急性大動脈症候群に対する予防治療の指針作成に向けた基礎研究

文献情報

文献番号
201128100A
報告書区分
総括
研究課題名
急性大動脈症候群に対する予防治療の指針作成に向けた基礎研究
課題番号
H22-難治・一般-140
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 哲郎(東京大学 医学部附属病院血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石坂 信和(大阪医科大学 内科学Ⅲ:循環器内科 )
  • 今井 靖(東京大学医学部橋渡し研究支援プログラム )
  • 荻野 均(東京医科大学 外科学第2講座 )
  • 小野 稔(東京大学医学部附属病院 心臓外科 )
  • 高本 眞一(東京大学医学部)
  • 竹谷 剛(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
  • 出口 順夫(埼玉医科大学総合医療センター 血管外科)
  • 平田 恭信(東京大学医学部附属病院 先端臨床医学開発講座)
  • 保科 克行(東京大学医学部附属病院 血管外科)
  • 宮田 裕章(東京大学医学部附属病院 医療品質評価学)
  • 森田 啓行(東京大学医学部附属病院 健康医科学創造講座)
  • 師田 哲郎(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
13,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
「急性大動脈症候群」の疾患概念を確立するために、大動脈解離及び大動脈瘤の発生から進展、最終的に大動脈破裂にいたる臨床像を詳細に検討し、大動脈破裂に至るリスク因子を同定、発症予測因子を明らかにし予防治療につなぐ。
研究方法
○胸部大動脈手術例におけるリスク分析
胸部大動脈瘤手術症例2,938例を対象とした。

○炎症性大動脈瘤の特質
炎症性大動脈瘤および感染性大動脈瘤の症例について検討した。

○冠動脈疾患と大動脈瘤径拡張速度との相関
腹部大動脈瘤の手術を受けた者を対象とした。

○破裂性腹部大動脈瘤の特質
腹部大動脈瘤と診断された症例のうち、50mm未満の237症例の分析を行った。

○大動脈瘤患者における歯周病罹患率と重症度測定
マルファン症候群患者31名および非マルファン症候群患者19名を対象とした。

○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
大動脈瘤患者を対象にして平滑筋ミオシン(MYH11)、平滑筋アクチン(ACTA2)の遺伝子変異検索をおこなった。
結果と考察
○胸部大動脈手術例におけるリスク分析
一般に手術適応とされる60mm未満で本症候群を発症した例が全体の50%を占めていた。

○炎症性大動脈瘤の特質
血清IgG4値は炎症性大動脈瘤の半数でのみ上昇しているにとどまること、感染性大動脈瘤の半数では血液培養が陰性であることなどが明らかになった。

○冠動脈疾患と大動脈瘤径拡張速度との相関
冠動脈疾患がない症例の方が腹部大動脈瘤の拡張スピードが速い、という結果が得られた。

○破裂性腹部大動脈瘤の特質
腹部大動脈瘤の拡張速度に関して、家族歴、初診時大動脈瘤径、高血圧がリスク因子として同定された。

○大動脈瘤患者における歯周病罹患率と重症度測定
マルファン症候群患者においては、年齢の割に歯周病の罹患率は高率であり、歯周病菌陽性率も高率であることが推定される。

○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
36症例中2例で平滑筋ミオシン遺伝子(MYH11)変異を検出した。
結論
胸部大動脈瘤に関しては手術適応とされる径60mmに達しない症例が緊急手術症例の約半数を占めた。腹部大動脈瘤の拡張スピードは冠動脈疾患を有しない群で冠動脈疾患を有する群よりもむしろ速い、という意外な結果も得られた。腹部大動脈瘤破裂群では家族歴が重要な予測因子であった。平滑筋ミオシン遺伝子変異発見と併せて遺伝素因の関与を裏づける結果となった。歯周病と大動脈瘤との関連や、炎症性・感染性瘤の特性も明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

文献情報

文献番号
201128100B
報告書区分
総合
研究課題名
急性大動脈症候群に対する予防治療の指針作成に向けた基礎研究
課題番号
H22-難治・一般-140
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
宮田 哲郎(東京大学 医学部附属病院血管外科)
研究分担者(所属機関)
  • 石坂 信和(大阪医科大学 内科学Ⅲ:循環器内科)
  • 今井 靖(東京大学医学部橋渡し研究支援プログラム)
  • 荻野 均(東京医科大学 外科学第2講座)
  • 小野 稔(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
  • 高本 眞一(東京大学医学部)
  • 竹谷 剛(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
  • 出口 順夫(埼玉医科大学総合医療センター 血管外科)
  • 平田 恭信(東京大学医学部附属病院 先端臨床医学開発講座)
  • 保科 克行(東京大学医学部附属病院 血管外科)
  • 宮田 裕章(東京大学医学部附属病院 医療品質評価学)
  • 森田 啓行(東京大学医学部附属病院 健康医科学創造講座)
  • 師田 哲郎(東京大学医学部附属病院 心臓外科)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究者交替、所属機関変更
-

