する診断法、治療法が明らかとなった。5. 近年の治療法に関する変遷と最近の治療法の成果が明らかとなった。
ガイドライン等の開発
VHL病では一般に発症する疾患に比べて20-30歳早期発症であるが、発症年齢に即した発症予測が可能なガイドラインを作成した。内容は、VHL病の歴史、発症機構とVHL蛋白の機能、発症する腫瘍とその特徴、臨床診断基準、臨床的分類、診断法、遺伝カウンセリング、各腫瘍の経過観察と治療ガイドライン、各腫瘍の経過観察・治療フローチャートとした。さらに内容をわかりやすくしたVHL病患者さん向けガイドラインといえるガイドブックを作成した。
その他行政的観点からの成果
その他行政的観点からの成果はない。
その他のインパクト
北海道地区の患者を対象として、平成23年2月27日に北海道地区講演会を行った。内容はVHL病に対する診断・治療の実際について研究代表者および分担者5名による講演を行った。通年行事として行われているVHL病患者会主催の総会および講演会において、平成22年11月29日(神戸)と平成23年12月11日(東京)に全国疫学調査結果の報告や最新の治療法の講演し、病気に対する啓蒙を行った。

発表件数

原著論文(和文)
3件
原著論文(英文等)
0件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
7件
学会発表(国際学会等)
0件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
執印太郎、篠原信雄、矢尾正祐、他
von Hippel-Lindau病全国疫学調査における腎癌の臨床的解析
日本泌尿器科学会雑誌 , 103 (3) , 552-556  (2012)
原著論文2
執印太郎、篠原信雄、矢尾正祐、他
von Hippel-Lindau病に伴う褐色細胞腫の特徴:全国疫学調査とその解析結果
日本泌尿器科学会雑誌 , 103 (3) , 557-561  (2012)
原著論文3
松下恵理子、福島敦樹、石田 晋、他
von Hippel-Lindau(VHL)病における網膜血管腫発症の全国疫学調査結果
あたらしい眼科 , 28 (12) , 1773-1775  (2011)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2015-06-30

収支報告書

文献番号
201128112Z