Calciphylaxisの診断・治療に関わる調査・研究

文献情報

文献番号
201128109A
報告書区分
総括
研究課題名
Calciphylaxisの診断・治療に関わる調査・研究
課題番号
H22-難治・一般-149
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
林 松彦(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 細谷 龍男(東京慈恵会医科大学)
  • 秋葉 隆(東京女子医科大学)
  • 中元 秀友(埼玉医科大学)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 重松 隆(和歌山県立医科大学)
  • 深川 雅史(東海大学医学部)
  • 川村 哲也(東京慈恵会医科大学)
  • 田中 勝(東京女子医科大学東医療センター)
  • 橋口 明典(應義塾大学医学部)
  • 杉野 吉則(應義塾大学医学部)
  • 佐藤 裕史(應義塾大学医学部)
  • 板井 昭子(株式会社医薬分子設計研究所)
  • 菅野 義彦(應義塾大学医学部)
  • 吉田 理(應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カルシフィラキシスは、慢性血液透析患者を中心として発症する、皮膚の多発性・難治性潰瘍を主病変とする疾患であり死亡率も50%を越えるが、その発症要因、治療法は依然として明らかではなく、その予防・治療法の確立のために本研究が実施された。
研究方法
① カルシフィラキシスレジストリーによる症例データ収集
② 二次性副甲状腺機能亢進症治療指針作成のための臨床研究
 血管石灰化の指標として手・足レントゲン撮影時にアルミステップを置き、石灰化の程度を半定量し、投薬内容等との関連を検討した。
③ カルシフィラキシス発症危険因子としてのワルファリン服用とカルシフィラキシス新規発症、合併症発症についての、前向き症例対照研究
 ワルファリン内服症例におけるカルシフィラキシス発症、その他の合併症発症をendpointとする前向き観察研究の1年後調査を行った。
④ 培養血管平滑筋細胞(VSMC)を用いた検討
 高リン濃度培地で誘導されるVSMCの石灰沈着の機序を検討するために、平滑筋分化マーカーと骨軟骨細胞の分化マーカーの発現と転写因子Klf4の関連を検討した。
結果と考察
① Calciphylaxisレジストリーによる症例データ収集
 現在までに3例が登録中である。
② 二次性副甲状腺機能亢進症治療指針作成のための臨床研究
 前向き観察研究を終了し、12施設より臨床情報を収集し、解析中である。
③ Calciphylaxis発症危険因子としてのワルファリン服用とcalciphylaxis新規発症、合併症発症についての、前向き症例対照研究
1年後の調査ではワルファリン群344例、対照群648例について臨床情報が得られた。ワルファリン服用群で、あらゆる原因による出血とカルシフィラキシスの発症が有意に多かったが、死亡、心血管系疾患の新規発症には両群で有意差を認めなかった。現在さらに詳細に検討中である。
④ 培養血管平滑筋細胞(VSMC)を用いた検討
 ヒト培養平滑筋細胞(VSMC)を高リン培地で培養した結果、平滑筋分化マーカーの発現低下と骨軟骨細胞の分化マーカーの発現亢進が認められ、これらの変化に転写因子Klf4が重要な役割を果たすことが示された。
結論
透析患者におけるワルファリン内服は出血性の合併症を増加させ、カルシフィラキシスの発症を増加させるが、心血管系合併症、死亡率を変化させないことが示された。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128109B
報告書区分
総合
研究課題名
Calciphylaxisの診断・治療に関わる調査・研究
課題番号
H22-難治・一般-149
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
林 松彦(慶應義塾大学 医学部)
研究分担者(所属機関)
  • 細谷 龍男(東京慈恵会医科大学)
  • 秋葉 隆(東京女子医科大学)
  • 中元 秀友(埼玉医科大学)
  • 梅澤 明弘(独立行政法人国立成育医療研究センター)
  • 重松 隆(和歌山県立医科大学)
  • 深川 雅史(東海大学医学部)
  • 川村 哲也(東京慈恵会医科大学)
  • 田中 勝(東京女子医科大学東医療センター)
  • 橋口 明典(慶應義塾大学医学部)
  • 杉野 吉則(慶應義塾大学医学部)
  • 佐藤 裕史(慶應義塾大学医学部)
  • 板井 昭子(株式会社医薬分子設計研究所)
  • 菅野 義彦(慶應義塾大学医学部)
  • 吉田 理(慶應義塾大学医学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
カルシフィラキシスは、慢性血液透析患者を中心として発症する、皮膚の多発性・難治性潰瘍を主病変とする疾患であるが、その発症要因、治療法は依然として明らかではなく、その予防・治療法の確立のために本研究が実施された。
研究方法
①カルシフィラキシス症例についての症例対照研究と、カルシフィラキシスレジストリーによる症例データ収集
②二次性副甲状腺機能亢進症治療指針作成のための臨床研究
 血管石灰化の指標として手・足レントゲン撮影時にアルミステップを置き、石灰化の程度を半定量し、投薬内容等との関連を検討した。
③カルシフィラキシス発症危険因子としてのワルファリン服用とカルシフィラキシス新規発症、合併症発症についての、前向き症例対照研究
 ワルファリン内服症例におけるカルシフィラキシス発症、その他の合併症発症をendpointとする前向き観察研究を行った。
④培養血管平滑筋細胞(VSMC)を用いた検討
 高リン濃度培地で誘導されるVSMCの石灰沈着の機序を検討するために、LPSの影響と、平滑筋分化マーカーと骨軟骨細胞の分化マーカーの発現、および転写因子Klf4の関連を検討した。
結果と考察
①Calciphylaxisレジストリーによる症例データ収集
 症例対照研究により、ワルファリン内服と血清アルブミン低値が発症危険因子であることが示された。レジストリーには、現在までに3例が登録中である。
②二次性副甲状腺機能亢進症治療指針作成のための臨床研究
 前向き観察研究を終了し、12施設より臨床情報を収集し、解析中である。
③Calciphylaxis発症危険因子としてのワルファリン服用とcalciphylaxis新規発症、合併症発症についての、前向き症例対照研究
1年間の調査の結果、ワルファリン服用群で、あらゆる原因による出血とカルシフィラキシスの発症が有意に多かったが、死亡、心血管系疾患の新規発症には両群で有意差を認めなかった。現在さらに詳細に検討中である。
④培養血管平滑筋細胞(VSMC)を用いた検討
 ヒト培養平滑筋細胞(VSMC)を高リン培地で培養した結果、平滑筋分化マーカーの発現低下と骨軟骨細胞の分化マーカーの発現亢進が認められ、LPSは血管石灰化増悪因子であった。高リン培地による、これらの変化に転写因子Klf4が重要な役割を果たすことが示された。
結論
カルシフィラキシス発症にはワルファリン内服と、低栄養が重要な役割を果たすことが示された。一方、透析患者におけるワルファリン内服は出血性の合併症を増加させ、カルシフィラキシスの発症を増加させるが、心血管系合併症、死亡率を変化させないことが示された。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128109C