研究報告書(概要版)

研究目的
疾患概念を確立するために、大動脈解離及び大動脈瘤の発生から進展、最終的に大動脈破裂にいたる臨床像を詳細に検討し、大動脈破裂に至るリスク因子を同定、発症予測因子を明らかにし予防治療につなぐ。
研究方法
○胸部大動脈手術例におけるリスク分析
胸部大動脈手術13,436例を対象とした。

○炎症性大動脈瘤の特質
手術を行った急性大動脈症候群症例62例を検討対象とした。

○冠動脈疾患と大動脈瘤径拡張速度との相関
腹部大動脈瘤の待機的手術を受けた者を対象とした。

○破裂性腹部大動脈瘤の特質
腹部大動脈瘤のうち30mm以上50mm未満の小径腹部大動脈瘤群の検討を行った。○大動脈瘤患者における歯周病罹患率と重症度測定
1)腹部大動脈瘤患者2)マルファン症候群患者を対象とした。

○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
大動脈瘤患者を対象にして平滑筋ミオシン、平滑筋アクチンの遺伝子変異検索をおこなった。
結果と考察
○胸部大動脈手術例におけるリスク分析
胸部大動脈の非待機手術は、待機手術の約3倍の手術死亡率を伴っていた。

○炎症性大動脈瘤の特質
急性大動脈症候群の症例は、非急性の大動脈解離・大動脈瘤の症例と同様の頻度で冠動脈狭窄症が合併していることが明らかになった。血清IgG4値は炎症性大動脈瘤の半数でのみ上昇していた。

○冠動脈疾患と大動脈瘤径拡張速度との相関
冠動脈疾患がない症例の方が腹部大動脈瘤の拡張スピードが速かった。

○破裂性腹部大動脈瘤の特質
拡張速度に関しては閉塞性肺疾患、腹腔動脈分岐部の大動脈径が大きい、初診時大動脈瘤径、高血圧および家族歴が独立した因子であった。

○大動脈瘤患者における歯周病罹患率と重症度測定
腹部大動脈瘤患者では健康人に比して歯周病罹患率が高く、重症度も進行していた。マルファン症候群患者の歯周病の罹患率は高率であり、歯周病菌陽性率も高率あった。

○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
36症例中2例で平滑筋ミオシン遺伝子(MYH11)変異を検出した。
結論
胸部大動脈瘤では径60mmに達しない症例が緊急手術症例の約半数を占めた。腹部大動脈瘤の拡張速度は冠動脈疾患を有しない群で冠動脈疾患を有する群よりも速かった。腹部大動脈瘤破裂群では家族歴が重要な予測因子であり、拡張速度についてもいくつかのリスク因子が同定された。平滑筋ミオシン遺伝子変異発見と併せて遺伝素因の関与を裏づける結果となった。歯周病と大動脈瘤との関連や、炎症性・感染性瘤の特性も明らかにすることができた。

公開日・更新日

公開日
2013-03-28
更新日
-

行政効果報告

文献番号
201128100C

成果

専門的・学術的観点からの成果
○胸部大動脈手術例におけるリスク分析
○炎症性大動脈瘤の特質
○冠動脈疾患と大動脈瘤径拡張速度との相関
○破裂性腹部大動脈瘤の特質
○大動脈瘤患者における歯周病罹患率と重症度測定
○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
上記6項目において、学会発表(英文発表10件)、論文発表(英文19件)が行われた。
臨床的観点からの成果
○胸部大動脈手術例におけるリスク分析
○炎症性大動脈瘤の特質
○冠動脈疾患と大動脈瘤径拡張速度との相関
○破裂性腹部大動脈瘤の特質
○大動脈瘤患者における歯周病罹患率と重症度測定
○腹部大動脈瘤、特に家族性症例のゲノム解析
上記6項目において、学会発表(英文発表10件)、論文発表(英文19件)が行われた。
ガイドライン等の開発
現時点ではガイドラインの作成にはいたっていない。
その他行政的観点からの成果
とくになし
その他のインパクト
とくになし

発表件数

原著論文(和文)
2件
原著論文(英文等)
19件
その他論文(和文)
0件
その他論文(英文等)
0件
学会発表(国内学会)
1件
学会発表(国際学会等)
9件
その他成果(特許の出願)
0件
「出願」「取得」計0件
その他成果(特許の取得)
0件
その他成果(施策への反映)
0件
その他成果(普及・啓発活動)
0件

特許

主な原著論文20編(論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限る)

論文に厚生労働科学研究費の補助を受けたことが明記された論文に限ります。

原著論文1
Nakayama A, Morita H, Miyata T, et al.
Inverse association between the existence of coronary artery disease and progression of abdominal aortic aneurysm
Atherosclerosis , 222 (1) , 278-283  (2012)

公開日・更新日

公開日
2014-05-22
更新日
-

収支報告書

文献番号
201128100Z