文献情報
文献番号
201128096A
報告書区分
総括
研究課題名
那須ハコラ病の臨床病理遺伝学的研究
研究課題名(英字)
-
課題番号
H22-難治・一般-136
研究年度
平成23(2011)年度
研究代表者(所属機関)
佐藤 準一(明治薬科大学 薬学部)
研究分担者(所属機関)
- 天竺桂 弘子(明治薬科大学 薬学部)
研究区分
厚生労働科学研究費補助金 疾病・障害対策研究分野 難治性疾患克服研究
研究開始年度
平成22(2010)年度
研究終了予定年度
平成23(2011)年度
研究費
12,000,000円
研究者交替、所属機関変更
-
研究報告書(概要版)
研究目的
那須ハコラ病(Nasu-Hakola disease; NHD)は、DAP12遺伝子またはTREM2遺伝子の機能喪失変異による常染色体劣性遺伝性疾患である。TREM2とDAP12は破骨細胞・ミクログリアの細胞表面上で受容体アダプター複合体を形成し、DAP12のITAMモチーフと非受容体型チロシンキナーゼSykを介してシグナルを伝達する。NHDは20-30歳代に多発性骨嚢胞による病的骨折と白質脳症による精神症状で発症し、40-50歳代に進行性認知症を来して死亡し、有効な治療法がない難病である。平成21年度に本研究班が実施した全国調査により、本邦患者数は約200人と推定されている。平成22年度に本研究班では、本邦初TREM2遺伝子変異1家系3例に関して網羅的遺伝子発現解析を行い、罹患脳における炎症と神経変性の同時進行所見を発見した(GSE25496)。平成23年度は白質脳症発症機構を解明するため、剖検脳におけるSykの発現を免疫組織化学的に解析した。
研究方法
Research Resource Networkを通じて提供された文書同意を取得したNHD脳(n = 3), myotonic dystrophy脳(n = 4), 健常脳(n = 4)の前頭葉・海馬・基底核におけるSyk, pSyk, Srcの発現を免疫組織化学的に解析し定量した。
結果と考察
NHD脳と対照脳の神経細胞の細胞質においてSyk, pSykの発現を認めた。NHDではpSykの発現増強を認め、一部の神経細胞では核内にも発現を認めた。Sykの発現はNHD脳と対照脳で有意差を認めなかった。pSykとSrcは海馬神経細胞の顆粒空胞変性の顆粒にも集積していた。NHDではTREM2-DAP12 ITAM経路の機能は完全に喪失しており、Sykのリン酸化亢進は、酸化ストレスなどを介するITAM非依存性Syk活性化シグナルの関与が考えられる。神経細胞におけるpSykの発現増強は、axonal spheroidの形成と白質変性を誘導している可能性がある。
結論
本研究ではNHDとコントロールの脳組織を免疫組織化学的に解析し、NHD罹患脳の神経細胞におけるpSykの発現増強を明らかにした(Neuropathology 2012, in press)。Sykリン酸化阻害薬は、NHDにおける白質脳症の進行阻止に有効である可能性がある。
公開日・更新日
公開日
2013-03-10
更新日
-