成果

専門的・学術的観点からの成果
カルシフィラキシスは、慢性血液透析患者を中心として生じる多発性皮膚潰瘍を主病巣とする難治性疾患であり、死亡率は50%越える。本研究は、その診断と治療についての調査・研究を行い、本邦での発症状況を初めて明らかとした。また、その発症危険因子としてワルファリン内服と、低アルブミン血症を同定し、英文誌に報告し、諸外国からも極めて高い評価を得ている。以前公表した診断基準により、認知度の低かった本疾患への認識が高まっている。
臨床的観点からの成果
本研究の成果を日本透析学会を始めとする関連学会で報告し、非常に高い関心を集めた。さらに、診断基準を公表したことから、これまで極めて認知度の低かった本疾患に対する認識が非常に高まり、その結果として、これまで他の皮膚疾患と混同されていた症例が正しく診断されるようになりつつある。現在レジストリーを設け、症例の集積にあたっているが、最初の調査に比べて、発症率がはるかに高いことが示唆される状況である。一方、発症危険因子であるワルファリンの投与についても関心が高まっており、介入研究の必要性が呈示されている。
ガイドライン等の開発
平成21年度の班研究で提案した診断基準について多くの意見が寄せられ、その意見を参考として、日本透析医学会誌に診断基準が改めて公表されることとなった。発症率の極めて低い疾患であるため、現時点では治療についての指針を出す段階まで臨床情報が収集されていないが、我々の研究班の活動を通じて非常に疾患の認知度が上がっており、症例の報告数も非常に増加していることから、レジストリーへの登録症例数増加が期待され、治療法と予後についても近い将来指針を公表することが可能となろう。
その他行政的観点からの成果
特に行政施策に反映された、あるいは審議階で取り上げられたというような成果はないが、これまで多くの臨床医がその名前すら知らなかった疾患について関心を持つようになり、非常に有益であった。難病でありながら、本邦ではその疫学調査はもとより、発症状況すら把握されていなかった疾患が、透析関係、腎臓関係の医師には広く知識が共有され、今後、その治療法、予防法の開発に役立つせいかを挙げることができた。厚生行政の難病対策としては非常に実り多いものであった。
その他のインパクト
日本透析医学会、日本腎臓学会のシンポジウム、などで報告し、さらに、数カ所において透析療法についての教育講演において広報を行った。さらに、公開日本腎臓学会の公開セッションにて2回成果を公表した。また、看護師、理学療法士などの幅広い職種が参加する日本フットケア学会に招請され、結果を公表するとともに、診断基準を広報することができた。非常に反響が大きかったと感じている。これらの活動を通じて、多くの臨床医が関心を持ち、疾患に対する認識が極めて高まっている。

発表件数

原著論文(和文)
1件
原著論文(英文等)
3件
その他論文(和文)
2件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
4件
学会発表(国際学会等)
5件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
3件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Hayashi M, Takamatsu I, Kanno Y, et al.
A case-control study of calciphylaxis in Japanese end-stage renal disease patients.
Nephrology Dialysis and Transplantation , 27 (4) , 1580-1584  (2012)
原著論文2
林 松彦、高松一郎、吉田 理、他
全国調査に基づくカルシフィラキシス診断基準の提案
日本透析医学会誌  (2012)
原著論文3
Inoue T, Takenaka T, Hayashi M, et al.
Fibroblast expression of an IκB dominant-negative transgene attenuates renal fibrosis.
Journal of the American Society of Nephrology , 21 (12) , 2047-2052  (2010)
原著論文4
Hayashi M, Abe T, Iwai M, et al
Safety of warfarin therapy in chronic hemodialysis patients: a prospective cohort study.
Clinical and Experimental Nephrology  (2015)
10.1007/s10157-015-1205-0

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
2016-06-13

収支報告書

文献番号
201128109Z
報告年月日

収入

(1)補助金交付額
13,000,000円
(2)補助金確定額
13,000,000円
差引額 [(1)-(2)]
0円

支出

研究費 (内訳) 直接研究費 物品費 4,233,930円
人件費・謝金 2,146,788円
旅費 0円
その他 3,619,282円
間接経費 3,000,000円
合計 13,000,000円

備考

備考
-

公開日・更新日

公開日
2015-06-09
更新日
-