文献情報
文献番号
201128105A
報告書区分
総括
研究課題名
進行性心臓伝導障害の病態診断と遺伝子基盤に関する研究
課題番号
H22-難治・一般-145
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
蒔田 直昌(長崎大学 大学院医歯薬学総合研究科)
研究分担者(所属機関)
- 堀江 稔(滋賀医科大学 医学部 内科学講座)
- 清水 渉(国立循環器病研究センター 心臓血管内科)
- 住友 直方(日本大学 医学部 小児科学系 小児科学分野)
- 赤星 正純((財)放射線影響研究所 長崎研究所 臨床研究部)
- 西井 明子 (関 明子)(東京女子医科大学循環器内科)
- 牧山 武(京都大学大学院医学研究科循環器内科学)
- 渡部 裕(新潟大学医歯学総合病院 第一内科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
10,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
本研究の目的は、進行性心臓伝導障害(CCD)の臨床病態を把握し、適切な診断指針を確立し、さらにその分子病態を解明することによって、心臓突然死の克服を目指すこと。
研究方法
CCDの症例登録と臨床解析・遺伝子解析を行った。住民基本健診データをもとにして、心臓伝導障害の発症率のおよびリスクファクターの疫学調査を行い、患者の遺伝子解析を行った。
結果と考察
1.診断基準を策定した
2.CCD登録75症例の臨床解析
発端者52人(男35人女17人)・家族25人の合計75例のCCDを平均11.6年間経過観察した。好発年齢分布は10・50・80歳にピークがあった。小児例は発端者3人が突然死しており、明らかに予後不良だった。CCDは、加齢を主たる原因とする変性疾患という均一な枠組みではとらえきれない複雑な病態だと思われる。
3.遺伝子解析・機能解析
発端者52症例のうち遺伝子変異が19例(36.5%)に同定された。内訳は、SCN5A変異9、KCNH2変異1、コネキシン40変異1、ラミンA/C変異10個である。ラミンA/C変異を有するCCD患者の半数が、経過中に拡張型心筋症を合併していた。伝導障害の進行、遅発性心不全の発症、ペースメーカ・ICD植え込み、突然死などの予後については、変異の種類による差はみとめなかった。
4.CCDの疫学調査
一般住民の経過観察から、一度房室ブロック、左脚ブロック、左室肥大、心房細動、非特異的なST-T変化は完全房室ブロック発症の危険因子と判明した。27年間の心電図記録から、PQ・QRSの経時的延長が心不全入院率を増加させること、QRS幅の経年増加が>4ms/年の症例は有意に入院リスクが高いことが判明した。完全右脚ブロック976名の約3%において経過中に伝導障害が進行した。
5.iPS細胞・エクソーム解析
CCD患者から疾患特異的ヒトiPS細胞を作製し、分化心筋の解析を行った。CCDの1大家系のエクソーム解析をフランスINSERMとの共同研究で行い、10個の候補遺伝子がリストアップされた。
2.CCD登録75症例の臨床解析
発端者52人(男35人女17人)・家族25人の合計75例のCCDを平均11.6年間経過観察した。好発年齢分布は10・50・80歳にピークがあった。小児例は発端者3人が突然死しており、明らかに予後不良だった。CCDは、加齢を主たる原因とする変性疾患という均一な枠組みではとらえきれない複雑な病態だと思われる。
3.遺伝子解析・機能解析
発端者52症例のうち遺伝子変異が19例(36.5%)に同定された。内訳は、SCN5A変異9、KCNH2変異1、コネキシン40変異1、ラミンA/C変異10個である。ラミンA/C変異を有するCCD患者の半数が、経過中に拡張型心筋症を合併していた。伝導障害の進行、遅発性心不全の発症、ペースメーカ・ICD植え込み、突然死などの予後については、変異の種類による差はみとめなかった。
4.CCDの疫学調査
一般住民の経過観察から、一度房室ブロック、左脚ブロック、左室肥大、心房細動、非特異的なST-T変化は完全房室ブロック発症の危険因子と判明した。27年間の心電図記録から、PQ・QRSの経時的延長が心不全入院率を増加させること、QRS幅の経年増加が>4ms/年の症例は有意に入院リスクが高いことが判明した。完全右脚ブロック976名の約3%において経過中に伝導障害が進行した。
5.iPS細胞・エクソーム解析
CCD患者から疾患特異的ヒトiPS細胞を作製し、分化心筋の解析を行った。CCDの1大家系のエクソーム解析をフランスINSERMとの共同研究で行い、10個の候補遺伝子がリストアップされた。
結論
国内の多施設共同研究と海外研究協力者の研究共同体制によって、CCDに関する疫学的・遺伝学的知見が得られた。これまでの研究手法に加えて、iPS技術や次世代シークエンサーなどの新たな手法を導入した研究を継続することによって、未解明の分子病態を解明し、適切な診断指針を確立と心臓突然死の克服をめざすことが望まれる。
公開日・更新日
公開日
2013-03-27
更新日
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